ちょっとブレーメンまで
知久、真澄、尚人、勇、順路に従って歩く。
勇、歩みが遅くなる。
一同、立ち止まる。
尚人「どないしたん?」
勇「(わざとらしく肩を落として)ずっと鳴きっぱなしだったから疲れちゃって」
知久「いきなり!?」
尚人「大丈夫?」
勇「もう一歩も動けませんよ。ここに乗り物があれば…」
真澄「ロバに乗ればいいんじゃない?」
勇、納得したように手を打つ。
勇「それ名案ですね!」
知久「うん。嫌な予感はしてたよ。台本とかなかった? 俺に乗ること、最初から決まってたやんな?」
勇「何のことでしょう? 僕は本当に疲れてるんです」
知久「あり得へん。こんなところで疲れてたら北アルプスなんか登られへんやろ」
勇「山は楽しいから歩けますが、床は退屈だから歩きたくないんです」
真澄「早く乗せなよ。イッサがかわいそうじゃん」
知久「俺がかわいそうなんやって。俺に相良さんは無理やから」
尚人「ロバは運ぶんが仕事やろ」
知久「宇野さんが乗せぇや。宇野さんやったら運べるやろ?」
尚人「でも俺は猫やからな」
勇、天井を見上げて、
勇「茂呂さん、台本と違いますよ。次の目的地まで、桐生さんに乗って移動するって、そう書いてあったじゃないですか」
知久「台本あったんや… その台本、俺は知らへんで」
栄「仕方ありませんね。あの手を使うか」
天井から饅頭が降ってくる。
知久、しゃがんで饅頭を拾う。
勇、知久を押さえつけて四つん這いにさせ、上に乗る。
勇「ありがとうございます! これでブレーメンへ向かえますね。助かりました」
真澄「(にっこりと笑って)良かったね」
知久「(うなだれて)こんな罠に引っ掛かるなんて…」
栄太「(鼻で笑う)チョロい。饅頭にも私にも逆らえないということを、肝に銘じておきなさい」
知久「(苦しそうに)覚えてろや… 栄太やってステーキには逆らわれへんこと、俺は知ってるんやからな。重い…」
× × ×
知久、勇を運びながら、通路を進んでいる。
勇は知久の負担にならないように、床に足を着けている。
勇「(ニコニコしながら)楽でいいですね」
知久「普通に歩いた方が、絶対に楽やろ」
勇「そんなの当たり前でしょ。僕だって乗りたくて乗ってるんじゃないんです。僕のことを恨まずに、台本を恨んでくださいよ」
知久「人の心ないん?」
勇「もちろんありませんよ。だって人間じゃなくて鶏ですから」
知久「鶏やって相良さんよりは心あるわ」
◇同 開けた空間 中
一同、順路に従い、開けた空間に出る。
知久は勇を乗せたまま。
一部の照明が落ちて、倉庫が暗くなる。
真澄「(天井を見上げる)いきなり暗くなったよ」
勇、知久から降りる。
勇「停電ですか?」
知久、立ち上がる。
栄太「ご安心ください。夜になっただけです。そろそろ休めるところを探しましょう」
知久、空間の中央を指差す。
知久「あれは?」
そこにはテープで囲われた区間があり、その中にテーブル、椅子が4脚、棚、ランプが設置されている。
テーブルにはご馳走(鶏の脚、ぶどうジュースは必須)が並べられている。
その中で昴、瑞希、成美が椅子に座っている。
彼らはヨーロッパの農民のような服装。
瑞希は喫煙している。
昴「この稼業でも暮らしは楽にならないんですね」
成美「当たり前だろ。景気が悪くて、どいつもこいつも金がねぇ。嫌になるぜ」
瑞希、タバコを吹かす。
瑞希「でも今日は儲かった方やん。"ハーブ"をグミに入れるっちゅう案、あれは成功やったで」
成美「やるじゃん、丹羽。一度でもあれを知っちまったら、もうやめられねぇだろうな」
昴、照れてニヤニヤする。
瑞希、灰皿にタバコを押しつけて、火を消す。
瑞希、グラスを持ち上げる。
瑞希「ほな最高の仲間に乾杯」
