竜宮城は右の果てに
※京介はアルビニズム(アルビノ)の当事者です。三度笠は日焼けを防ぐためです。
静寂を破るように、出入口の方から京介の声。
京介「(声を張り上げ)乙姫! 乙姫はいるか!」
屏風の方に向かって、
成美「スミ、出番だぞ」
真澄「(屏風の裏から)すぐ行く」
真澄、屏風の裏から現れる。口をもぐもぐさせている。
成美「何か食ってたの?」
真澄「うん、おやつにしてた」
知久「(鼻で笑って)ええご身分なことで」
真澄、おやつを飲み込んでから、
真澄「何? 負け犬の遠吠えが聞こえた気がするんだけど」
京介「貴様…!」
京介、ブルーシートをくぐり、竜宮城に入場。
京介は着物(長着)を着て、三度笠を被っている。
京介「乙姫、まさか俺と婚約していることを忘れたわけではないだろうな。好みの奴を見つけては、その度に連れて帰りやがって…」
知久「えっ、俺、そういう目的で連れて来られたん!? 崇高な目的がどうのこうのって話は?」
真澄「私は何でも完璧が好きなの。個人的な好みと国家の理想が一致してるということ」
知久「俺、アセクシュアルなんやけど… そういうのは無視?」
真澄「この国に属するものは、全て私に属するもの。そこに個人なんて存在しない」
知久「ファシストの見本みたいな発言や…」
真澄「ところで何をしに来たの? 負け惜しみを言うため? ちゃんと認めたら? 自分には魅力も実力もないって。私はこれだけの有能な遺伝子を独占できる。キョンにはできない。その違いなんだって」
京介「(真澄をまっすぐ見て)…俺は城を乗っ取りに来た」
真澄「(鼻で笑う)身の程というものがわからない? 一人で何ができるの?」
京介「俺は一人ではない」
スピーカーから明るく爽やかでアップテンポな曲が流れる。歌詞は人参を称える内容。
出入口から中年男性(上谷)を先頭に、続いて透、勇、昴が行進しながら入場。お揃いのスーツを着て、オレンジのネクタイをしている。中年男性は貼りついたようにニコニコしている。昴は最後尾でのぼりを持っている。のぼりはオレンジの生地で、でかでかと『人参党』と書いてある。
中年男性、透、勇、昴、横一列に並ぶ。中年男性はリラックスした姿勢。透、勇、昴は足を肩幅に開き、姿勢を正して静止。
音楽が止まる。
透、昴、勇「(腹から声を出して)ベータカロテンで日本を元気に、人参党。キャロット・ファースト!」
中年男性、ニコニコしながら手を振る。
知久「また変な奴が追加されてもうた… というか誰やねん、あいつ」
真澄、明らかに動揺した様子。
真澄「人参党の上谷!? 何でこんなところに…」
上谷、ニコニコしたまま、軽く右手を挙げる。
知久「知り合い?」
真澄、黙る。
成美「上谷の野郎…何の用があってここに来やがった」
成美、バールのようなものを構える。
上谷、掌を下に向け、落ち着くようにジェスチャーする。
昴「上谷党首は落ち着くように言っています。できれば無血開城を望んでいるそうです。人参のように優しいお方だ…」
真澄「…キョン、よりによって人参党に入党するなんて。私を裏切ったってことね…」
京介「先に裏切ったのはお前だろう」
知久「何かバチバチしてるっぽい?」
尚人「上谷はかつては乙姫さまの部下で、元々は志を同じくしてた。乙姫さまが王室から独立できたのも、上谷の尽力があったからや。ただ乙姫さまと上谷には政治的見解の違いがあってん。上谷はとにかく人参が好きすぎる…」
知久「まさか食べ物の好き嫌いの話やったん?」
勇「そんな個人的な話ではありません! 囚人さん、貴方は古事記と日本書紀を読んだことはありますか?」
知久「神話のいくつかは知ってるけど、原典までは…」
勇「日本人ならちゃんと読みなさい。人参が日本人にとってどれだけ大切な作物なのか書いてありますから。日本人が飢えることなく健康でいられるよう、神々が授けてくださったのです!」
上谷、深く頷く。
知久「そんな珍説、初めて聞いたんやけど!? 人参ってそんなに古い作物やった? それを言うんやったら米やろ?」
透「米なんて所詮は大陸から来たもの。あたかも渡来人が日本を築いたかのように吹聴するために、歴史が書き換えられてるんだよ。人参こそ真に日本人らしい作物だ」
昴「自虐史観、歴史修正主義は改めなければいけません」
