04:オレンジのサンダル
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誕生日当日
ケーキの予約、料理のメニューと材料、メイク、新しいダークグリーンのワンピース、ちょっとセクシーな白のランジェリー…これで準備はOKだ。私は午後半休を取って、お祝いの準備をした。
ビーフシチューを煮込み終え、シャワーを浴び、メイクをして買ったばかりの下着を着ける時、もう随分触れられていないことを実感した。鏡に映る自分は決して魅力が無い訳ではないと思う。もう少し自信を持って良いはずだ…。下着姿の自分を暫く眺めた後、私はワンピースを着た。
後は帰ってきたらお皿に盛り付けるだけという所で19時だった。仕事ならば仕方がない。むしろ誕生日なのに遅くまで仕事だなんてかわいそうなくらいだ。私はテレビを見たり、本を読んだりして時間を潰そうとしても、時間が気になって全く集中できなかった。
そして21時、携帯の着信音が鳴った。やっと終わったんだ…!そう思い、メッセージを開いた。
〝ゴメン、今日は帰れない〟
携帯がスルリと手から滑り落ち、床にカツンとぶつかる音がこだまするように響いた。
『今日じゃないと、意味無いよ……』
私の心とは真逆で、テーブルは間接照明に照らされてキラキラと温かい空間になっている。ふとケーキを食べるための小さなお皿とフォークが視界に入った。仕事終わりにお店に寄って買ってきたケーキ…何故かここで店員さんが言った言葉が頭をよぎった。
「生ものですので、本日中にお召し上がり下さいね」
ニッコリ可愛い笑顔でそう言われた。こんな風に可愛く笑えたら、彼氏は私に触れてくれるのだろうかと思ってしまったのが情けなかった。
あまりにも虚しくて、あまりにも寂しくて、とてもじゃないけれど今日を一人で過ごすことが耐えられなくなってきた。そして私は、冷蔵庫からケーキの箱を取り出し、ゴミ出しの時なんかに履くオレンジのフリルがついたサンダルに足を突っ込み、玄関のドアを開けた。
そして、気付けばすぐ隣りの部屋のインターホンを押していた。呼び出し音が途切れ、私の顔をモニターで確認したのだろう。バタバタと音がして岸本さんが驚いたようにドアを開けた。
「名字さん…こんな時間にどないしたん?」
岸本さんの顔を見た途端、私の目からポロポロと涙が溢れ、止まらなくなっていた。自分でも予想外のことに戸惑ってしまう。
「ちょっ…何かあったん…?」
『……っ…ごめ…なさい……あのっ……ケーキ…今日中に食べなきゃだから……』
目の前に箱を差し出すと、それがバースデーケーキだと悟ったのだろう。岸本さんはただ黙って、険しい顔でそれを見つめていた。
続く