fragment
逃げられない
2026/05/29 02:57※透は過去に心室細動で倒れて生還したことがあります。
※勇は野鳥観察が趣味です。
○寮の庭 昼
よく手入れされた庭。
透、庭のベンチに座り、ぼうっと庭を眺めている。ベンチの上には菓子の箱が置かれている。
勇、寮の方から歩いてくる。
透、勇の方をちらっと見る。
勇「(大きな声で)呉本さん!」
勇、透の方へ向かう。
透、菓子の箱を膝の上に乗せる。
勇、透の近くで立ち止まり、
勇「お隣り、いいですか?」
透、勇から目を逸らす。
勇、透の隣りに座る。
勇「(元気な声で)良い天気ですね!」
透「声がデカい… 俺、一人で過ごしたいんだけど…」
勇「僕は呉本さんと話したいんです!」
透「出かけるんじゃないのか」
勇「ただ散歩に行こうと思ってただけです。どうせ暇でしょ?」
透「暇じゃない。ぼうっとすることに忙しかったんだ」
勇「それは暇ってことでは?」
透「俺には俺のペースがあるんだ。ほっといてくれ」
少し間を置いて、
勇「そういえば鳥さんと話してて気づいたんですが、大阪の鳥さんも関西弁を話すんですね」
透「へぇ」
勇「嘘だと思ってるでしょ?」
透「思ってないよ」
勇「ぜひ機会があれば聴き比べてみてください。鳥の囀りは地域ごとに違いがあったりします」
透「観察力がすごいな」
勇「そんなことはないですよ。ただ鳥さんと心から向き合っているだけです」
透「ふーん。…そうだ、相良さんって他にも特技があったよな、どんな場所でも寝れるとか」
勇「はい、よく覚えていましたね。嬉しいです」
透「それ、見せてほしい」
勇「ここでですか?」
透「うん、ここで。本当にできるのか気になって」
勇「たぶんできると思いますが… 僕、騙されているような気がする」
透「俺が? 嘘が下手なことくらい自分でもわかってるよ。純粋に好奇心だよ」
勇「そのようですね。ではやってみます」
勇、リラックスした姿勢に座り直し、腕を組んで首を下げ、目を閉じる。
しばらくの静寂。
勇、呼吸が深くなる。
透、勇の顔を覗き込む。
透、そっと立ち上がり、寮の方に歩き出そうとする。
勇、片目を開けている。
勇「呉本さん」
透、立ち止まって振り返る。
勇、顔を上げて、
勇「さすがに人にじろじろ見られちゃ寝づらいですよ。お見せできなくて残念です!」
透「そうだよな…」
透、ベンチに戻って座る。
勇「呉本さん、そんなに僕と話すのが嫌なんですか?」
透「相良さんこそ何で俺と話したいんだよ。つまらないだろ」
勇「僕、呉本さんが倒れたときに、大切な人とは会える内に会っておこうと思ったんです」
透「そう言ってもらえるのは嬉しいけど、俺は自分が死にかけてから、できるだけ好きなことをして生きようと思ったよ。終わるときは終わってしまう人生、わざわざ嫌なことに割く時間はないって、例えば社交とか」
勇「呉本さんはそうなんですか…」
透「そうだよ」
しばらくの静寂。
真澄の声「イッサ! 呉本さん!」
透、勇、声がする方を振り返る。
真澄、エコバッグを持って、門の方から歩いてくる。
透「また人が増えたよ…」
真澄、ベンチの近くで立ち止まり、
真澄「暇そうだね」
勇「暇ですよ。立花さんはお仕事が終わったところですか?」
真澄「そう、今日はやることが少なかったから」
勇「立花さんも一緒にお喋りしていきます?」
真澄「それもいいけど… ちょうどお菓子を買ってきたところだから、私の部屋でお茶しない?」
透「(嫌そうな顔)えっ…」
勇「おっ、いいですね。お言葉に甘えます」
透「俺は用事が…」
勇「呉本さんも暇らしいんで、ぼうっとすることに忙しいくらい暇らしいんで」
真澄「よかったら呉本さんも来て。私、呉本さんと部屋でお茶したこと、今までなかったかも」
勇「それは良い機会ですね」
透、ベンチの背もたれにもたれかかり、遠い目をする。
真澄「(笑って)そんなに嫌がらないでよ。気持ちは後からついて来るものだから。来てみたら楽しいよ」
透「(呟くように)立花と相良さんには俺の気持ちはわからない…」
勇、ベンチから立ち上がり、
勇「行きましょう、呉本さん」
透「これ、断るって選択肢はないんだよな」
真澄「そうだよ」
真澄、透の片腕を引っ張る。
透、渋々と立ち上がる。
透、勇、真澄、寮の方へ向かいながら、
