03:ノーシューズ
NAME CHANGE
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『──ってことがあったんだ』
名字さんの話を聞き、何とも言えない気持ちになった。まず彼氏は何故名字さんの歩み寄りを回避するのか。そこまで態度に出すなら、嫌なことは伝えるべきだ。それでも無理なら、別に結婚している訳でもないのだから別れても良いのでは…?彼氏が名字さんにある意味執着する理由は何だ…?俺は大して良くもない頭をフル回転して考えたが、全く名字さんを励ます言葉が出てこなかった。
『岸本さん、めちゃくちゃ真剣に考えてくれてるね』
「えっ…悪い。すぐ顔に出るタチなもんで…」
『ふふっ…何か凄く岸本さんらしくて良いと思う』
名字さんがようやく笑ってくれ、正直ホッとした。
『私もこんなに背伸びしないで、私らしく在りたいなぁ……あー、何かお腹空いて来ちゃった。帰ろっか』
そう言うと名字さんは靴を脱いで手に持ち、そのまま歩き始めた。
「えっ…ちょ…靴…!」
『この方が、私らしいかなって。わー、地面って意外と冷たい…』
名字さんはピョンピョン跳ねるように進んで行く。そして、もうマンションの手前というくらいの所でくるりと振り返った。
『そういえば岸本さん、引越しの日着てたシャツの袖ボタン、取れかかってたよね?私、つけてあげようか?』
確かにあのシャツの袖ボタンは取れかかっていた。ほんの少し話しただけなのに、よくそんな所まで気が付くな、と思わず感心してしまう。そして今、何か吹っ切れたような名字さんの表情は、柔らかくて凄く温かみが感じられる。どうも放っておけないその表情に、俺は目が離せなかった。
「…ほな、お願いしよかな」
これでまた話す口実が出来た、自然とそう思ってしまった俺の心には、きっともう何かが芽生え始めている。
靴を履かずに歩く名字さんは、本当に自然体なのだろう。
凄く綺麗だった。
続く