the small garden
※先に「大阪はおもろいところ」を読んだ方が内容をよく理解できます。
※今回、透のセリフを大阪弁で書いています。詳しくはこちら。
○寮 透の部屋 リビング 昼
インテリアは北欧ナチュラルを基調としていて、室内は清潔で整っている。
知久、透、ソファーに隣り合って座っている。テーブルを挟んだ向かいに瑞希が座っている。テーブルの上にはそれぞれ飲み物が置かれている。三人は真剣な表情。
知久「とうとう相良さんから『値切ってるところを見せてほしい』って言われたで… どうする?」
瑞希「俺も言われたわ。俺、値切ったことなんてないのに、たぶん…」
知久「俺もないわ。むしろこっちが見せてほしいくらいなんやけど、大阪人がホンマに値切ってるところ」
透「バイトが店員やってる店ではやらんよな、普通。値引きする権限もないやろうし」
知久「それが今のリアルやんな」
瑞希「店員がバイトちゃうかったら値切ることもあるってことけ?」
透「時と場合による。値切るというか交渉というか」
瑞希「例えばどんなシチュエーションなん?」
透「そうやな…」
透、少し考え込んでから、
透「この部屋の家具がそうやな。ここに入居するときにまとめて買ったから、外商さんに多少の交渉はしたかな」
瑞希「えっ?」
知久「寺田さんはまだいてへんかったから知らんと思うけど、透が寮に入るとき、百貨店から外商さんを呼んでインテリアを決めてもろうたりしてたんやで」
瑞希「うわっ、ホンマもんの富豪や。実在するんや、そういう人。死んでほしい…」
透「はあ!?」
瑞希「遺書に『相続人を寺田瑞希にする』って書いてから死んでほしい…」
透「何でお前にせんとあかんねん」
瑞希「こんな不幸の役満みたいな人生、一度くらい報われてもええやろ」
透、黙り込む。
知久「(軽いノリで)他力本願すぎるやろ。とりあえず透が相良さんに値切るところを見せたるってことで」
透「何で俺やねん」
知久「透の他にできる人おらんもん」
透「する機会がなかったらせぇへんで、俺。今、値切るような用事ないし」
瑞希「相良さんが忘れてくれるんを待つしかないな。たぶん相良さんも何となく言うてみただけやろ」
知久「そうやな」
透「ところで先週やったかな、相良さんからいきなりバナナを渡されたんやけど、あれって何が正解やったんやろ」
瑞希「俺も渡された! 俺、バナナとか食べへんし、何のことかようわからんかったからそのまま返したら『違う』って言われたんやけど」
透「俺はくれるんかなって思って食べたら、どうやらそれも違うらしい」
知久「(笑って)さすがにそれはちゃうやろ。相良さん、ちゃんとツッコんでくれた?」
透「特には」
知久「ようツッコまんのに振るのはあかんよな。俺、正解を知ってんで」
瑞希「何なん?」
知久「電話に出るふりをすんねん」
瑞希「そんなんわからへんって」
透「誰が決めたん、それ」
知久「都市伝説的に広まってるネタみたいなもんやな」
透「で、こっちが都市伝説に合わせてやらんとダメなん?」
瑞希「正直、プレッシャーやねんな、大阪人はおもろいってイメージ…」
知久「それで悩んでる大阪人もけっこういてるよな」
瑞希「何とかならへんかな…」
知久「俺、相良さんに伝えたんやけどな、それはステレオタイプであって実際とはちゃうって」
透「俺も」
瑞希「でも誤解が解けるどころか日に日に強まってるような気ぃするんやけど…」
知久「何でやろうな。大阪で大阪人と生活してるのに」
透「(鼻で笑って)そんなん原因は言うまでもないやろ、ここに住んでるからやん」
少しの静寂。
知久「確かに… ここ、おもろいことしか起こらへんもん…」
瑞希「おもんなかったら存在意義がないからな、俺ら。この世界から消されてまう」
知久「ここで何を言うても説得力がなさすぎる…」
透「もう諦めるしかないな」
瑞希「せやけどそれってこっちのせいなんけ? ちょけてるのはみんなも同じやろ。大阪人だけちゃうで」
知久「何ならここでは大阪人はおもんない方やんな。明らかに相良さんの方がおもろいって」
瑞希「それな。それなのに何で大阪人だけおもろいこと強制されんねん」
透「理不尽すぎるよな」
知久「きっと黙ってやられっぱなしやからあかんねん。これからはこっちから振ってやったらええねん」
瑞希「俺もそうしようかな。みんな、ここで鍛えられてるんやからいけるやろ」
透「でも振ったら振ったでそこから笑いに繋げんとあかんからな… そっちの方が難しいような…」
瑞希「そうや… ボケられても返すことができへん… 俺には無理や」
