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きんつば

2026/07/30 17:50
※和真は難聴の当事者です。
※勇は福島県の会津地方、和真は兵庫県伊丹市、瑞希と知久は大阪府、成美は秋田県の出身です。
※方言については調べてから書きましたが、適当なことを書いている可能性があります。

○本部 会議室 昼

 会議室にはテーブルがコの字に配置されている。
 一同、席に着いている。和真と成美は隣りの席。テーブルの上にはそれぞれタブレットや資料が置かれている。
栄太「報告は以上ですね。他に何か共有事項はありませんか?」
一同(栄太を除く)「(各々のタイミングで)ありません」
栄太「なさそうですね。では本日の会議は以上です。お疲れさまでした」
一同(栄太を除く)「お疲れさまです」
 一同、テーブルの上を片付ける。
知久「たぶん覚えてるとは思うけど、(日本語対応手話を交えて)明日は12時からパーティールームでお茶会やで」
 一同(栄太と知久と和真を除く)、それぞれに「了解」「わかった」と返事する。
和真「それ、パスさせて」
栄太「あら、用事ですか?」
和真「友達とご飯を食べに行くことになって、神戸で」
 栄太、親指を立てるジェスチャーをして、
栄太「わかりました。楽しんできてくださいね」
成美「(笑って)和真、その友達は元彦の信者じゃないだろうな」
和真「大丈夫、それとなく確認した」
昴「兵庫県民も大変ですね、そんなこと気にしないといけないなんて」
和真「え?」
成美「兵庫県民は大変だってさ」
和真「ふーん、ずいぶん他人事だね。今や日本全国がそうじゃん、高市を支持するか支持しないかで」
 昴、頷いて、
昴「確かにそうでした」
 勇、片手を軽く挙げて、
勇「伴さん、神戸に行かれるならおつかいを頼まれてほしいんですが…」
成美「和真、イッサが何か頼みたいらしいぞ」
和真「えっ、何?」
 勇、席から立ち上がり、和真の方へ行く。和真のそばに立ち、
勇「兵庫県に有名なきんつばの店があると聞きまして。(はっきりと発音して)きんつばです」
和真「きんつば?」
勇「そう、きんつば。兵庫県の人なら誰でも知ってるお店らしいんですが」
和真「きんつばだよね? 兵庫で? 京都の間違いじゃない?」
勇「いいえ、兵庫県です」
和真「きんつばの店なんて思いつかないんだけど… 何て名前の店?」
勇「すみません。名前が難しくて覚えられませんでした…」
和真「それじゃわかんないよ。成美、知ってる?」
成美「知らねぇな。トミーは? 和菓子なら詳しいだろ」
知久「兵庫県できんつばやろ? 大阪やったら思いつく店あるんやけど、兵庫県のことまではわからへんな… ホンマに京都ちゃうん? それか金沢かも」
勇「それは絶対に兵庫県なんですよ」
和真「兵庫県民なら知ってる店なんだよね?」
勇「はい、有名すぎてもはやきんつばのことを店の名前で呼ぶそうですが」
和真「そうなの? 兵庫でもきんつばはきんつばでしょ。それ、どこの情報?」
勇「テレビで観ました」
和真「テレビ? ガセネタじゃない? でも神戸ではそう呼ぶこともあるのかな… 俺は伊丹なんだけど、伊丹って大阪に近いんだよね。兵庫県って地域ごとに文化が違うんだよ」
勇「そうなんですか…」
和真「友達は神戸に住んでるから、ちょっと聞いてみるよ」
勇「わかりました、ありがとうございます。お金、預けときますね。いくらくらいですかね?」
和真「知らないよ、俺に聞かれても」
勇「100円で足りますかね?」
和真「100円ってことはないでしょ。きんつばだよ?」
勇「ではどれくらいでしょう?」
和真「どれくらいって…」
知久「数にもよるけど一箱で2、3000円くらいちゃう?」
勇「(少し驚いた様子で)ずいぶんしますね。やっぱり本物は違うな… とりあえず5000円をお渡ししますね」
和真「わかった。できるだけ探してみるけどあまり期待しないでね。見つける約束はできないよ」
勇「了解です。こちらこそ無理難題を言ってすみません」

