ちょっとブレーメンまで

和真「もう役目は終わったから、そろそろ俺は帰るよ」
尚人「ご飯は食べへんの?」
透「モブに給料はないんだよ。良かったな、名前が付いた役で」
 知久、手を合わせて、
知久「ごめんやで、こっちは主役で」
勇「呉本さん、来栖さん、ありがとうございました!」
 勇、頭を下げる。
透「どうも」
和真「(手を振って)バイバイ。食事を楽しんでね」
 透、和真、去る。
 知久、真澄、尚人、勇、家?の中に入る。
 同、椅子に座る。
勇「(満面の笑みで)分け前が減らなかったのは何よりですね。無給でこき使うって、こんなに気分が良いことなんですね」
真澄「搾取って最高」
知久「そやけど相良さんは何も食べられへんやん、アレルギーで」
勇「それを言わないでくださいよ。事実ですが」
尚人「(鶏の脚を指差して)肉やったら食べれるんちゃう?」
勇「それ僕の仲間じゃないですか。残酷なこと言わないでくださいよ」
 勇、悲しそうに鶏肉を見つめる。
勇「友達だったのに… こんな姿になっちゃって…」
 知久、鶏肉に手を伸ばす。
知久「俺は食べるけどな」
 知久、肉に齧りつく。
勇「友達を食べた!?」
知久「さっき俺に乗ったからな。ここで恨みを晴らすわ」
勇「(泣きそうな顔で)そんな! ひどいですよ」
尚人「でもトミーが食べんかったとしても、すでに変わり果てた姿になってもうてるから… おいしく食べてくれた方が、きっと彼も浮かばれるで」
勇「それは尤もですね」
 勇、手を合わせる。
勇「ちゃんと成仏するんですよ」

× × ×

 知久、真澄、尚人、勇、食事をしている。
 皿の料理はだいぶ減っている。
真澄「そろそろ物語も終わりじゃない?」
尚人「家の様子を見に、泥棒が戻ってくるはずやから、それを追い返したら終わりちゃう? 原作に則るんやったら」
 昴、瑞希、成美、家?の方へ歩いてくる。
 同、家?の外で立ち止まり、中の様子を窺っている。
 真澄、昴たちに目をやる。
真澄「泥棒が戻ってきたんじゃない?」
知久「どうする? 原作の通りやったら、家のあちこちに隠れて、泥棒を攻撃することになってるけど…」
 京介、歩、続いて現れる。
 彼らは警官のような服装をしている。
 歩、家?の方を指差して、
歩「あれが例のタイツ?」
昴「(頷く)はい」
成美「まだいるのかよ…」
瑞希「お巡りさん、気ぃつけてください。かなりイカれてる連中らしいんで」
京介「それは見ればわかる」
 京介、歩、家?の中に入る。
京介「(声を張り上げて)警察だ! 床に伏せて、手を後ろに組め!」
 知久、真澄、尚人、勇、動揺したように顔を見合わせる。
真澄「何で? 原作に警察なんて登場した?」
知久「してへんって」
京介「聞こえなかったのか? 床に伏せて、手を後ろに組め!」
 歩、ホルダーから銃を取り出し、構える。
歩「俺だって人を撃ちたくないんだよ。おとなしく従って」
 知久、真澄、尚人、勇、慌てて床に伏せる。
 京介、歩、知久たちに手錠をかける。
勇「何で僕が逮捕されてるんですか?」
栄太「何故って? わかりません? 他人の住居に侵入し、脅して食べ物を奪ったからです」
歩「住居侵入罪と強盗罪だな」
勇「向こうだって泥棒でしょうが」
成美「誰が泥棒だ! 俺は農家だ」
瑞希「久々の収穫を祝ってたところやったのに… よう滅茶苦茶にしてくれたな」
勇「農家に見えませんよ…」
栄太「人を見た目で判断しないことですね。私は泥棒だなんて言っていないのに、みんなが勝手に決めつけるから…」
知久「さすがに人選が悪いやろ。昴に成美に寺田さんなんて、確実に悪役やん」
歩「言い訳は署でしようか」
京介「(手錠を引っ張って)悪役はお前だ! 早く立て!」
 知久、真澄、尚人、勇、立つ。
 京介、歩、知久たちを連行し、共に倉庫から退場する。

◇放送室 中

 室内にはモニターが設置されている。
 知久、真澄、尚人、勇が警察に連行される様子が、モニターに映し出される。
 栄太、一同が退場するのを見届けてから、マイクに向かう。
栄太「タイツが無事に逮捕されたので、街は以前のように平和になりました。タイツが去って以降、この物語は教育のために語り継がれているようです。"人の物を奪ったら、タイツのおばけになっちゃいますよ"と。おしまい」
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