知久「俺はそこには自信あるから。いつか仕返ししたるわ」
透「期待してるで」
瑞希「ところで話は変わるんやけど… この前、相良さんから六甲おろしを歌えって言われてん」
知久「歌えた?」
瑞希「さすがにメロディーは色んなところで聞いてるからわかるけど、歌詞まで覚えてへんな。大阪人やからって全員が阪神を応援してるわけちゃうし、全員が六甲おろしを歌えるとは思わんといてほしいわ」
知久「(すっと真顔になって)大阪人やったら歌えるやろ」
瑞希「ええっと… ボケなん、それ?」
知久「本気で言うてるけど。大阪人やったら歌えるやろ」
瑞希「で、でも呉本も歌われへんよな?」
透「俺は一番だけやったら…」
知久「一番だけか… 今回は特別に許したるわ。寺田さんは一番すら覚えてへんの?」
瑞希「(知久から目を逸らして)い、一番だけやったらいけるよ」
知久「ほな、歌ってや、ここで」
瑞希「今け?」
知久「今や」
瑞希「その前にちょっとスマホを見てもええ? 尚人から何かLINEが来てるかもしれへん」
知久「あかん。歌い終わってからでもできるやろ」
瑞希「わかったよ…」
少し間を置いて、
瑞希「(歌う)六甲颪に颯爽と ナントカコントカほにゃららら♪」
知久、大きくため息をつく。
知久「ないわ、それはないわ。大阪に住んでて六甲おろしを知らんなんてことある?」
透「普通にあるやろ。お前こそ大阪に住んでるんやからそんなことくらいわかるやろ」
瑞希「それこそ大阪人が大阪人のステレオタイプを信じんなや」
知久「…ちゃうねん、そういうことちゃうねん、俺が個人的に許されへんだけやねん。大阪人には六甲おろしを歌えるようになっといてほしいねん」
瑞希「そんなん知らんわ、お前の個人的なこだわりなんて」
知久「そうなんやけど付き合ってもらうで。今日は六甲おろしを覚えるまで帰さへんからな」
瑞希「俺がお前のために? そんな義理がどこにあんねん」
知久「ここで俺が寺田さんを教育したら、六甲おろしを歌える大阪人が一人は増えるやろ。透、お前も逃がさへんからな。三番まで覚えてもらう」
透「寺田さん、もう帰ってもええで。ここ、俺の部屋やから俺に決定権あるし」
知久「あかんって。今からレッスンを始めるで。まずは俺が見本を見せるから。(歌う)六甲颪に颯爽と♪」
※今回、透のセリフを大阪弁で書いています。詳しくはこちら。
○寮 透の部屋 リビング 昼
インテリアは北欧ナチュラルを基調としていて、室内は清潔で整っている。
知久、透、ソファーに隣り合って座っている。テーブルを挟んだ向かいに瑞希が座っている。テーブルの上にはそれぞれ飲み物が置かれている。三人は真剣な表情。
知久「とうとう相良さんから『値切ってるところを見せてほしい』って言われたで… どうする?」
瑞希「俺も言われたわ。俺、値切ったことなんてないのに、たぶん…」
知久「俺もないわ。むしろこっちが見せてほしいくらいなんやけど、大阪人がホンマに値切ってるところ」
透「バイトが店員やってる店ではやらんよな、普通。値引きする権限もないやろうし」
知久「それが今のリアルやんな」
瑞希「店員がバイトちゃうかったら値切ることもあるってことけ?」
透「時と場合による。値切るというか交渉というか」
瑞希「例えばどんなシチュエーションなん?」
透「そうやな…」
透、少し考え込んでから、
透「この部屋の家具がそうやな。ここに入居するときにまとめて買ったから、外商さんに多少の交渉はしたかな」
瑞希「えっ?」
知久「寺田さんはまだいてへんかったから知らんと思うけど、透が寮に入るとき、百貨店から外商さんを呼んでインテリアを決めてもろうたりしてたんやで」
瑞希「うわっ、ホンマもんの富豪や。実在するんや、そういう人。死んでほしい…」
透「はあ!?」
瑞希「遺書に『相続人を寺田瑞希にする』って書いてから死んでほしい…」
透「何でお前にせんとあかんねん」
瑞希「こんな不幸の役満みたいな人生、一度くらい報われてもええやろ」
透、黙り込む。
知久「(軽いノリで)他力本願すぎるやろ。とりあえず透が相良さんに値切るところを見せたるってことで」
透「何で俺やねん」
知久「透の他にできる人おらんもん」
透「する機会がなかったらせぇへんで、俺。今、値切るような用事ないし」
瑞希「相良さんが忘れてくれるんを待つしかないな。たぶん相良さんも何となく言うてみただけやろ」
知久「そうやな」
透「ところで先週やったかな、相良さんからいきなりバナナを渡されたんやけど、あれって何が正解やったんやろ」