○寮 尚人の部屋 リビング 夜 日替わり

 和真、成美、瑞希、ソファーに座っている。和真と成美は隣り合って座り、その向かいに瑞希が座っている。テーブルの上には和菓子店の紙袋、開封されているきんつばの箱、茶の入ったカップが置かれている。3人はきんつばを食べている。
 尚人、勇、リビングに入ってくる。
尚人「どうぞ」
 勇、会釈しながら、
勇「お邪魔します。取りに来ました」
 勇、テーブルの上を見るなり表情が曇る。
 尚人、瑞希の隣りに座る。尚人と瑞希は詰めて座り、勇が座るスペースを空ける。
尚人「(微笑んで)座って」
勇「お言葉に甘えて…」
 勇、尚人の隣りに座る。
 和真、勇の方に紙袋に押して、
和真「これ、相良さんの分ね」
 勇、テーブルに広げられているきんつばに視線をやりながら、
勇「はい、ありがとうございます…」
和真「心配しないで、こっちは自腹だから。お釣りは紙袋に入ってるよ」
勇「はい…」
和真「友達に聞いたんだけどよくわからなかったんだよね。だからネットで調べてみたら、そこが老舗で有名らしくて。食べたかったのはそれ?」
勇「そうです、たぶん…」
尚人「(笑って)ちゃうかったら正直に言うてくれた方が、和真にとっても有り難いと思うで」
和真「相良さん、何か違うの?」
勇「(言い淀むように)思ってたものとは少し違うかも… でも伴さんのせいではないんです。僕が曖昧なお願いをしたから…」
和真「(イライラしたように)何? 全く聞こえないよ」
瑞希「思うてたんと違うたんやって」
勇「だってこれはきんつばじゃないですか!」
和真「えっ、そうだよ、きんつばだよ。きんつばが欲しいって言ったよね?」
勇「きんつばだけどきんつばじゃないんです。僕が想像してたのは丸くて、ほかほかしてて、中に餡子が入ってて…」
瑞希「それ、御座候(ござそうろう)とちゃうけ?」
勇「そう、確かそんな名前です!」
成美「大判焼きのことを言いたかったのか」
勇「そうか、『きんつば』って方言か。一般的には大判焼きか今川焼きですよね」
瑞希「ちゃうやろ、回転焼きやろ」
成美「面倒だな、まったく、ベイクドモチョチョにしよう。(指文字で示しながら)ベ、イ、ク、ド、モ、チョ、チョ」
勇「ベイクドモチョチョ…」
和真「ベイクドモチョチョのことを『きんつば』って言う地域があるんだ?」
勇「はい、たぶん会津の方言ですね、うっかりしてました」
 成美、きんつばを持ち上げて、
成美「じゃ、これは何て呼ぶの?」
勇「それはきんつばです」
成美「ややこしいな」
勇「ところでお店の名前は何でしたっけ? すみません、なかなか覚えられなくて」
和真「御座候。確かに兵庫県ではベイクドモチョチョのことを『御座候』って言うね」
勇「御座候ですね、覚えました」
瑞希「大阪でもそうやな、御座候って呼ぶ人もいてるな。店舗もあるし」
勇「関西ではそんなに有名なんですね。やっぱりおいしいのかな?」
成美「ベイクドモチョチョだろ? どこで買ってもそんなに変わらねぇだろ」
尚人「御座候はおいしいと思うけど…」
和真「餡子に違いが出るよね」
成美「そうか?」
瑞希「俺もそんなに違いがわからへんかった…」
勇「そこは食べてからのお楽しみにします。今日はお預けになっちゃいましたが」
尚人「とりあえずきんつばでも食べてく?」
勇「そうですね。ではいただきます」
 勇、テーブルの上のきんつばに手を伸ばす。
 勇、きんつばを食べる。
勇「これ、おいしいですね。老舗だけありますね」
成美「きんつばなんてどれも一緒じゃねぇ?」
尚人「一緒ちゃうやろ」
勇「星さん、味覚ないんですか?」
和真「成美、ジャンクフードばかり食べてるからね。そういえば相良さん」
勇「はい?」
和真「御座候に行ったら、赤あんと白あんのどっちが好きか教えてよ」
勇「二種類あるんですね?」
和真「そう」
瑞希「それはそれで論争が起きそうやな… ちなみに俺は白やな」
和真「赤でしょ。ちなみに成美は違いがわからないよね?」
成美「それくらいわかるわ。赤だな」
尚人「そこはどっちもそれぞれ良さがあるってことで…」
勇「ふふふ、御座候、早く食べてみたいな」

❤️

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