後編
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僕たちは、ただひたすら走った。
教室を出て、真っ直ぐに続く廊下を突き抜け、階段を降りる。鞄も持たず、玄関まで来てしまった。きっとこのまま上履きのまま飛び出して行くのだろう。そう思った時、聴き慣れた声が耳に入ってきた。
「結局別れることになった〜」
その声は、名字さんもよく知っているようで反応しているのが分かった。ここで僕たちの足は止まってしまう。
花子はどうやら電話で話をしているようだ。
「えー?あっくん?あっくんは彼氏とかそんなんちゃうよ。んー…何て言うか…少女漫画の中の彼氏って感じやな。本を開けば、欲しいドキドキをくれんねん」
分かっていた。分かっていたけれど、実際に本人の口から聞くと、やっぱりそうなんだなぁと急に実感が全身に纏わり付く。名字さんは、僕の手をさらに力を込めてギュッと握った。こちらを見ず、唇を噛み締めている。バスケのボールなんて到底片手で持てないようなその小さな手で、僕を助けようとしてくれているんだ。それくらい僕の哀しみを理解してくれているんだ。それが分かると、僕の中に決意が生まれた。
このまま逃げていても、何の意味もない。
僕は名字さんの手をそっと離し、花子のいる方に歩き出した。名字さんは不安そうな顔でこっちを見ている。
「大丈夫。ちゃんと終わらすから」
名字さんは、一瞬泣きそうな顔をしたけれど、グッと堪えて黙って頷いた。強いなぁ。
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