02:Préface
NAME CHANGE
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「烈くん、分かってくれ。名前の為なんや」
高校を卒業する時、突然名前の親父さんに呼ばれたと思ったらこんな事を言われた。
直接的な言葉は無かったが、要は街の小さな薬局の息子と大企業でそれなりの役職に就いている親父さんの娘では釣り合わないと言いたいらしく、恋人同士でも何でもない今から手を打っておこうって魂胆のようだ。
「名前の考えはどうなんですか?」
初めてこちらから質問すると、親父さんは呆れたように眉を下げて珈琲をグッと飲んだ。
「親が娘の幸せを願うのは当然やろう?」
「……答えになってませんやん」
「とにかく、親が認めへんのやから潔く諦めなさい。ネチネチした男は嫌われんで」
そう言い捨て、親父さんは伝票を持って立ち去ろうとした。
どの口が言うてんねん。こうやって裏でネチネチしとんのは自分やろうが。
心の中でそう思っていると親父さんは俺の横で立ち止まり、小声でこう言った。
「そうそう。確か君んちの薬局にはうちの子会社が薬を卸してるんやったな。そういう所も、肝に銘じといた方がええなぁ」
ハハハと笑いながら俺の肩をポンと叩き、親父さんは店を出た。
一気に絶望が押し寄せてきて、グラスの氷がカランッと音を立てて溶けていくのを黙って見ている事しか出来なかった。
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