昴、成美続いてグラスを持ち上げて、
昴・成美「乾杯」
昴、瑞希、成美、飲み物を飲む。
同、食事する。
栄太「あれは家ですね」
知久「あれ家なん? 壁も何もあらへんで」
栄太「万博に使うための建材として、維○に家を没収されたんですね」
知久「ドイツって設定ちゃうかった?」
栄太「ドイツにも○新の会があるんです」
勇「それにしても血も涙もない奴らですね。どっちが泥棒かわかりませんよ」
真澄「でも自分たちで維○を選んだんだからね。その結果は甘んじて受け入れないと」
尚人「選挙は大事やで」
知久「気ぃつけや。あんまり○新を悪く言うと、SLAPPを起こされるで。奴らの特技なんやから」
尚人「悪く言うてんの自分やん」
栄太「ところであちらで休みたいとは思いませんか?」
知久「思わへんよ。あんなん外と同じやん」
真澄「私は休みたい」
尚人「俺も休みたいわ。そろそろお腹も空いたし」
知久「ホンマに心ないん? あんななけなしの家まで奪うつもりなん?」
真澄「だって泥棒じゃん。泥棒に人権なんて必要ないよ」
勇「奪うことで生活してるんですから、奪われたって自業自得でしょう。その稼業で生きることを選んだなら、最初から覚悟することですね」
知久「完全に悪役になってもうてるやん」
栄太「決まりましたね。あの家にお邪魔しましょう。トミー、家の様子を見てください」
知久「わざわざ見んでも見えてるやん」
栄太「何が見えます?」
知久、家?の方に目をやる。
知久「昴と成美と寺田さんが、ご馳走を食べてるところ… ところで昴って俺のご主人やんな? 何で泥棒やってん?」
栄太「丹羽さんは転職したんです。A*azonがケチなので、配送業では生活が成り立たなかったんですね。ロバを処分しようとしていたのもそのためです」
知久「せっかく泥棒に転職したのに、屋根も壁もないんや… 非情な世の中やな」
勇、歩みが遅くなる。
一同、立ち止まる。
尚人「どないしたん?」
勇「(わざとらしく肩を落として)ずっと鳴きっぱなしだったから疲れちゃって」
知久「いきなり!?」
尚人「大丈夫?」
勇「もう一歩も動けませんよ。ここに乗り物があれば…」
真澄「ロバに乗ればいいんじゃない?」
勇、納得したように手を打つ。
勇「それ名案ですね!」
知久「うん。嫌な予感はしてたよ。台本とかなかった? 俺に乗ること、最初から決まってたやんな?」
勇「何のことでしょう? 僕は本当に疲れてるんです」
知久「あり得へん。こんなところで疲れてたら北アルプスなんか登られへんやろ」
勇「山は楽しいから歩けますが、床は退屈だから歩きたくないんです」
真澄「早く乗せなよ。イッサがかわいそうじゃん」
知久「俺がかわいそうなんやって。俺に相良さんは無理やから」
尚人「ロバは運ぶんが仕事やろ」
知久「宇野さんが乗せぇや。宇野さんやったら運べるやろ?」
尚人「でも俺は猫やからな」
勇、天井を見上げて、
勇「茂呂さん、台本と違いますよ。次の目的地まで、桐生さんに乗って移動するって、そう書いてあったじゃないですか」
知久「台本あったんや… その台本、俺は知らへんで」
栄「仕方ありませんね。あの手を使うか」
天井から饅頭が降ってくる。
知久、しゃがんで饅頭を拾う。
勇、知久を押さえつけて四つん這いにさせ、上に乗る。
勇「ありがとうございます! これでブレーメンへ向かえますね。助かりました」
真澄「(にっこりと笑って)良かったね」
知久「(うなだれて)こんな罠に引っ掛かるなんて…」
栄太「(鼻で笑う)チョロい。饅頭にも私にも逆らえないということを、肝に銘じておきなさい」
知久「(苦しそうに)覚えてろや… 栄太やってステーキには逆らわれへんこと、俺は知ってるんやからな。重い…」
