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泥棒
2026/06/28 17:05※尚人は弱視、和真は難聴の当事者です。
※尚人はフランス語を話すことができます。
※尚人はムスリムです。
※作中で犯罪行為について言及していますが、そのような行為を推奨する意図はありません。
○本部 カフェテリア-中 昼
成美、和真、尚人、瑞希、テーブルに着いている。成美と和真が隣り合って座り、その対面に尚人と瑞希が座っている。テーブルの上には飲み物と軽食が置かれている。
成美、背筋を伸ばして座り直し、
成美「頼みがある! 透を見かけたら教えてくれないか」
和真「透くん? 何で?」
成美「詳しくは言えねぇけど、ちょっと透と揉めちまってよ… 会うのが気まずいんだよ」
和真「揉めた? 面倒なことじゃないだろうね?」
瑞希「こっちまで余計なことに巻き込まれたらかなんで」
成美「ホントにちょっとしたことだよ。お前らのことまで巻き込んだりしねぇよ」
尚人「ホンマに? それやったらそこまで逃げんでええんちゃう?」
成美「とにかく頼む! どうしてもあいつと会いたくねぇんだ。もしややこしいことに巻き込まれそうになったら、容赦なく俺を捨ててくれ!」
瑞希「そこまで言うんやったら…」
成美「助かるぜ! 和真、お前は透の姿に目を凝らせ」
和真「はい、はい」
成美「尚人、お前は透の声に耳を澄ませろ」
尚人「…OK」
成美「瑞希、お前は広範囲に注意しろ」
成美が話している間、透がカフェテリアに入ってくる。
瑞希、透を気にするように視線をやりながら、
瑞希「…わかった」
成美「透を見かけたらすぐに俺に連絡してくれ。ついでにどこで見かけたかも教えてほしい。マジで見つかったらヤバいんだって」
成美が話している間、透が成美の方へ歩いてくる。
瑞希、ちらちらと透に視線をやる。
成美、顔の前で両手を合わせて、
成美「俺ら、友達だろ? 友達なら助けてくれよ! 一生のお願いだから!」
透、成美の背後に立ち、成美を冷たい目で見下ろす。
尚人、透を見上げ、ぎこちなく微笑む。
和真、横目で一瞬だけ透に視線をやる。
和真「どれだけ一生のお願いがあるんだよ。それ、本当に面倒なことじゃないの?」
成美「ホントに大したことねぇよ。透が大袈裟なんだよ。あいつ、ケチで短気だからさ。ちょっと財布を借りただけだって。どうせ金ならいくらでも持ってるのに、金持ちって強欲だよな」
透「おい」
成美、慌てて後ろを振り返り、透を見上げる。
成美「(引きつった笑顔で)透、お疲れ」
透「他に言うことは?」
成美、椅子から立ちあがろうと腰を浮かせるが、上から透に肩を押さえられ、椅子に戻される。
和真「何があったの?」
成美「くだらねぇ話だよ。俺が透から財布を借りてるってだけ。後で返そうとは思ってるんだぜ。(ヘラヘラと笑って)でも無断だったのが良くなかったかな」
透「で?」
成美「悪かったな、事後報告になっちまって。次の給料日には必ず返すから」
和真「成美は何て?」
尚人「透から財布を盗んで、それを『借りた』と言い訳してる」
成美「盗んでねぇよ。返すって言ってるじゃん」
透、成美の肩から手を離し、
透「それだけか?」
成美、透の顔を見上げて、
成美「ごめんって、そんなに怒るなよ。返すんだからプラマイゼロじゃん。後で飯も奢るから」
透「それが人に謝罪する態度か」
透、ズボンのポケットからスマホを取り出す。
透「これを見てほしいんだけど」
透、スマホを操作し、和真にスマホを渡す。スマホにはLINEのトークルームが表示されている。
和真、スマホを見ながら、
和真「何だって? 『財布を借りてごめんなさい 後で必ず返します 金欠なので許してください カードは置いていきます』」
尚人「一応、無断ではなかったんやな」
瑞希「カードは盗まんかったところに僅かな良心を感じるな」
和真、透にスマホを返しながら、
和真「というか盗まれたのは財布なの? 現金だけ?」
成美「だから盗んだって言うな」
透、成美と和真の間にしゃがみ、
透「財布と現金を持って行かれた。カードは律儀に置いてあったよ」
瑞希「…質に入れよったな?」
尚人「まさか。他人の財布やで」
和真「でも透くん、確かエルメスだったよね?」
透「そうだな」
成美「(ぎこちなく笑って)いくら俺でもあり得ねぇ。さすがにそこまでクズじゃねぇよ。瑞希と一緒にすんな」
瑞希「お前こそ俺と一緒にすんなや。俺は自己責任で借金してねん」
透「借りているだけと主張するなら、今すぐ財布だけでも返せるだろ。どう?」
しばらくの静寂。
成美、背筋を伸ばしてから、頭を下げて、
成美「質に入れました。申し訳ございませんでした」
