07:履きにくい黒の革靴
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おまけ
今日は岸本と飯の約束をしている。約束の時間より少し早く着いたが、席を予約していたため通して貰えた。
馴染みのこの店は掘りごたつになっているのは良いが、俺にとっては少しテーブルが低いのが難点だ。
岸本の隣りなんか座りたくもないし、当然俺と彼女は隣りに並んで座る。すると、彼女から「うっ」と呻くような声が出た。
「どないしたん?」
「いやぁ…最近ちょっとお腹に肉がついちゃって、座るとズボンが少しキツいねん」
「あー……」
「な、何?」
「言われてみれば、確かに…」
俺はつい最近見て触れた、彼女の身体を想像してみた。確かに以前に比べて少し柔らかくなったような気がする。
「ちょ…思い返さんでええよっ!」
「…まぁ、ええんちゃう?少しくらい肉ついとった方が。抱き心地ええし」
俺は彼女に見えないように背中側から腕を回し、脇腹の肉をぷにぷにとつまんだ。
「わっ!ちょっ…!もう…」
「ええやん。別に俺しか触らんのやし」
「…またそういうこと言う〜」
俺は彼女の照れた顔が好きだ。昔に比べてよく感情が顔に表れるようになったことが嬉しい。俺はそのまま腰に腕を回し、自分の方にグッと引き寄せた。
「帰ったら直に触りたいねんけど」
「えっ…でもお母さんたちいるし…」
照れたような、困ったような、その表情も凄く良い。
(あー…もうアカンわ。チュウくらいならええやろ)
徐々に顔を近付けていくと、彼女も察したのか俺をジッと見つめた。そして、お互い目を閉じようとしたその時…
シャーッと音を立ててカーテンが開き、呆れ顔の岸本が立っていた。
「ハァー……家でやれや。一緒に住んどるやんけ」
「一緒に住んどっても部屋は別やし、常に親はおんねん」
「ゴメンな、岸本くん。あっ、何飲む?」
彼女は頬を染めながら、岸本にメニューを渡した。岸本がメニューに夢中になっている隙に、俺は彼女の耳元で囁く。
「帰ったら、続き…な?」
彼女は一瞬ピタリと動きが止まったが、こちらを見ずに小さく頷いた。その後ずっと、テーブルの下で手を重ねていたことに岸本はたぶん気付いていないだろう。いつも通りホンマにアホや…と思っていたが、今日の岸本は何だか活気に満ちている気がした。
俺は気付いた。名字さんが好きなのかと尋ねた時、岸本が一瞬真顔になったのを。アイツは昔から、核心をつかれるとそうなることも知っている。
今度は名字さんが岸本の隣りに座っていたら良いな、と思いながら俺はビールを飲み干した。
おわり