竜宮城は右の果てに

知久「でもネトウヨもびっくりな歴史観のわりに、やっぱり党員は多様なんやな」
勇「だって無理がありますよ、僕らが極右集団の役をやるのは」
真澄「(頷いて)それはそう」
瑞希「それを言うたらおしまいやけどな」
昴「現実は多様なんです」
 上谷、ゆっくりと首を横に振る。
透「上谷党首はこう言っている。『多様性は良くない。人を分断させる。食べ物だって同じ。たくさんの食べ物が存在するから、人は好き嫌いで争う。人参さえあればいい。神話はそういう大事なことを教えてくれる』と」
昴「さすが上谷党首、人参のように賢明なお方だ…」
知久「こいつらとはわかり合えんよな… 初めて乙姫に共感したわ」
真澄「そう、人参の話しかしないだもん。話し合えないなら殴るしかないよね」
 真澄、檻の方に歩いて行き、扉を開けて、
真澄「ジェダイ、今こそ力を試すときだよ」
知久「俺にあいつらと戦う義理ないんやけどな…」
京介「ジェダイがいるのか… おもしろい。少しは遊べそうだ」
 黒子、キャリーワゴンを引っ張って、屏風の裏から現れる。キャリーワゴンにはビニールの棒とライトセーバーのおもちゃが積まれている。
 歩も屏風の裏から登場。
 一同、キャリーワゴンの周辺に集まり、ビニールの棒を手に取る。ヤンキーはバールのようなものをキャリーワゴンに返し、ビニールの棒に交換。昴はのぼりをキャリーワゴンに入れる。
 黒子、知久にライトセーバーを渡す。
栄太「ジェダイはこちらです」
 京介もライトセーバーを手にする。
 全員が武器を手にしたところで、黒子は屏風の裏に戻る。
 上谷、深く頷く。
昴「必ず勝てる、と上谷党首は言っています。相手よりベータカロテンを多く摂取しているのだから、こちらの方が強いはずだ、と」
勇「人参がどれだけ優れた食べ物か、実力で思い知らせましょう」
真澄「バカバカしい。人参を食べまくったところで、遺伝子までは変わらない。優生思想こそが至高で最強なんだから」
 スピーカーから暴れん坊将軍よりIIII-43(殺陣のテーマ)が流れる。
 一同、ビニールの棒でぽこぽこと戦っている。
 京介、知久の前に立つ。
京介「本当は真澄を倒しに行きたいところだが… ジェダイの相手は俺だ」
知久「(独り言のように)この戦いさえ終わったら、きっと理不尽から解放される。最後の辛抱や、俺」
 知久、京介、ライトセーバーのスイッチを押す。知久のライトセーバーは緑、京介のライトセーバーは赤に光る。
知久「俺、まだダークサイドには落ちてへんかったんやな」
 知久、京介、ライトセーバーで戦う。ライトセーバーを壊さないように慎重にぶつけ合っている。
 一同、戦闘を続けている。誰も倒れない。
昴「これ、どうやって勝敗をつけるんですかね」
成美「わかんねぇ」
 しばらく戦闘を続ける。戦闘の時間は冗長に感じるくらいの長さ。
 京介、わざとらしくよそ見をする。
知久「これは…斬れってことかな」
 知久、斬りかかるふりをする。
 京介、大袈裟に斬られたふりをする。
京介「クソ、ベータカロテンが足りなかったのか…」
 京介、地面に倒れる。
 知久、ライトセーバーを地面に放り投げる。
 知久、出口に向かって駆け出す。
 京介、慌てて体を起こし、
京介「桐生、待て、まだ続きがあるんだ!」
真澄「トミー、戻って!」
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