07:履きにくい黒の革靴
NAME CHANGE
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「んで、お前は好きなん?」
「あ?何を?紅葉か?」
「は?いや、名字さんや」
話題を変えようとした所で、再び彼女の名前が…。まぁ南も番長も比較的察しが良いため、この前の〝引越し祝い〟は何ぞ訳ありというのは気付いているのだろう。
「…分からん。ほんでも気になるのは確かや。ただそれが、好きやからなのか、同情しとるだけなんか…自分でもよう分からんねん。まぁ、言うても彼氏おるしなぁ」
ハハッと笑って誤魔化そうとしたその時、ちょうど店員がおかわりのビールを持って来た。それを番長が受け取り、俺に渡す。
「きっと名字さん、彼氏のために頑張ろうとか我慢しようって思っとんねんな。そういう気持ち、よう分かる」
かつて番長は消息不明になっていたことがある。全てを投げ出して、南の為に。あのラブストーリーは本物の愛で出来ている。つまり番長は、彼氏のためにアレコレ頑張る名字さんを応援したいということなのか…?考えがまとまらずにいると、番長は身を乗り出して言った。
「別に彼氏を肯定しとる訳やない。岸本くん、好きなら振り向かせたらええやん。岸本くんの為にも、名字さんの為にも」
番長はたぶん、大方見透かしている。その上でこうして俺の背中を押してくれる。
「南…お前、幸せモンやで。こんなええ女、早々おらんで」
「あ?お前に言われんでも分かっとるわ」
「キャー!私のために喧嘩は止めて〜!……これ、生きてて言わない台詞やと思っとったから、得した気分やなぁ」
「ブッ…何を言うてんねん」
番長がおどけ、南が愛おしそうにツッコミを入れた。やっぱり心から想い合える相手が側にいるのって良いな、と思った。
「あー!もう!ホンマお前らはイチャつき過ぎや!もう禁止や禁止!」
俺は、南とも、番長とも、土屋とも、ずっと付き合っていきたい。
そして、俺の心に新しく芽生えた何かが少しずつ名字さんの名前を呼び出す。
まずは明日、連絡してみよう。
動き出すんだ。
明日はスムーズに履ける、別の靴を履いて行こうと思う。
続く