01:黒のスニーカー
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今日は有休を取った。市役所、銀行、美容院、秋服チェック…たくさん歩き回るから、靴はお気に入りの黒のスニーカーで出掛けた。
夕飯は久しぶりに、彼氏の好物を作ろう。ホールトマト、生クリーム、海老、玉ねぎ…は買い置きがあったような…。付き合ってすぐの頃、美味しいと喜んでくれた海老のトマトクリームパスタを作るんだ。付き合って3年、同棲して2年にもなるから、あの頃みたいにはいかないかもしれないけれど、最近めっきり少なくなったときめきを少しで良いから感じたい。一緒にいる時間が長い程、こういうことは大事にしなければ…!そう思い、私はいつも買わないようなちょっと高いパスタを手に取った。
マンションに帰ると、隣りの部屋に引っ越し屋さんが来ていた。そういえば、隣りの部屋に住んでいる大家さんが海外赴任になったとかで代理の人がその部屋に入るんだっけ…。挨拶しといた方が良いかなぁ、と考えていると部屋から凄く背の高い人が出てきた。年齢は私と同じくらいで長髪を束ね、シンプルな服をお洒落に着こなしている。肩幅が広くて男らしい体型に目を奪われた。その人は私を見つけると、大きな目をキラキラと輝かせ、ニコニコしながらこちらに近付いてきた。
「あの、俺、今日からこの部屋に住む岸本です。大家の親戚で、暫く大家代わりやらして貰います。宜しくお願いします」
『名字と申します。こちらこそ、宜しくお願いしますっ』
「そないぎょーさん買い物して、何美味いモン作りはるんですか?確か彼氏さんと住んではりますよね?羨ましいなぁ」
岸本さんは、私が持っている買い物袋を指差しながら言った。その時、袖のボタンが取れ掛かっていることに気が付いた。でも初対面で指摘するのもちょっとな…と思い、言えなかった。
『いや、そんな大した物作る訳じゃないですよ…』
「彼氏さん、幸せモンやわ。あ…もう行かな…ほな、また!」
そう言って大きな手をパッと出し、岸本さんは部屋の中に入って行った。感じの良い人だったな。隣りだし、また話せると良いな。そう思いながら私は部屋の鍵を開け、中に入った。
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