尚人「Oh là là…」
瑞希「ホンマもんのクズや…」
和真「どうするの、それ?」
成美「金ができたらすぐに取り返すよ」
透「金ができたらすぐに使うだろ。信用できるか」
成美「じゃ、どうしろって言うんだよ」
透、ため息をついて、
透「一週間やる。一週間までに返さなかった場合、お前のガラクタを査定にかける」
成美「おい、待て、それはやめろ! 慈悲はねぇのか!」
透「実際に困窮してるなら考えなくもないけど、お前は窃盗する前にできることあっただろ。でも仏教徒の一人として、特別に慈悲と寛容の心で対処してやるよ。どうせ財布に入ってた現金は使い込んでるだろ? その分は不問にするよ」
瑞希「よかったやん、呉本に感謝するんやで」
和真「そもそも警察に通報されないだけ寛容だよね」
成美「無理だって、手持ちが全くねぇもん。一週間じゃどうにもならねぇよ」
透「成美、仏教では手放す心も大切だ。ガラクタを全て手放すか、一部だけ手放すか、どちらかを選ぶだけの簡単なことだ」
成美「どっちも選べねぇ… 透、頼む! 金を貸してくれ! 給料日になったらATMまで連行してくれてもいいから!」
少しの静寂。
和真「もしかしてさっき透くんにお金をせがんだ?」
尚人、頷いて、
尚人「そう」
少し間を置いて、
和真「俺が貸すか… 尚人と瑞希はどうする?」
尚人「ええけど…」
瑞希「貸したらなしゃあないよな…」
和真「三分割にしよう。透くん、それでいい?」
透「そっちが構わないなら… 何なら給料日まで待つけど」
和真「一週間で何とかするよ。お金のトラブルはさっさと解決してしまいたい。こっちは何かあったらボコるからいいけど、透くんはこのままだったら落ち着かないでしょ?」
透「そうだな」
成美「サンキュ! 持つべきものはいつでも助けてくれる友だぜ!」
瑞希「俺も困ったときは助けてもろうてるからお互いさま…なんかな」
尚人「これはサダカなんや、うん」
透、立ち上がって、
透「じゃ、そっちに任せるよ」
和真「迷惑をかけたね」
透「そっちこそ迷惑をかけられてるな」
和真「成美と友達を続けるなら迷惑は避けられないからね」
透「苦労してるな… 俺はそろそろ行くよ」
透、その場から立ち去る。
成美「(透の背中に向かって)マジでごめん! 二度とやらねぇから! 今回だけはノブレス・オブリージュってことでチャラにしてくれ!」
透、振り返らずに去る。
和真「泥棒が言うことじゃないよ、それ」
❤️
※尚人はフランス語を話すことができます。
※尚人はムスリムです。
※作中で犯罪行為について言及していますが、そのような行為を推奨する意図はありません。
○本部 カフェテリア-中 昼
成美、和真、尚人、瑞希、テーブルに着いている。成美と和真が隣り合って座り、その対面に尚人と瑞希が座っている。テーブルの上には飲み物と軽食が置かれている。
成美、背筋を伸ばして座り直し、
成美「頼みがある! 透を見かけたら教えてくれないか」
和真「透くん? 何で?」
成美「詳しくは言えねぇけど、ちょっと透と揉めちまってよ… 会うのが気まずいんだよ」
和真「揉めた? 面倒なことじゃないだろうね?」
瑞希「こっちまで余計なことに巻き込まれたらかなんで」
成美「ホントにちょっとしたことだよ。お前らのことまで巻き込んだりしねぇよ」
尚人「ホンマに? それやったらそこまで逃げんでええんちゃう?」
成美「とにかく頼む! どうしてもあいつと会いたくねぇんだ。もしややこしいことに巻き込まれそうになったら、容赦なく俺を捨ててくれ!」
瑞希「そこまで言うんやったら…」
成美「助かるぜ! 和真、お前は透の姿に目を凝らせ」
和真「はい、はい」
成美「尚人、お前は透の声に耳を澄ませろ」
尚人「…OK」
成美「瑞希、お前は広範囲に注意しろ」
成美が話している間、透がカフェテリアに入ってくる。
瑞希、透を気にするように視線をやりながら、
瑞希「…わかった」
成美「透を見かけたらすぐに俺に連絡してくれ。ついでにどこで見かけたかも教えてほしい。マジで見つかったらヤバいんだって」
成美が話している間、透が成美の方へ歩いてくる。
瑞希、ちらちらと透に視線をやる。
成美、顔の前で両手を合わせて、
成美「俺ら、友達だろ? 友達なら助けてくれよ! 一生のお願いだから!」
透、成美の背後に立ち、成美を冷たい目で見下ろす。
尚人、透を見上げ、ぎこちなく微笑む。
和真、横目で一瞬だけ透に視線をやる。
和真「どれだけ一生のお願いがあるんだよ。それ、本当に面倒なことじゃないの?」
成美「ホントに大したことねぇよ。透が大袈裟なんだよ。あいつ、ケチで短気だからさ。ちょっと財布を借りただけだって。どうせ金ならいくらでも持ってるのに、金持ちって強欲だよな」
