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大阪はおもろいところ

2026/06/19 06:56
※勇は福島県の出身です。
※透は虫が好きです。
※チューイとは知久が飼っている猫のことです。
※今回、透のセリフは大阪弁で書いています。詳しくはこちら

○本部 休憩室 昼

 勇、知久、テーブルを挟んで、向かい合って椅子に座っている。知久の前にはコーヒーとパン、勇の前には緑茶と羊羹(小分けにされていて押し出して食べるタイプ)が置かれている。
知久「相良さん、大阪には慣れた?」
勇「そうですね…」
 勇、少し考え込んでから、
勇「僕、慣れることあるんでしょうか? 最近、自信がなくなってしまって」
知久「どないしたん?」
勇「僕、おもしろいことが言えなくて… 福島にはそういう文化はなかったから、こちらの文化について行ける気がしないんです」
知久「…俺ら、そんなにおもろいこと強要してた?」
勇「違います、誰かに強要されたというわけではないんですが… 丹羽さんからお聞きしたんですけど、大阪の学校では漫才が必修になっていて、小学生でも漫才ができるんですよね? しかも友達や恋人を選ぶときにも、おもしろいかどうかがかなり重視されるとか…」
知久「待って、そんな事実はあらへん。友達や恋人にユーモアを求めるって人は確かにいてるんやけど、それも個人差あるから。福島や東京にもおるやろ、そういう人。というか昴の言うことをいちいち信じんなや。あいつ、新潟県民やで」
勇「僕、また丹羽さんに騙されてしまったのでしょうか!?」
知久「そうなるな」
 少し間を置いて、
勇「そういえば桐生さんはずっと大阪なんですよね?」
知久「そやで」
 勇、左手で銃のような形を作り、知久に向け、
勇「バン!」
 知久、一瞬だけきょとんとした顔をしてから、手で左胸を押さえ、大袈裟に苦しそうな演技をしながら、
知久「ここまでか… チューイのことは任せたで…」
 知久、コーヒーをわきにどかして、テーブルに突っ伏す。
勇「(嬉しそうににこにこして)大阪に来たら一度は試してみたかったんですよ。やっぱり大阪の人はやってくれるんですね」
 知久、体を起こして、
知久「ホンマに大阪に偏見ありすぎやろ。俺が特別にホスピタリティーに溢れてるってだけやで。大阪人ならノってくれるよって、それも昴から聞いたん?」
勇「いいえ、ケ○ミンSHOWで言ってましたよ」
知久「ケン○ンSHOWを教材にすんなや。それよりいきなり殺さんといてくれる? 少し時間をくれたら、もっと気の利いたこと言えたのに」
勇「そういうものなんですか?」
知久「そういうもんやろ。即興でおもろいこと言えるんは芸人くらいやで」
勇「大阪の人でもそうなのか… わかりました」

○本部 廊下 昼

 トイレの前にて。勇がトイレに入ろうとしたところで、瑞希がトイレから出てくる。
 勇、立ち止まって、
勇「お疲れさまです」
瑞希「お疲れさん」
勇「ちょっといいですか」
 瑞希、立ち止まる。
瑞希「何や?」
勇「質問したいことがありまして。お時間あります?」
瑞希「ええで」
勇「今、ここでいきなり殺されるとします」
瑞希「えっ、何の質問なん!?」
勇「ただの大喜利みたいなものです」
瑞希「大喜利…」
勇「理由はわかりませんがいきなり殺されるとします。寺田さんなら最後に何を言いますか?」
瑞希「ネタやねんな、これ? 『やっと借金から解放される』くらいしか思いつかへんな。おもろないよな…」
勇「それが答えですね?」
 勇、左手で銃のような形を作り、瑞希に向け、
勇「バン!」
 瑞希、きょとんとした顔をする。
瑞希「えっ?」
 勇、再び撃つふりをする。
勇「バン!」
 瑞希、きょとんとした顔のまま固まっている。
勇「寺田さん、さっきの話を思い出してください」
瑞希「(はっとしたような顔をして)ああ!」
 瑞希、左胸を手で押さえ、体を屈めて、
瑞希「これで借金から解放される… 殺してくれてありがとう…」
勇「…自虐的すぎません?」
 瑞希、体を起こし、
瑞希「まだ800万あるからな… スリップするからなかなか減らへんねん」
勇「そんなにあったんですか!? …大丈夫ですか?」
瑞希「(笑って)イケる、イケる。俺、しぶとさだけは誰にも負けへんから。ほな、そろそろ行くわ。ギャンブルだけは絶対にやったらあかんで!」
勇「わかりました…」
 瑞希、立ち去る。勇は立ち尽くしている。

○寮 庭 朝

 庭はよく手入れされている。
 透、手袋をはめて、木や花を様々な角度から眺めたり、葉をひっくり返したりしている。
 勇、寮の方から歩いてくる。
勇「おはようございます」
透「おはよう」
 透の近くで立ち止まり、
勇「何をされてるんですか?」
透「イモムシでもいないかなって」
勇「何かいました?」
透「いるにはいるんやけど、会いたいやつにはまだ会えてへんな」
勇「自然は気紛れですからね」
透「気長に待つよ」
 少し間を置いて、
勇「そういえば呉本さん」
 透、手を止め、勇の方を向いて立ち、
透「何?」
勇「今からちょっとした遊びを仕掛けるので、辞世の句みたいなネタを考えてくれませんか?」
透「はあ?」
勇「ブラックジョークはちょっと難しいので、できれば穏やかなネタでお願いします」
透「やらへんで、俺」
勇「いいから、いいから。大阪の人はやってくれるでしょ?」
透「大阪人やからって…」
 勇、左手で銃のような形を作り、透に向け、
勇「バン!」
 透、真顔で立っている。
 勇、再び撃つふりをする。
勇「バン!」
 透、突っ立ったまま。
勇「ちょっと、呉本さん! やってくださいよ! 大阪の人は撃つふりをしたらノってくれるって、ケンミ○SHOWで見ましたよ」
透「…○ンミンナントカって何?」
勇「知らないんですか? 全国の県民性や文化について紹介している番組ですよ。テレビ、見ないんですか?」
透「俺、テレビはN○Kと映画しか見ぃひんから」
勇「呉本さんはそうでしたね。とにかくケンミンSH○Wでそうやって言ってたんです」
透「で?」
勇「大阪では笑いが大事なんじゃないんですか?」
透「それ、ホンマにうっとうしいねん、大阪人やからってステレオタイプを押し付けられるのが。テレビが何と言おうと、俺が大阪人や」
勇「そう言われたら反論できませんが…」
 少し間を置いて、
勇「その通りですね。おもしろくてもおもしろくなくても大阪人は大阪人ですもんね」
透「それがわかったらええねん。そういえば相良さん」
勇「はい?」
 透、右手で銃のような形を作り、勇に向け、
透「バン!」
 勇、一瞬だけ固まってから、左胸を手で押さえて、
勇「まだ世界のおいしいものを食べ尽くしてないのに…」
透「(鼻で笑って)大しておもろくないな」
 勇、体を起こして、
勇「急に振られても困りますよ!」
透「他人に仕掛けるんやったら自分も準備くらいするもんやろ」
勇「油断していました… 僕はまだ笑いをわかっていないようですね」

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