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ターゲット

2026/08/03 04:35
※チューイとは知久が飼っている猫のことです。
※リカルドはブラジルで生まれ育っています。来日して10年くらいです。

○寮 知久の部屋 リビング 昼

 リビングにはキャットタワーやキャットハウスが設置されている。リビングのドアにはペットドアが付いている。
 知久、リビングで立ち、スマホを耳に当てて通話している。知久の後ろ背中から1.5mくらいのところにペニンシュラキッチンがある。キッチンの上は整頓されている。
知久「ホンマにありがとう、買い物まで頼まれてくれて」
リカルドの声「何てことないよ、自分の買い物のついでだし」

○スーパーマーケット-中 昼

 リカルド、スマホで通話しながら陳列棚の間を歩いている。片手にカゴを持ち、もう片手でスマホを持っている。カゴの中にはいくつか食料品が入っている。
リカルド「食欲はどのくらいある?」
知久の声「ぼちぼち… 何か食べやすいものがええかな、うどんとか、容器ごと火にかけれるやつ」
リカルド「うどんね」

○寮 知久の部屋 リビング 昼

リカルドの声「何なら俺が作るよ」
知久「そこまでは… めちゃめちゃ熱あるってほどでもないし」

○スーパーマーケット-中 昼

リカルド「(笑って)もちろんタダじゃないさ。俺が困ったときは頼らせてもらうつもりだから。お互いさまだろ?」

○寮 知久の部屋 リビング 昼

知久「(笑って)そういうことな。ほな、お言葉に甘えるわ」
 知久が通話している最中に、チューイがペットドアを潜ってリビングに入ってくる。知久は気づいていない。
リカルドの声「他に要るものある?」
知久「(考え込むように)そやな…」
 チューイ、ジャンプしてキッチンのワークトップに上がる。
知久「プリンかヨーグルトかあったら嬉しいかも。あっ、酢とミントが入ってるやつはあかんで」
リカルドの声「(苦笑して)入ってることはあまりなさそうだけどね。風邪薬は?」
知久「ああ…」
 チューイ、知久の背中を見つめ、姿勢を低くしている。
知久「大丈夫。風邪をひいたというより疲れが出たって気ぃするんよな。食って寝たら治るわ」
 チューイ、尻を小刻みに振っている。
リカルドの声「わかった」

○スーパーマーケット-中 昼

リカルド「今日くらいはゆっくり休んで。サブリーダーも大変だもんな」
知久の声「(笑って)ホンマやで。でもそれよりは暑さ…(短く叫んで)あっ! 痛っ!」
リカルド「どうしたの!?」
知久の声「ごめん、何でもあらへん!」
リカルド「どこかぶつけた?」
知久の声「(つらそうな声で)そういうわけちゃうけど… 一旦、切るわ。ホンマに何もないから!」
 通話が切れる音。
 リカルド、スマホの画面を見つめる。

○寮 知久の部屋 寝室 昼

 知久、全身鏡に背を向けて立ち、スマホを眺めている。上半身は裸で、背中には一面のタトゥーと爪に引っ掻かれたような傷。スマホの画面には全身鏡に映った自身の背中。
 チャイムの音。知久、スマホから顔を上げる。
 玄関の向こうからリカルドの声。
リカルドの声「(声を張り上げて)トミー、大丈夫?」
 知久、寝室のドアを開け、玄関の方に向かいながら、
知久「(声を張り上げて)大丈夫。入って」
 扉が開き、リカルドが玄関に入る。
リカルド「暑いの?」
知久「暑くはないで。猫にいきなり飛び付かれて傷になったから、シャワーで流したところやってん。ほら」
 知久、リカルドに背を向ける。
リカルド「うわっ、けっこう派手にやられたな。痛みは?」
知久「だいぶ痛い。さっきは泣きそうやったもん、シャワーが沁みて」
リカルド「災難だったな。手当てしようか?」
 知久、リカルドの方に向き直る。
知久「ごめんやで、何から何まで」
リカルド「謝ることないよ。背中はやってもらわないと仕方ないからな。自分では届かないし」

○同 リビング 昼

 知久、胡座を組んで床に座っている。リカルドは知久の背後の座っている。二人はマスクを着けている。床の上には衛生用品と知久のTシャツが置かれている。
 リカルド、ガーゼの上からテープを貼り、知久の傷を覆う。
リカルド「こんなもんかな」
知久「ありがとう」
リカルド「もし腫れたり膿んだりするようだったら病院に行ってね」
知久「まっ、いけるやろ」
リカルド「わからないよ、今は抵抗力が落ちてるだろうから」
知久「そやな、気にしとくわ」
 知久、Tシャツを手に取り、頭から被る。
リカルド「こういうことってよくあるの?」
知久「今回みたいなことは初めてやけど、いたずらはしょっちゅうやな」
 知久、Tシャツを着てから、リカルドの方に向き直って座り、
知久「ズボンで爪研ぎしたりとか」
リカルド「(笑って)実家で一緒に暮らしてた猫を思い出すな。その猫もズボンで爪研ぎするのが好きだったんだ。懐かしいよ」
知久「(微笑んで)そうやったんやな」
リカルド「…そういえばチューイは?」
 知久、キャットハウスを顎で指し示し、
知久「そこに隠れてるわ、そこ」
リカルド「(笑って)悪さをした自覚はあるのかな」
知久「どうやろな。とりあえず飛びかかったら構ってくれると学習されても困るし、しばらくほっとくわ」
リカルド「それがいいよな。チューイ、遊んでほしかったのかな?」
知久「さあ。ただ飛び移れそうやったからやってみただけかもしれへんし」
リカルド「猫だもんな」
 リカルド、立ち上がろうと膝を立て、
リカルド「そろそろご飯␣作ろうか」
知久「ホンマにええの?」
リカルド「うん、気にしないで。お礼はいつかきっとチューイがしてくれるよ、ズボンで爪研ぎすることで」
知久「(笑って)どんなお礼やねん」
リカルド「久しぶりに猫にいたずらされたくなってさ」
知久「ほな、今度はジーンズで遊びに来るとええわ。チューイの爪にはジーンズがちょうどええみたいやから」
リカルド「そうするよ」
 リカルド、立ち上がり、キッチンの方に向かう。

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