透「おい」
成美、慌てて後ろを振り返り、透を見上げる。
成美「(引きつった笑顔で)透、お疲れ」
透「他に言うことは?」
成美、椅子から立ちあがろうと腰を浮かせるが、上から透に肩を押さえられ、椅子に戻される。
和真「何があったの?」
成美「くだらねぇ話だよ。俺が透から財布を借りてるってだけ。後で返そうとは思ってるんだぜ。(ヘラヘラと笑って)でも無断だったのが良くなかったかな」
透「で?」
成美「悪かったな、事後報告になっちまって。次の給料日には必ず返すから」
和真「成美は何て?」
尚人「透から財布を盗んで、それを『借りた』と言い訳してる」
成美「盗んでねぇよ。返すって言ってるじゃん」
透、成美の肩から手を離し、
透「それだけか?」
成美、透の顔を見上げて、
成美「ごめんって、そんなに怒るなよ。返すんだからプラマイゼロじゃん。後で飯も奢るから」
透「それが人に謝罪する態度か」
透、ズボンのポケットからスマホを取り出す。
透「これを見てほしいんだけど」
透、スマホを操作し、和真にスマホを渡す。スマホにはLINEのトークルームが表示されている。
和真、スマホを見ながら、
和真「何だって? 『財布を借りてごめんなさい 後で必ず返します 金欠なので許してください カードは置いていきます』」
尚人「一応、無断ではなかったんやな」
瑞希「カードは盗まんかったところに僅かな良心を感じるな」
和真、透にスマホを返しながら、
和真「というか盗まれたのは財布なの? 現金だけ?」
成美「だから盗んだって言うな」
透、成美と和真の間にしゃがみ、
透「財布と現金を持って行かれた。カードは律儀に置いてあったよ」
瑞希「…質に入れよったな?」
尚人「まさか。他人の財布やで」
和真「でも透くん、確かエルメスだったよね?」
透「そうだな」
成美「(ぎこちなく笑って)いくら俺でもあり得ねぇ。さすがにそこまでクズじゃねぇよ。瑞希と一緒にすんな」
瑞希「お前こそ俺と一緒にすんなや。俺は自己責任で借金してねん」
透「借りているだけと主張するなら、今すぐ財布だけでも返せるだろ。どう?」
しばらくの静寂。
成美、背筋を伸ばしてから、頭を下げて、
成美「質に入れました。申し訳ございませんでした」
尚人「Oh là là…」
瑞希「ホンマもんのクズや…」
和真「どうするの、それ?」
成美「金ができたらすぐに取り返すよ」
透「金ができたらすぐに使うだろ。信用できるか」
成美「じゃ、どうしろって言うんだよ」
透、ため息をついて、
透「一週間やる。一週間までに返さなかった場合、お前のガラクタを査定にかける」
成美「おい、待て、それはやめろ! 慈悲はねぇのか!」
透「実際に困窮してるなら考えなくもないけど、お前は窃盗する前にできることあっただろ。でも仏教徒の一人として、特別に慈悲と寛容の心で対処してやるよ。どうせ財布に入ってた現金は使い込んでるだろ? その分は不問にするよ」
瑞希「よかったやん、呉本に感謝するんやで」
和真「そもそも警察に通報されないだけ寛容だよね」
成美「無理だって、手持ちが全くねぇもん。一週間じゃどうにもならねぇよ」
透「成美、仏教では手放す心も大切だ。ガラクタを全て手放すか、一部だけ手放すか、どちらかを選ぶだけの簡単なことだ」
成美「どっちも選べねぇ… 透、頼む! 金を貸してくれ! 給料日になったらATMまで連行してくれてもいいから!」
少しの静寂。
和真「もしかしてさっき透くんにお金をせがんだ?」
尚人、頷いて、
尚人「そう」
少し間を置いて、
和真「俺が貸すか… 尚人と瑞希はどうする?」
尚人「ええけど…」
瑞希「貸したらなしゃあないよな…」
和真「三分割にしよう。透くん、それでいい?」
透「そっちが構わないなら… 何なら給料日まで待つけど」
和真「一週間で何とかするよ。お金のトラブルはさっさと解決してしまいたい。こっちは何かあったらボコるからいいけど、透くんはこのままだったら落ち着かないでしょ?」
透「そうだな」
成美「サンキュ! 持つべきものはいつでも助けてくれる友だぜ!」
瑞希「俺も困ったときは助けてもろうてるからお互いさま…なんかな」
尚人「これはサダカなんや、うん」
透、立ち上がって、
透「じゃ、そっちに任せるよ」
和真「迷惑をかけたね」
透「そっちこそ迷惑をかけられてるな」
和真「成美と友達を続けるなら迷惑は避けられないからね」
透「苦労してるな… 俺はそろそろ行くよ」
透、その場から立ち去る。
成美「(透の背中に向かって)マジでごめん! 二度とやらねぇから! 今回だけはノブレス・オブリージュってことでチャラにしてくれ!」
透、振り返らずに去る。
和真「泥棒が言うことじゃないよ、それ」
❤️