瑞希「俺も渡された! 俺、バナナとか食べへんし、何のことかようわからんかったからそのまま返したら『違う』って言われたんやけど」
透「俺はくれるんかなって思って食べたら、どうやらそれも違うらしい」
知久「(笑って)さすがにそれはちゃうやろ。相良さん、ちゃんとツッコんでくれた?」
透「特には」
知久「ようツッコまんのに振るのはあかんよな。俺、正解を知ってんで」
瑞希「何なん?」
知久「電話に出るふりをすんねん」
瑞希「そんなんわからへんって」
透「誰が決めたん、それ」
知久「都市伝説的に広まってるネタみたいなもんやな」
透「で、こっちが都市伝説に合わせてやらんとダメなん?」
瑞希「正直、プレッシャーやねんな、大阪人はおもろいってイメージ…」
知久「それで悩んでる大阪人もけっこういてるよな」
瑞希「何とかならへんかな…」
知久「俺、相良さんに伝えたんやけどな、それはステレオタイプであって実際とはちゃうって」
透「俺も」
瑞希「でも誤解が解けるどころか日に日に強まってるような気ぃするんやけど…」
知久「何でやろうな。大阪で大阪人と生活してるのに」
透「(鼻で笑って)そんなん原因は言うまでもないやろ、ここに住んでるからやん」
少しの静寂。
知久「確かに… ここ、おもろいことしか起こらへんもん…」
瑞希「おもんなかったら存在意義がないからな、俺ら。この世界から消されてまう」
知久「ここで何を言うても説得力がなさすぎる…」
透「もう諦めるしかないな」
瑞希「せやけどそれってこっちのせいなんけ? ちょけてるのはみんなも同じやろ。大阪人だけちゃうで」
知久「何ならここでは大阪人はおもんない方やんな。明らかに相良さんの方がおもろいって」
瑞希「それな。それなのに何で大阪人だけおもろいこと強制されんねん」
透「理不尽すぎるよな」
知久「きっと黙ってやられっぱなしやからあかんねん。これからはこっちから振ってやったらええねん」
瑞希「俺もそうしようかな。みんな、ここで鍛えられてるんやからいけるやろ」
透「でも振ったら振ったでそこから笑いに繋げんとあかんからな… そっちの方が難しいような…」
瑞希「そうや… ボケられても返すことができへん… 俺には無理や」
知久「俺はそこには自信あるから。いつか仕返ししたるわ」
透「期待してるで」
瑞希「ところで話は変わるんやけど… この前、相良さんから六甲おろしを歌えって言われてん」
知久「歌えた?」
瑞希「さすがにメロディーは色んなところで聞いてるからわかるけど、歌詞まで覚えてへんな。大阪人やからって全員が阪神を応援してるわけちゃうし、全員が六甲おろしを歌えるとは思わんといてほしいわ」
知久「(すっと真顔になって)大阪人やったら歌えるやろ」
瑞希「ええっと… ボケなん、それ?」
知久「本気で言うてるけど。大阪人やったら歌えるやろ」
瑞希「で、でも呉本も歌われへんよな?」
透「俺は一番だけやったら…」
知久「一番だけか… 今回は特別に許したるわ。寺田さんは一番すら覚えてへんの?」
瑞希「(知久から目を逸らして)い、一番だけやったらいけるよ」
知久「ほな、歌ってや、ここで」
瑞希「今け?」
知久「今や」
瑞希「その前にちょっとスマホを見てもええ? 尚人から何かLINEが来てるかもしれへん」
知久「あかん。歌い終わってからでもできるやろ」
瑞希「わかったよ…」
少し間を置いて、
瑞希「(歌う)六甲颪に颯爽と ナントカコントカほにゃららら♪」
知久、大きくため息をつく。
知久「ないわ、それはないわ。大阪に住んでて六甲おろしを知らんなんてことある?」
透「普通にあるやろ。お前こそ大阪に住んでるんやからそんなことくらいわかるやろ」
瑞希「それこそ大阪人が大阪人のステレオタイプを信じんなや」
知久「…ちゃうねん、そういうことちゃうねん、俺が個人的に許されへんだけやねん。大阪人には六甲おろしを歌えるようになっといてほしいねん」
瑞希「そんなん知らんわ、お前の個人的なこだわりなんて」
知久「そうなんやけど付き合ってもらうで。今日は六甲おろしを覚えるまで帰さへんからな」
瑞希「俺がお前のために? そんな義理がどこにあんねん」
知久「ここで俺が寺田さんを教育したら、六甲おろしを歌える大阪人が一人は増えるやろ。透、お前も逃がさへんからな。三番まで覚えてもらう」
透「寺田さん、もう帰ってもええで。ここ、俺の部屋やから俺に決定権あるし」
知久「あかんって。今からレッスンを始めるで。まずは俺が見本を見せるから。(歌う)六甲颪に颯爽と♪」
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