05:チャコールグレーのスリッパ
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どうして私は岸本さんの部屋に行ったのだろう。無意識だった。友だちだって連絡を取ろうと思えば取れたはずなのに…。
ビーフシチューを取りに部屋に戻った時、鏡を見ると酷い顔をしていた。とりあえず、少しメイクを直して行こう…。
ビーフシチューが入った鍋を開けてみると凄く良いにおいがした。無駄にならなくて良かった。彼とのことを考えると、また暗くなってしまうから今だけは止めよう。これ以上、岸本さんに迷惑を掛けられない。
お鍋を持って再び岸本さんの部屋のインターホンを押すと、すぐに岸本さんがドアを開けてくれた。そして玄関の足下にはさっきは無かった靴が二足置いてあった。どうやら友だちがもう来ているらしい。
「ちょうど来たトコやねん」
さっきは無かったチャコールグレーのスリッパを履いてリビングに入ると、岸本さんと同じくらい背の高い男の人と、知的な美人さんがいた。
「さっき話した名字さんや。名字さん、南と番長や」
『ば、番長…さん…?(確かにこの人、ちょっと目つきが悪いし怖そうだもんな…番長だったのか…)』
「もー、岸本くん、初対面の人にそれ言うたらアカンって」
「番長、堅いこと言うなや。今も昔も番長は番長やんけ」
えっ…この美人さんが番長…?そう思い、ついジロジロと見てしまう。
「ホンマすみません。高校生の時に岸本くんにつけられたあだ名なんです」
「ちゃうちゃう。最初に番長言うたのは南や」
「言うたかもしれんけど、あだ名にしたのはお前やろ」
関西弁のテンポの良い会話が弾むように流れてゆく。
「この2人なぁ、高校生の時から夫婦やねんで」
『えっ…!そ、そうなんですか?』
「岸本…ホンマ、ええ加減にせえよ」
「まぁまぁ、ええやん。それより早よ飲も?ほんで名字さん、そのお鍋は…?」
番長さんに言われ、私はお鍋を持っていることに気が付いた。
『あっ…!こ、これ!ビーフシチュー作ったんです。良かったら皆さん、どうですか?』
「名字さんは料理上手やからなぁ」
「岸本くん、食べたことあんねや」
番長さんがニヤニヤと岸本さんと私を見る。
「…お隣りのヨシミや」
岸本さんは少し焦ったようにそう言った。もしかして照れてるのかな…何だか凄く可愛らしく思えた。
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