01:黒のスニーカー
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20時になり、ようやく彼氏が帰って来た。いつものように、何も言わずに部屋に入って来る。
『おかえり。今日、久しぶりに頑張って夕飯作ったんだよ。一緒に食べよ?』
彼氏はテーブルに並んだ料理を一瞬チラッと見た。そして洗面台に向かいながらたった一言だけ言った。
「…ありがと」
本来、感謝を意味する言葉のはずなのに、少しもその意味が含まれていないただの音が部屋に響いた。そして、手を洗って戻って来たかと思うと着ていたシャツを脱ぎ、私の前にズイッと差し出した。
「ボタン取れたから、付けといて」
『…うん』
彼は食卓に着き、一緒に食べようと思っていた夕飯を淡々と食べ始めた。そして私が食べ終える前にお風呂に入りに行き、出て来たと思うとあっという間にベットに行ってしまった。
部屋にはお皿に残ったトマトソースのにおいと、針の糸がシャツを通り抜ける音だけが残っている。
ふと、岸本さんを思い出した。彼ならきっと喜んで食べてくれただろうし、お皿だって洗ってくれるかもしれない。無い物ねだりも甚だしいが、長く付き合うと皆こうなっていくのだろうか…。
(岸本さん、ボタン付けられるのかなぁ…)
玉留めをして糸を切り、シャツを置いた私はお皿を洗うために再びキッチンに立った。
今日はスニーカーで出掛けたのに、足はパンパンになっていた。
続く