the small garden
○カフェ-中 昼
インテリアはナチュラルウッドを基調とした明るい雰囲気。
透、昴、向かい合って席に着いている。テーブルの上にはそれぞれコーヒーと軽食が置かれている。
透「昨日の晩の話なんだけど」
昴「はい」
透「昔の恥ずかしかった記憶が唐突に蘇ってきてさ。なるべく考えないようにしようとは思ったんだけど、そういうときってさらに記憶を掘り返してしまうものだろ?」
昴「しますね。あるあるですね。消えたくなりますよね」
透「そう、昨日は本当に消えたかった… そのせいで眠れなくて寝不足なんだよ」
昴「へぇ。何を思い出したんですか? それを話したくて振った話ですよね」
透「そうだよ。話してしまった方が笑い話にできるかな、と。できれば笑って聞いてくれ…」
昴「はい、聞きます」
透「あれは大学生の頃だったな、当時の恋人と梅田でデートしてたんだけど、梅田だから人がすごくて、はぐれないように彼女の手を握ったんだ。でも話しかけても返事がなかったから、不思議に思って後ろを振り返ってみたら知らない人だった…」
昴「それは恥ずかしいというか気不味いですね。でも相手の方がもっと気不味いんじゃないんですかね、それ。いきなり知らない奴に手を握られて」
透「たぶんそうだろうけど… でも相手を慮る余裕はなかったな、あのときは。『ここで俺を消してくれ』しか考えられなかった」
昴「呉本さん、無駄にプライドが高いんですね」
透「(苦笑して)そうだよ、そんなこと知ってるだろ」
昴「他には何かあるんですか?」
透「他な… これは話すのも恥ずかしいんだけど…」
昴「はい」
透「これは別の恋人とデートしたときの話だ。USJだったな。彼が二人でジェットコースターに乗りたいって言い始めてさ。俺は怖いから乗りたくないって言ったのに、『誰でも乗れるから』『これに乗らないとUSJに来た意味がないから』と押し切られて乗せられたんだよ。失禁したよな」
昴「失禁!? おしっこを漏らしたんですか!? 本当にしたんですか?」
透「本当だよ。そんな嘘をついてどうするんだよ。恥ずかしいからいちいち確認するな」
昴「それでどうしたんですか、漏らしてから」
透「とりあえずUSJから出るしかないよな。USJのショップでタオルを買って、それで下を隠しながら服を買えそうなところを探したよ」
昴「そうするしかないですよね。実在するんですね、ジェットコースターで失禁する人」
透「いるんだよ、ここに」
昴「ジェットコースターってハリウッド・ドリームですかね?」
透「そんな名前だったかな。音楽が流れるやつ」
昴「それならハリドリですね。確かにハリドリは見た目よりは怖いですが失禁するほどですかね」
透「俺にとってはそうだったんだよ」
昴「でも思い出したくない過去でしょうね、それは」
透「あのときは『俺を殺してくれ』って叫びたくなったな」
昴「では僕も恥ずかしい話をしましょうかね。一つ思い出したことがありまして」
透「何?」
昴「こちらも過去の恋人の話でも。大学生の頃です。その日は彼女の誕生日だったんですよね。そこでサプライズでちょっと派手に祝おうと思ったんです」
透「何となく想像できるな…」
昴「大学の構内で彼女を待ち構えて、愛の言葉を書いた幕を掲げ、歌を歌って祝福することにしたんです。友達にも協力してもらいました。彼女、速攻で逃げましたね」
透「それは彼女に同情するな。俺でも逃げる」
昴「自分でやっておいてあれですが、僕でも逃げるでしょうね。でも当時は幼稚で利己的だったんですよね。彼女がどう思うかということは全く考えていなかった」
透「お前にも反省の概念があったのか」
昴「失礼な、当たり前でしょう。いたずらは楽しんでもらわないと意味がありませんからね。驚きと効率を追い求めて常にアップデートしていますよ。あれは彼女に不快感しか与えなかったという点で失敗でしたね」
透「そっちの方向か…」
昴「ちなみに彼女からはすぐに別れの電話が来ましたね、その日の晩に」
透「それは恥ずかしいな。だけど失禁よりはマシだろ」
昴「呉本さんは大丈夫ですよ。だって失禁は仕方ないでしょ、わざとやったわけじゃないんだから。僕は自分で考えて自分で実行して滑りましたからね。あそこで壁に頭を打ちつけたくなりましたよ」
透「昴も失敗したら恥ずかしくなるんだな」
昴「人間なので当然。ところで恥は少しはマシになりましたか?」
透「なったよ。こうやって話してみると大したことじゃなかったような気になるな。今晩はちゃんと眠れそうだ」
昴「それなら良かったです。みんな、恥ずかしい思い出の一つや二つあるものですからね」
透「生きていれば思い出も増える分、それだけ恥も増えていくからな…」
昴「必ずしも都合の良い思い出ばかりとは限らないということですね。何か人生論みたいになりましたね」
透「そうだな」
