竜宮城は右の果てに

※尚人はムスリムです。



× × ×

 知久、ライトセーバーを持って、亀とヤンキーの方へ歩いている。ドローンは知久について来ている。
 成美、和真、尚人、瑞希、歩をビニールの棒で叩きながら、
瑞希「お前、タタキの一つもできへんのけ」
成美「マジで使えねぇ奴だな」
和真「あの家にあったはずの2000万、君が自腹で立て替えるんだね」
歩「助けて」
 知久、足を止める。
知久「優しく叩いてるわりに、言うてることが凶悪すぎるんやけど…」
栄太「トミー、Do or do not. 」
知久「わかったよ、やれってことな」
 知久、ヤンキーにおそるおそる近寄る。
知久「もしもし…暴力はやめた方がええんちゃうかな」
 成美、和真、尚人、瑞希、歩を叩くのをやめ、知久の方を見る。
瑞希「何やねん、お前」
和真「余計なことには首を突っ込まない方がいいよ。彼と同じ目に遭いたくないならね」
尚人「目撃者が存在してもろうたら困るからな、気の毒やけど」
 和真、尚人、瑞希、ビニールの棒を構える。
成美「待て、落ち着け、早まるな。殺すのは話をしてからでも遅くない」
 成美、知久の方へ歩み出て、
成美「ジェダイ、お前は欲望から目を背けている… 金が欲しいんだろ? そんなの奪っちまえばいい。ダークサイドに身を委ねろ。そうすれば欲しいものが何でも手に入るぜ」
 成美が話している間、歩がこっそりと立ち上がり、ヤンキーの後ろに下がる。
知久「(呆れ返った表情で)断る。ダークサイドに転向してやることがそれかい」
 知久、ライトセーバーのおもちゃのスイッチを押し起動させる。ライトセーバーが緑に光る。
知久「I am a Jedi, like my father before me. 」
成美「それなら死んでもらうまでだ」
 成美、和真、尚人、瑞希、ビニールの棒を構える。
 知久、ライトセーバーを構え、成美に斬りかかるふりをする。
 成美、大袈裟に斬られた演技をしながら、
成美「やりやがったな!」
 知久、続いて和真、尚人、瑞希にも斬りかかるふりをする。
 和真、尚人、瑞希、それぞれ大袈裟に斬られた演技をする。
 成美、和真、尚人、瑞希、腰を引きながら、足元は今にも逃げ出しそうに、
瑞希「今日はこれくらいにしといちゃるわ。覚えとけや」
尚人「次に会うときまで、せいぜい神に命乞いすることやな」
 成美、和真、尚人、瑞希、知久に背を向け、走って退散する。
栄太「すばらしい! ライトサイドがダークサイドに打ち勝ちましたね」
知久「どうも」
 歩、知久の方へ歩み寄り、
歩「ありがとう、助かったよ。お礼に竜宮城に…」
知久「(言葉を遮って)これから竜宮城に向かう流れなんやろ? そして竜宮城は(ベニヤ板の壁を指して)あれやな?」
歩「確かにそうだけど… 勝手にセリフを取らないでよ。出番が減っちゃうじゃん」
知久「俺はさっさと茶番を終わらせたいねん」
歩「俺は尺が欲しいんだよ。いつも影が薄いんだから」
知久「どうやら歩とはわかり合えんみたいやな」
歩「そうみたい。残念だよ」

× × ×

 知久、歩、横に並んで、竜宮城の方へ向かって歩いている。ライトセーバーのライトは消えている。
 竜宮城が近づくにつれて、その姿がより詳しく見えるようになる。
 竜宮城は四方をベニヤ板で囲んだだけで、天井は無し。入口には扉がなく、代わりにブルーシートがかけられている。ブルーシートの右の壁に、達筆な字で『竜宮城』と書かれている。
知久「粗末な城やな…」
歩「ちょっと城の建設が後回しになっててね。まだ建国したばかりで不安定だから、国家予算の半分を軍事費に回してるんだ」
知久「防衛を強化するんやったら、まず城を堅牢にするところから始めるやろ、普通。城を落とされたら終わりやで」
歩「その普通をやらないのが乙姫さまなんだよ。勝ち続ける国家であるためには、常人の発想を越えないといけない。乙姫さまにはそれができる」
知久「…すでに嫌な予感しかせぇへんで、竜宮城」
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