05:チャコールグレーのスリッパ
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ある夜、突然名字さんが泣きながら白い小さな箱を持って部屋にやって来た。箱の感じとチラリと見えた中身から、それがバースデーケーキであることは、俺でも分かった。たぶん状況からして、彼氏の誕生日だ。とにかく、今目の前でポロポロと涙を流す名字さんを何とかせねば…。
「名字さん、一旦落ち着こか。そしたら何があったか話してや」
『…っ……うん…』
俺が冷静に諭すことで、名字さんはすぐに落ち着きを取り戻した。そして、何があったかをゆっくり話してくれた。
『──って感じで、この前とほぼ同じ。今日は服も下着も全部新しいの買って、用意してたのに…』
彼氏と上手くいかず、泣きながら俺を頼って来てくれた。
しかも服も下着も用意したということは、確実に勝負する気だったということだ。
そう考えると、急に意識してしまう。この可愛らしい服の下に一体どんな下着を着けているのだろう…。こんなことを考えてしまうのはもう男なら仕方ないことだ。
今、俺は名字さんを部屋に上げて本当に大丈夫だろうか。頼られたからには、失望させる訳にはいかない。こんな時間だから、前のように公園でピクニックをする訳にもいかない。どうする?ケーキといえばパーティー、お祝い……
「そうや!お祝い!引っ越し祝いや!!」
『へっ…?』
「いやー、偶然やなぁ。今からちょうど昔からのツレ呼んで引っ越し祝いパーティーするトコやってん。おっ?コレ、ケーキやんな?ちょうどええわ。名字さんも一緒にどうや?酒飲むだけやけど!」
咄嗟に出まかせを言ってしまったが、我ながら見事だった。俺は名字さんを部屋に通し、こっそりと友人に連絡をした。するとすぐに来るという返事が来て、内心俺はホッとした。
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