インテリアはナチュラルウッドを基調とした明るい雰囲気。
透、昴、向かい合って席に着いている。テーブルの上にはそれぞれコーヒーと軽食が置かれている。
透「昨日の晩の話なんだけど」
昴「はい」
透「昔の恥ずかしかった記憶が唐突に蘇ってきてさ。なるべく考えないようにしようとは思ったんだけど、そういうときってさらに記憶を掘り返してしまうものだろ?」
昴「しますね。あるあるですね。消えたくなりますよね」
透「そう、昨日は本当に消えたかった… そのせいで眠れなくて寝不足なんだよ」
昴「へぇ。何を思い出したんですか? それを話したくて振った話ですよね」
透「そうだよ。話してしまった方が笑い話にできるかな、と。できれば笑って聞いてくれ…」
昴「はい、聞きます」
透「あれは大学生の頃だったな、当時の恋人と梅田でデートしてたんだけど、梅田だから人がすごくて、はぐれないように彼女の手を握ったんだ。でも話しかけても返事がなかったから、不思議に思って後ろを振り返ってみたら知らない人だった…」
昴「それは恥ずかしいというか気不味いですね。でも相手の方がもっと気不味いんじゃないんですかね、それ。いきなり知らない奴に手を握られて」
透「たぶんそうだろうけど… でも相手を慮る余裕はなかったな、あのときは。『ここで俺を消してくれ』しか考えられなかった」
昴「呉本さん、無駄にプライドが高いんですね」
透「(苦笑して)そうだよ、そんなこと知ってるだろ」
昴「他には何かあるんですか?」
透「他な… これは話すのも恥ずかしいんだけど…」
昴「はい」
透「これは別の恋人とデートしたときの話だ。USJだったな。彼が二人でジェットコースターに乗りたいって言い始めてさ。俺は怖いから乗りたくないって言ったのに、『誰でも乗れるから』『これに乗らないとUSJに来た意味がないから』と押し切られて乗せられたんだよ。失禁したよな」
昴「失禁!? おしっこを漏らしたんですか!? 本当にしたんですか?」
透「本当だよ。そんな嘘をついてどうするんだよ。恥ずかしいからいちいち確認するな」
昴「それでどうしたんですか、漏らしてから」
透「とりあえずUSJから出るしかないよな。USJのショップでタオルを買って、それで下を隠しながら服を買えそうなところを探したよ」
昴「そうするしかないですよね。実在するんですね、ジェットコースターで失禁する人」
透「いるんだよ、ここに」
昴「ジェットコースターってハリウッド・ドリームですかね?」
透「そんな名前だったかな。音楽が流れるやつ」
昴「それならハリドリですね。確かにハリドリは見た目よりは怖いですが失禁するほどですかね」
透「俺にとってはそうだったんだよ」
昴「でも思い出したくない過去でしょうね、それは」
透「あのときは『俺を殺してくれ』って叫びたくなったな」
昴「では僕も恥ずかしい話をしましょうかね。一つ思い出したことがありまして」
透「何?」
昴「こちらも過去の恋人の話でも。大学生の頃です。その日は彼女の誕生日だったんですよね。そこでサプライズでちょっと派手に祝おうと思ったんです」
透「何となく想像できるな…」
昴「大学の構内で彼女を待ち構えて、愛の言葉を書いた幕を掲げ、歌を歌って祝福することにしたんです。友達にも協力してもらいました。彼女、速攻で逃げましたね」
透「それは彼女に同情するな。俺でも逃げる」
昴「自分でやっておいてあれですが、僕でも逃げるでしょうね。でも当時は幼稚で利己的だったんですよね。彼女がどう思うかということは全く考えていなかった」
透「お前にも反省の概念があったのか」
昴「失礼な、当たり前でしょう。いたずらは楽しんでもらわないと意味がありませんからね。驚きと効率を追い求めて常にアップデートしていますよ。あれは彼女に不快感しか与えなかったという点で失敗でしたね」
透「そっちの方向か…」
昴「ちなみに彼女からはすぐに別れの電話が来ましたね、その日の晩に」
透「それは恥ずかしいな。だけど失禁よりはマシだろ」
昴「呉本さんは大丈夫ですよ。だって失禁は仕方ないでしょ、わざとやったわけじゃないんだから。僕は自分で考えて自分で実行して滑りましたからね。あそこで壁に頭を打ちつけたくなりましたよ」
透「昴も失敗したら恥ずかしくなるんだな」
昴「人間なので当然。ところで恥は少しはマシになりましたか?」
透「なったよ。こうやって話してみると大したことじゃなかったような気になるな。今晩はちゃんと眠れそうだ」
昴「それなら良かったです。みんな、恥ずかしい思い出の一つや二つあるものですからね」
透「生きていれば思い出も増える分、それだけ恥も増えていくからな…」
昴「必ずしも都合の良い思い出ばかりとは限らないということですね。何か人生論みたいになりましたね」
透「そうだな」
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