知久「乙姫より上には上…ちゃうな、右には右がおった…」
静寂を破るように、出入口の方から京介の声。
京介「(声を張り上げ)乙姫! 乙姫はいるか!」
屏風の方に向かって、
成美「スミ、出番だぞ」
真澄「(屏風の裏から)すぐ行く」
真澄、屏風の裏から現れる。口をもぐもぐさせている。
成美「何か食ってたの?」
真澄「うん、おやつにしてた」
知久「(鼻で笑って)ええご身分なことで」
真澄、おやつを飲み込んでから、
真澄「何? 負け犬の遠吠えが聞こえた気がするんだけど」
京介「貴様…!」
京介、ブルーシートをくぐり、竜宮城に入場。
京介は着物(長着)を着て、三度笠を被っている。
京介「乙姫、まさか俺と婚約していることを忘れたわけではないだろうな。好みの奴を見つけては、その度に連れて帰りやがって…」
知久「えっ、俺、そういう目的で連れて来られたん!? 崇高な目的がどうのこうのって話は?」
真澄「私は何でも完璧が好きなの。個人的な好みと国家の理想が一致してるということ」
知久「俺、アセクシュアルなんやけど… そういうのは無視?」
真澄「この国に属するものは、全て私に属するもの。そこに個人なんて存在しない」
知久「ファシストの見本みたいな発言や…」
真澄「ところで何をしに来たの? 負け惜しみを言うため? ちゃんと認めたら? 自分には魅力も実力もないって。私はこれだけの有能な遺伝子を独占できる。キョンにはできない。その違いなんだって」
京介「(真澄をまっすぐ見て)…俺は城を乗っ取りに来た」
真澄「(鼻で笑う)身の程というものがわからない? 一人で何ができるの?」
京介「俺は一人ではない」
スピーカーから明るく爽やかでアップテンポな曲が流れる。歌詞は人参を称える内容。
出入口から中年男性(上谷)を先頭に、続いて透、勇、昴が行進しながら入場。お揃いのスーツを着て、オレンジのネクタイをしている。中年男性は貼りついたようにニコニコしている。昴は最後尾でのぼりを持っている。のぼりはオレンジの生地で、でかでかと『人参党』と書いてある。
中年男性、透、勇、昴、横一列に並ぶ。中年男性はリラックスした姿勢。透、勇、昴は足を肩幅に開き、姿勢を正して静止。
音楽が止まる。
透、昴、勇「(腹から声を出して)ベータカロテンで日本を元気に、人参党。キャロット・ファースト!」
中年男性、ニコニコしながら手を振る。
知久「また変な奴が追加されてもうた… というか誰やねん、あいつ」
真澄、明らかに動揺した様子。
真澄「人参党の上谷!? 何でこんなところに…」
上谷、ニコニコしたまま、軽く右手を挙げる。
知久「知り合い?」
真澄、黙る。
成美「上谷の野郎…何の用があってここに来やがった」
成美、バールのようなものを構える。
上谷、掌を下に向け、落ち着くようにジェスチャーする。
昴「上谷党首は落ち着くように言っています。できれば無血開城を望んでいるそうです。人参のように優しいお方だ…」
真澄「…キョン、よりによって人参党に入党するなんて。私を裏切ったってことね…」
京介「先に裏切ったのはお前だろう」
知久「何かバチバチしてるっぽい?」
尚人「上谷はかつては乙姫さまの部下で、元々は志を同じくしてた。乙姫さまが王室から独立できたのも、上谷の尽力があったからや。ただ乙姫さまと上谷には政治的見解の違いがあってん。上谷はとにかく人参が好きすぎる…」
知久「まさか食べ物の好き嫌いの話やったん?」
勇「そんな個人的な話ではありません! 囚人さん、貴方は古事記と日本書紀を読んだことはありますか?」
知久「神話のいくつかは知ってるけど、原典までは…」
勇「日本人ならちゃんと読みなさい。人参が日本人にとってどれだけ大切な作物なのか書いてありますから。日本人が飢えることなく健康でいられるよう、神々が授けてくださったのです!」
上谷、深く頷く。
知久「そんな珍説、初めて聞いたんやけど!? 人参ってそんなに古い作物やった? それを言うんやったら米やろ?」
透「米なんて所詮は大陸から来たもの。あたかも渡来人が日本を築いたかのように吹聴するために、歴史が書き換えられてるんだよ。人参こそ真に日本人らしい作物だ」
昴「自虐史観、歴史修正主義は改めなければいけません」
知久「乙姫より上には上…ちゃうな、右には右がおった…」