07:履きにくい黒の革靴
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今日は南たちと外で晩飯の約束をしている。と言っても場所は俺の実家の近く、つまり南龍生堂の近くでもある馴染みの居酒屋だ。
しまった…ここは靴を脱ぐんだった。今日履いてきた黒の革靴は靴ベラが無いとスムーズに履けないやつだ…。
そんなことを考えている内に店に着き、名前を告げると「お連れ様、お見えですよ」と店員が言った。半個室のようになっていて、少し透けるカーテンから色んな人が酒を飲む姿が見えた。
世の中、こんなにたくさんの人がいる中で、南と番長の恋は運命的でドラマチックな道を歩んできた。あんな出来事に遭遇するのは、間違いなく数パーセントの人間だけだろう。故に二人の絆は物凄く強くて、本当にお似合いだと思うし、やっぱり運命ってやつはあるんだと思える。
「こちらのお席です」と店員に言われ、何の躊躇も無くカーテンを開けた。するとそこには、番長の腰に腕を回し、今にもチューしそうなくらい近付いて見つめ合う二人の姿があった。
「ハァー……家でやれや。一緒に住んどるやんけ」
「一緒に住んどっても部屋は別やし、常に親はおんねん」
「ゴメンな、岸本くん。あっ、何飲む?」
番長が少し頬を赤らめながら謝りつつ、メニューを渡してきた。つまり番長もノリノリでイチャついてたということか…。随分長く一緒にいるけれど、コイツらは本当に強い絆で結ばれている。と言うか、日に日に深まっている気さえする。
今まで生きてきて、割と人を羨ましいと思ったことは無かった。俺は俺、むしろ人と同じは嫌だと思ってきた。それなのに、最近では二人を見ていると「ええなぁ」と声に出してしまいそうになる。年齢的におっさんではないけれど、そう思えるのは少なからず大人になったからだろう。悪いことではないから、まぁ良しとしよう。
そう思いながら、俺は店員が持ってきたビールをグッと喉に流し込んだ。
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