the boss's new clothes

瑞希「これはあれや…名付けるなら量子力学的全裸理論や」
和真「(成美の方を向いて)さっき何て言ったの?」
成美「俺に聞くなよ。俺だってわかんねぇよ」
瑞希「量子力学的全裸理論や。これは古典力学では説明できへん。量子力学の領域の話なんや。つまり全裸と着衣の状態が重なり合ってるってことや」
勇「それ、服を着ているなら当たり前なんじゃないんですか? 裸体の上に服があるんですから」
瑞希「ええところに気づいたな。実は着衣っちゅうんは量子力学的と考えることができる。みんなには俺が着てるように見えてると思うけど、それは服を観測することによって着衣の固有状態に収縮してるからやねん。そして栄ちゃんの服はまだ不確定の状態や」
昴「シュレディンガーの猫ならぬシュレディンガーの服ということですか。でも茂呂さんはばっちり観測されているじゃないですか、ここに」
瑞希「そこやねんな。おそらく観測できてへん不確定の領域があるんや。量子力学は理論の世界やからな。栄ちゃんは衣服を観測してて、俺らは裸を観測してる。その間に人間がまだ説明できてへん理論があって、そこで何かが起こってるんや…」
勇「寺田さん、たまに難しいことを言いますね。僕にはよく理解できないです」
知久「本人も何を言うてるんか理解できてへんと思うで」
栄太「(笑って)おもしろいですね。量子力学は未解明なところが多い分野なので、そういう可能性もあり得るかもしれない」
京介「俺は信じるぞ、量子力学的全裸理論」
真澄「キョン、どうしちゃったの!?」
京介「もう信じられるものがそれしか残っていないのだ」
知久「量子力学風疑似科学とか最も信じたらあかんもんやろ」
真澄「でも私も信じちゃうかも…」
知久「スミさんまで!?」
真澄「もう出鱈目でも何でもいいよ。そういうことにしよう」
透「意味不明な物理法則が展開しているのか、栄太がただの露出狂なのか、どっちにしたって地獄だな…」
歩「それなら全裸理論の方がマシかも。あれを信じるわけじゃないけど」
勇「事実よりも納得することが大事、って茂呂さんも言ってましたし」
昴「僕はもう何も信じない…」
 栄太、両手の掌を下に向けて、落ち着くようにジェスチャーしながら、
栄太「待ってください、ストップ。皆さん、もっと自分が感じていることを信じてくださいよ。ここで答え合わせしますね。私は全裸です」
 一同、静まり返る。
知久「どういうこと?」
栄太「皆さんがどこまで自分を信じられるのか、ちょっと試してみたくなっただけなんですよ。意外と揺らぐものなんですね」
真澄「最悪」
知久「ホンマに早よ死ね」
勇「でも僕らが見たものは事実だったということですよね。なんちゃら全裸理論に巻き込まれたわけでもなければ、集団幻覚を見たわけでもないんですね?」
京介「俺は間違っていなかったんだな」
昴「寺田さん、さっきの量子力学的全裸理論は何だったんですか?」
 瑞希、バツが悪そうに目を逸らし、
瑞希「忘れてくれ…」
真澄「だけど栄太は自分が全裸だと自覚しながら、平然とここまで来て、平然と喋ってたってことになるよね」
 一同、静まり返る。視線をちらちらと栄太を向ける。栄太は涼しい顔をしている。
歩「Nossa senhora…」
透「あいつ、正真正銘のバカだな」
成美「良かったな、和真。自由が認められたぞ」
和真「やっぱりいいや。あれと同類にはなりたくない」
栄太「では答え合わせが済んだところで、定例会議に戻りましょうかね」
歩「その前に一つだけいいかな」
 一同、歩に視線を向ける。
歩「栄太がリーダーとしてふさわしいかどうか話し合わない?」
知久「そやな。そうしようか」
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