前編
NAME CHANGE
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〝あっくん、早よ帰って来て〟
携帯の画面に表示されるこの文字を見て、僕はハァとため息を漏らす。今日こそは断ち切らなきゃいけない、そう思い、画面から目を離すと再び手の中で携帯がブブッと震える。
〝会いたい〟
このたった一言で、さっきの決意は嘘のように崩れてしまう。そして気付けば僕の指は、こんな文字の羅列を生み出していた。
〝20分くらいで着くと思う。〟
メールの相手は幼なじみの花子だ。家もすぐ近所で、学校も同じ。小さい頃からずっと〝あっくん〟と呼ばれている。そんな僕たちの関係がおかしくなってしまったのは、つい最近のことだった。
高校に入って花子は変わった。黒くて艶々だった髪も少し茶色くなり、ウェーブがかかっている。メイクもするようになり、スカートの丈も短くなっていった。そして、彼氏ができた。今の彼氏はもう何人目なのだろう。それが把握できない程、僕はもう随分前に取り残されてしまっている。そして彼氏との約束が急に無くなったりすると、こうして呼び出されるのだ。
僕は花子の部屋のドアをノックする。いつからノックなんてするようになったんだっけ…。
「今日もすっぽかされたん?」
「うん。最近多いねんなぁ…やっぱもう無理なんかなぁ…」
これもいつものパターンだ。彼氏は大体他に女を作っていなくなってしまう。
「あっくん…」
小さい頃からずっとそう呼ばれてきたけれど、こんなに甘い声で呼ばれるようになったのも最近になってからだ。僕はすり寄ってくる花子を抱き寄せ、そっと唇を重ねる。すぐに花子の腕が背中に回り、堪能するように口内を貪り合う。
「ハァッ……あっくぅん…」
花子は昔からそうだ。いつもこんな風に僕を惑わして、掻き乱す。こんな関係はもう止めなければならないと思っても、どうにも身体が動いてまう。
もうとっくに分かっている。
ずっと、仲良しこよしの幼なじみじゃいられないということを。
そして、この関係に一番しがみついているのが、僕だということも…。
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