× × ×
知久、勇を運びながら、通路を進んでいる。
勇は知久の負担にならないように、床に足を着けている。
勇「(ニコニコしながら)楽でいいですね」
知久「普通に歩いた方が、絶対に楽やろ」
勇「そんなの当たり前でしょ。僕だって乗りたくて乗ってるんじゃないんです。僕のことを恨まずに、台本を恨んでくださいよ」
知久「人の心ないん?」
勇「もちろんありませんよ。だって人間じゃなくて鶏ですから」
知久「鶏やって相良さんよりは心あるわ」
◇同 開けた空間 中
一同、順路に従い、開けた空間に出る。
知久は勇を乗せたまま。
一部の照明が落ちて、倉庫が暗くなる。
真澄「(天井を見上げる)いきなり暗くなったよ」
勇、知久から降りる。
勇「停電ですか?」
知久、立ち上がる。
栄太「ご安心ください。夜になっただけです。そろそろ休めるところを探しましょう」
知久、空間の中央を指差す。
知久「あれは?」
そこにはテープで囲われた区間があり、その中にテーブル、椅子が4脚、棚、ランプが設置されている。
テーブルにはご馳走(鶏の脚、ぶどうジュースは必須)が並べられている。
その中で昴、瑞希、成美が椅子に座っている。
彼らはヨーロッパの農民のような服装。
瑞希は喫煙している。
昴「この稼業でも暮らしは楽にならないんですね」
成美「当たり前だろ。景気が悪くて、どいつもこいつも金がねぇ。嫌になるぜ」
瑞希、タバコを吹かす。
瑞希「でも今日は儲かった方やん。"ハーブ"をグミに入れるっちゅう案、あれは成功やったで」
成美「やるじゃん、丹羽。一度でもあれを知っちまったら、もうやめられねぇだろうな」
昴、照れてニヤニヤする。
瑞希、灰皿にタバコを押しつけて、火を消す。
瑞希、グラスを持ち上げる。
瑞希「ほな最高の仲間に乾杯」
昴、成美続いてグラスを持ち上げて、
昴・成美「乾杯」
昴、瑞希、成美、飲み物を飲む。
同、食事する。
栄太「あれは家ですね」
知久「あれ家なん? 壁も何もあらへんで」
栄太「万博に使うための建材として、維○に家を没収されたんですね」
知久「ドイツって設定ちゃうかった?」
栄太「ドイツにも○新の会があるんです」
勇「それにしても血も涙もない奴らですね。どっちが泥棒かわかりませんよ」
真澄「でも自分たちで維○を選んだんだからね。その結果は甘んじて受け入れないと」
尚人「選挙は大事やで」
知久「気ぃつけや。あんまり○新を悪く言うと、SLAPPを起こされるで。奴らの特技なんやから」
尚人「悪く言うてんの自分やん」
栄太「ところであちらで休みたいとは思いませんか?」
知久「思わへんよ。あんなん外と同じやん」
真澄「私は休みたい」
尚人「俺も休みたいわ。そろそろお腹も空いたし」
知久「ホンマに心ないん? あんななけなしの家まで奪うつもりなん?」
真澄「だって泥棒じゃん。泥棒に人権なんて必要ないよ」
勇「奪うことで生活してるんですから、奪われたって自業自得でしょう。その稼業で生きることを選んだなら、最初から覚悟することですね」
知久「完全に悪役になってもうてるやん」
栄太「決まりましたね。あの家にお邪魔しましょう。トミー、家の様子を見てください」
知久「わざわざ見んでも見えてるやん」
栄太「何が見えます?」
知久、家?の方に目をやる。
知久「昴と成美と寺田さんが、ご馳走を食べてるところ… ところで昴って俺のご主人やんな? 何で泥棒やってん?」
栄太「丹羽さんは転職したんです。A*azonがケチなので、配送業では生活が成り立たなかったんですね。ロバを処分しようとしていたのもそのためです」
知久「せっかく泥棒に転職したのに、屋根も壁もないんや… 非情な世の中やな」