ちょっとブレーメンまで
◇物流倉庫 通路
知久、通路を歩く。
倉庫には棚が立ち並んでいる。
通路の所々に、"順路"と書かれた看板が立っている。
知久「何で俺がロバなん?」
栄太「こき使われるポジションだからです」
知久「聞かんかったら良かった…」
知久、タイツの袖を引っ張って、
知久「ところで衣装が恥ずかしいんやけど… もっとマシな衣装はなかったん?」
栄太「安心してください。犬も猫も鶏も、全て似たような衣装ですから。お揃いで着れば恥ずかしくありません」
知久「ホンマに? 俺だけタイツを着せられるんが、いつものお約束のパターンやん」
栄太「本当ですよ。トミー、前を見てください」
知久、前方を見る。
ライトブラウンの全身タイツを着て、犬の被り物を被った人が、後向きで立っている。
栄太「良かったですね。仲間が見つかりましたよ。タイツを着ているということは、貴方の仲間である証です。声をかけてください」
知久「何が嬉しくて、タイツに話しかけなアカンねん」
知久、タイツの人物に近づき、後ろから話し掛ける。
知久「もしもし、犬さん?」
タイツの人物が振り返る。
正体は真澄。
真澄「待ってたよ! 良かった。自分だけタイツだったらどうしようって、ずっと不安だったの」
知久「俺も不安やった」
真澄「ところで私は何をすればいいの? ただ衣装を渡されただけで、何の説明もなかったんだけど」
知久「ブレーメンへ向かうんやって」
知久、看板を指差す。
知久「そこに"順路"って出てるやろ? それに従ったら着くらしいで」
真澄「それでブレーメンでは何をするの?」
知久「楽隊でも組めばええんちゃう? 知らんけど」
知久、天井に向かって話しかける。
知久「栄太、ブレーメンでは何すればええん?」
栄太「これは"ブレーメンの音楽隊"です。よく原作を思い出してください。そもそも貴方はブレーメンには辿り着きません」
知久、しばし考え込む。
知久「そんな話やったな。ブレーメンへ向かう途中で、泥棒から家を強奪するんやった。でもブレーメンに辿り着かへんのやったら、これ何のための旅なん?」
栄太「そんなややこしいことは考えずに、ただブレーメンを目指せばいいんですよ」
× × ×
知久、真澄、順路に従って歩く。
知久「何でスミさんが犬なん?」
真澄「犬を飼ってるからだって」
知久「じゃあ猫は宇野さんかな? でも誰が鶏をやるんやろ?」
真澄「鳥を飼ってる人か… (少し考えてから)誰かいたっけ?」
知久「いてへんと思うけど…」
栄太「すぐにわかることですよ。お楽しみに」
真澄「ところでトミーは何でロバなの?」
知久「それは察してほしい」
知久、前方を指差す。
知久「あそこに立ってるの猫ちゃう? 猫は宇野さんで正解みたいやな」
尚人が前方に立っている。
衣装はグレーの全身タイツに、猫の被り物。
知久、真澄、尚人に近づく。
尚人「(棒読みで)にゃー、もうネズミを狩れなくなったから、ご主人に殺されそうにゃー」
真澄「それ台本のセリフ? いいな、私は台本なんて渡されなかったよ」
知久「俺も。人によって貰ったり貰わんかったりするみたいやな」
尚人「貰 うたって言 うても、このセリフしか書いてへん台本やったけどな」
知久「こんなに色々と適当なんやから、台本も適当に決まってるよな」
栄太「後は鶏と出会えれば、仲間が揃いますね」
倉庫の中に、どこからか声が響く。
勇「(声を張り上げて)コケコッコー! 早く来てくださいよ。こんなところで一人で待つのは寂しいですよ!」
勇、鳴き続ける。
知久「鶏はアイツやったんや…」
真澄「納得の配役だね」
栄太「とりあえず鶏がうるさいので、ブレーメンへ急ぎましょう」
× × ×
知久、真澄、尚人、順路に従って歩く。
通路の先に、勇の姿を見つける。
衣装は白い全身タイツに、鶏の被り物。タイツの腕のところが、膜のように広がる。
勇、手を振る。
勇「コケコッコー! 遅いですよ! ずっと出番を待ってたんですからね!」
真澄、手を振り返す。
真澄「今日も元気だね」
勇「ありがとうございます! 元気が取り柄ですから!」
知久、真澄、尚人、勇に近づく。
勇「見てください。僕のタイツだけ、ちょっと特別な仕様になってるんですよ」
勇、嬉しそうに両腕を広げ、一回転する。
知久「そこ喜ぶところかな…」
勇「自分の衣装は愛してあげないと。せっかく僕と巡り会ってくれたんですから」
知久「タイツやのに?」
勇「タイツでも、です」