真澄「楽しみだね」
勇「そうですね」
❤️
※勇は野鳥観察が趣味です。
○寮の庭 昼
よく手入れされた庭。
透、庭のベンチに座り、ぼうっと庭を眺めている。ベンチの上には菓子の箱が置かれている。
勇、寮の方から歩いてくる。
透、勇の方をちらっと見る。
勇「(大きな声で)呉本さん!」
勇、透の方へ向かう。
透、菓子の箱を膝の上に乗せる。
勇、透の近くで立ち止まり、
勇「お隣り、いいですか?」
透、勇から目を逸らす。
勇、透の隣りに座る。
勇「(元気な声で)良い天気ですね!」
透「声がデカい… 俺、一人で過ごしたいんだけど…」
勇「僕は呉本さんと話したいんです!」
透「出かけるんじゃないのか」
勇「ただ散歩に行こうと思ってただけです。どうせ暇でしょ?」
透「暇じゃない。ぼうっとすることに忙しかったんだ」
勇「それは暇ってことでは?」
透「俺には俺のペースがあるんだ。ほっといてくれ」
少し間を置いて、
勇「そういえば鳥さんと話してて気づいたんですが、大阪の鳥さんも関西弁を話すんですね」
透「へぇ」
勇「嘘だと思ってるでしょ?」
透「思ってないよ」
勇「ぜひ機会があれば聴き比べてみてください。鳥の囀りは地域ごとに違いがあったりします」
透「観察力がすごいな」
勇「そんなことはないですよ。ただ鳥さんと心から向き合っているだけです」
透「ふーん。…そうだ、相良さんって他にも特技があったよな、どんな場所でも寝れるとか」
勇「はい、よく覚えていましたね。嬉しいです」
透「それ、見せてほしい」
勇「ここでですか?」
透「うん、ここで。本当にできるのか気になって」
勇「たぶんできると思いますが… 僕、騙されているような気がする」
透「俺が? 嘘が下手なことくらい自分でもわかってるよ。純粋に好奇心だよ」
勇「そのようですね。ではやってみます」
勇、リラックスした姿勢に座り直し、腕を組んで首を下げ、目を閉じる。
しばらくの静寂。
勇、呼吸が深くなる。
透、勇の顔を覗き込む。
透、そっと立ち上がり、寮の方に歩き出そうとする。
勇、片目を開けている。
勇「呉本さん」
透、立ち止まって振り返る。
勇、顔を上げて、
勇「さすがに人にじろじろ見られちゃ寝づらいですよ。お見せできなくて残念です!」
透「そうだよな…」
透、ベンチに戻って座る。
勇「呉本さん、そんなに僕と話すのが嫌なんですか?」
透「相良さんこそ何で俺と話したいんだよ。つまらないだろ」
勇「僕、呉本さんが倒れたときに、大切な人とは会える内に会っておこうと思ったんです」
透「そう言ってもらえるのは嬉しいけど、俺は自分が死にかけてから、できるだけ好きなことをして生きようと思ったよ。終わるときは終わってしまう人生、わざわざ嫌なことに割く時間はないって、例えば社交とか」
勇「呉本さんはそうなんですか…」
透「そうだよ」
しばらくの静寂。
真澄の声「イッサ! 呉本さん!」
透、勇、声がする方を振り返る。
真澄、エコバッグを持って、門の方から歩いてくる。
透「また人が増えたよ…」
真澄、ベンチの近くで立ち止まり、
真澄「暇そうだね」
勇「暇ですよ。立花さんはお仕事が終わったところですか?」
真澄「そう、今日はやることが少なかったから」
勇「立花さんも一緒にお喋りしていきます?」
真澄「それもいいけど… ちょうどお菓子を買ってきたところだから、私の部屋でお茶しない?」
透「(嫌そうな顔)えっ…」
勇「おっ、いいですね。お言葉に甘えます」
透「俺は用事が…」
勇「呉本さんも暇らしいんで、ぼうっとすることに忙しいくらい暇らしいんで」
真澄「よかったら呉本さんも来て。私、呉本さんと部屋でお茶したこと、今までなかったかも」
勇「それは良い機会ですね」
透、ベンチの背もたれにもたれかかり、遠い目をする。
真澄「(笑って)そんなに嫌がらないでよ。気持ちは後からついて来るものだから。来てみたら楽しいよ」
透「(呟くように)立花と相良さんには俺の気持ちはわからない…」
勇、ベンチから立ち上がり、
勇「行きましょう、呉本さん」
透「これ、断るって選択肢はないんだよな」
真澄「そうだよ」
真澄、透の片腕を引っ張る。
透、渋々と立ち上がる。
透、勇、真澄、寮の方へ向かいながら、
真澄「楽しみだね」
勇「そうですね」
❤️