栄太「さて、仲間が揃ったので、これで楽隊が組めますね。先に進みましょう」
知久、通路を歩く。
倉庫には棚が立ち並んでいる。
通路の所々に、"順路"と書かれた看板が立っている。
知久「何で俺がロバなん?」
栄太「こき使われるポジションだからです」
知久「聞かんかったら良かった…」
知久、タイツの袖を引っ張って、
知久「ところで衣装が恥ずかしいんやけど… もっとマシな衣装はなかったん?」
栄太「安心してください。犬も猫も鶏も、全て似たような衣装ですから。お揃いで着れば恥ずかしくありません」
知久「ホンマに? 俺だけタイツを着せられるんが、いつものお約束のパターンやん」
栄太「本当ですよ。トミー、前を見てください」
知久、前方を見る。
ライトブラウンの全身タイツを着て、犬の被り物を被った人が、後向きで立っている。
栄太「良かったですね。仲間が見つかりましたよ。タイツを着ているということは、貴方の仲間である証です。声をかけてください」
知久「何が嬉しくて、タイツに話しかけなアカンねん」
知久、タイツの人物に近づき、後ろから話し掛ける。
知久「もしもし、犬さん?」
タイツの人物が振り返る。
正体は真澄。
真澄「待ってたよ! 良かった。自分だけタイツだったらどうしようって、ずっと不安だったの」
知久「俺も不安やった」
真澄「ところで私は何をすればいいの? ただ衣装を渡されただけで、何の説明もなかったんだけど」
知久「ブレーメンへ向かうんやって」
知久、看板を指差す。
知久「そこに"順路"って出てるやろ? それに従ったら着くらしいで」
真澄「それでブレーメンでは何をするの?」
知久「楽隊でも組めばええんちゃう? 知らんけど」
知久、天井に向かって話しかける。
知久「栄太、ブレーメンでは何すればええん?」
栄太「これは"ブレーメンの音楽隊"です。よく原作を思い出してください。そもそも貴方はブレーメンには辿り着きません」
知久、しばし考え込む。
知久「そんな話やったな。ブレーメンへ向かう途中で、泥棒から家を強奪するんやった。でもブレーメンに辿り着かへんのやったら、これ何のための旅なん?」
栄太「そんなややこしいことは考えずに、ただブレーメンを目指せばいいんですよ」
× × ×
知久、真澄、順路に従って歩く。
知久「何でスミさんが犬なん?」
真澄「犬を飼ってるからだって」
知久「じゃあ猫は宇野さんかな? でも誰が鶏をやるんやろ?」
真澄「鳥を飼ってる人か… (少し考えてから)誰かいたっけ?」
知久「いてへんと思うけど…」
栄太「すぐにわかることですよ。お楽しみに」
真澄「ところでトミーは何でロバなの?」
知久「それは察してほしい」
知久、前方を指差す。
知久「あそこに立ってるの猫ちゃう? 猫は宇野さんで正解みたいやな」
尚人が前方に立っている。
衣装はグレーの全身タイツに、猫の被り物。
知久、真澄、尚人に近づく。
尚人「(棒読みで)にゃー、もうネズミを狩れなくなったから、ご主人に殺されそうにゃー」
真澄「それ台本のセリフ? いいな、私は台本なんて渡されなかったよ」
知久「俺も。人によって貰ったり貰わんかったりするみたいやな」
尚人「
知久「こんなに色々と適当なんやから、台本も適当に決まってるよな」
栄太「後は鶏と出会えれば、仲間が揃いますね」
倉庫の中に、どこからか声が響く。
勇「(声を張り上げて)コケコッコー! 早く来てくださいよ。こんなところで一人で待つのは寂しいですよ!」
勇、鳴き続ける。
知久「鶏はアイツやったんや…」
真澄「納得の配役だね」
栄太「とりあえず鶏がうるさいので、ブレーメンへ急ぎましょう」
× × ×
知久、真澄、尚人、順路に従って歩く。
通路の先に、勇の姿を見つける。
衣装は白い全身タイツに、鶏の被り物。タイツの腕のところが、膜のように広がる。
勇、手を振る。
勇「コケコッコー! 遅いですよ! ずっと出番を待ってたんですからね!」
真澄、手を振り返す。
真澄「今日も元気だね」
勇「ありがとうございます! 元気が取り柄ですから!」
知久、真澄、尚人、勇に近づく。
勇「見てください。僕のタイツだけ、ちょっと特別な仕様になってるんですよ」
勇、嬉しそうに両腕を広げ、一回転する。
知久「そこ喜ぶところかな…」
勇「自分の衣装は愛してあげないと。せっかく僕と巡り会ってくれたんですから」
知久「タイツやのに?」
勇「タイツでも、です」
栄太「さて、仲間が揃ったので、これで楽隊が組めますね。先に進みましょう」