マルチだ
※この話はフィクションです。実際する企業、商品、人物とは一切の関係はございません。
※作中でアロマオイルの使用方法について誤った説明がされていますが、そのような使用方法を推奨する意図はございません。
※尚人は弱視の当事者です。
○寮 尚人の部屋 リビング 昼
インテリアは白、ベージュ、グレーを基調とした落ち着いてエレガントな雰囲気。部屋は整頓されていてすっきりしている。
尚人、真澄、向かい合ってソファーに座っている。二人の間にはテーブルがあり、テーブルの上には紅茶が入ったカップが二つ、皿に乗ったクッキー。
真澄「この紅茶、おいしいね。どこで買ったの?」
尚人「それはUKに住んでる友達に送ってもろうたやつやねん」
真澄「そうだったんだ。日本には出店してないのかな?」
尚人「確か日本には店はなかったと思うけど、オンラインやったら買えるはずやで」
真澄「お取り寄せしてみようかな。また飲みたい」
尚人「ほな、パンフレットも一緒に入ってたから後で渡すわ」
真澄「ありがとう」
尚人「…そういえば立花さん」
真澄「何?」
尚人「立花さんってアロマオイルとか好き?」
真澄「アロマ? 好きだよ。何で?」
尚人「友達からようさんもろうて余ってんねん。使うんやったら持って帰ってもらおうかなって」
真澄「くれるならもらうけど…」
尚人「それやったらよかった。俺では使いきられへんくらいあるから」
真澄「どんだけもらったの? そんなにアロマをもらうことってある?」
尚人「友達も余らせてたみたいで…」
真澄「買いすぎちゃったとか?」
尚人「そんな感じみたい。とにかく遠慮せんともらって」
尚人、ソファーから立ち上がり、
尚人「ほな、持って来るわ」
真澄「どうも…」
× × ×
真澄、クッキーを食べている。
尚人の声「これやねんけど…」
真澄、尚人の方を見る。
真澄「それ!?」
尚人、ダンボールの箱を抱えてリビングに入って来る。
尚人、テーブルの上に箱を置く。
尚人「好きなやつ選んで。何やったら全部でもええで」
真澄「はあ…」
真澄、その場に立ち上がって箱の中を覗く。箱の中にはいくつかの小箱、基礎化粧品、洗剤のようなもの。
真澄「こんなにあるんだ… アロマの他にも色々と入ってるっぽい?」
尚人「そうみたいやな」
真澄「これ、新品だよね?」
尚人「新品やで。そこは大丈夫」
真澄「新品がこんなに余ってるのも変な話だけど…」
尚人「そこは色々あんねん」
真澄「(怪訝そうに)そう…」
真澄、箱の中から商品を取り出し、パッケージを眺める。パッケージには『multida』のロゴ。
真澄「これ、マルチダじゃん」
尚人「そうやな」
真澄「『そうやな』じゃないから。ネットワークビジネスで有名なところじゃん」
尚人「そうなんや」
真澄「名前からしてそうじゃん。『マルチです』って自己紹介してるようなもんじゃん。わかってたでしょ? どういうこと?」
尚人「(言い淀むように)友達が困ってたから…」
真澄「友達が困ってたから一緒にマルチしてあげることにしたの?」
尚人「(焦った様子で)ちゃうねん、そういうことちゃうねん」
真澄「違うなら何なの? 私、マルチやってる奴とは関わりたくないから」
尚人「これには事情があって。落ち着いて聞いてほしいんやけど…」
真澄「…いいよ、聞くよ。とりあえず座ろう」
尚人「うん」
真澄、箱を持ち上げて床に置く。
尚人、真澄、向かい合ってソファーに座る。
尚人「さっきの話やけど… 友達がマルチダにハマってもうてるみたいで。きっかけは仕事や人間関係のことでストレスを抱えてたときに、知人からマルチダのアロマを勧められたことらしいねん。最初はただ商品を気に入ってただけやったそうなんやけど、やがて知人からネットワークビジネスに誘われるようになったとかで…」
真澄「はい、はい、よくあるストーリーだね」
尚人「最初、友達はネットワークビジネスのグループに居心地の良さを感じてたそうやねん。みんな、自己肯定感に満ち溢れて、お互いに励まし寄り添い合ってて。でも友人は勧誘とか苦手な人で、なかなか売り上げが上がらんかったみたいで、それで…」
尚人が話している途中で遮って、
真澄「それでグループから『もっと売り上げを上げろ』って圧をかけられるようになったんでしょ? その人、どうせ自腹も切ってるよね?」
尚人「その通りやけど…」
真澄「典型的なマルチにハマる人だよね、その友達って。そこからどうして宇野さんがマルチやることになったわけ?」
尚人「一つ、訂正させて。俺はネットワークビジネスはやってへん」
真澄「そうなの?」
尚人「何かグループのノルマを達成せなあかんらしくて… それまで自腹で埋め合わせてたそうなんやけど、それも金銭的に限界になってもうたみたいで。それで友達から『一回だけやから助けてほしい』って頼まれて、その商品を購入してん」
真澄「(声が大きくなって)はあ? バカじゃないの? そこで友達のためにやるべきなのはネットワークビジネスを助けることじゃなくて、マルチをやめるように忠告することでしょ?」
尚人「それは正論なんやけど… 言うて聞くような感じとちゃうかったから。他に頼れる人もおらんみたいやし、その場でできることがそれしかなかってん」
真澄「つまりマルチのせいで友達がいなくなって、カモは宇野さんだけになった、と」
尚人「カモって…」
真澄「で、いくらなの?」
尚人「誰にも言わんといてほしいんやけど… (言い淀むように)30万…」
真澄「30万!? 何やってんの? パートナーが入院してるときに? 寺田さんには言ったの?」
尚人、首を横に振る。
尚人「こんなときに余計な心配はかけられへんから…」
真澄「無断でマルチに注ぎ込まれる方が心配で寝込んじゃうから。どうすんの、それ」
尚人「大丈夫、何とかなってるから。無理はしてへん。瑞希には黙っててほしい」
真澄「宇野さんがそのつもりなら言わないけどさ… でも寺田さんには話しとくべきじゃないかな」
尚人「それだけはホンマに…」
尚人が話している途中で遮って、
真澄「言っちゃ悪いけど、宇野さんもマルチにハマる素質あるよ。現に30万も支払っちゃったわけだし。このままどうなるかなんて目に見えてるじゃん」
尚人、黙り込む。
真澄「一人で考えるのは危ないから。寺田さんにちゃんと相談して、寺田さんの言うことを聞いて。言いづらいなら私が話そうか?」
尚人「それだけはやめて! ホンマに何とかできるから。さすがにネットワークビジネスに誘われたら断るよ」
真澄「断れるとは思えないけど…」
少し間を置いて、
真澄「こうしようよ。寺田さんには黙っとくから、何かあったら私に相談して。それならできるでしょ?」
尚人「うん…」
真澄「とにかく今は自分を過信しないこと。オッケー?」
尚人「わかった…」
○寮 尚人の部屋 リビング 夜 日替わり
尚人、ソファーに座ってスマホを操作している。スマホからはVoiceOverの音声が流れていて、レシピを読み上げている。尚人の膝の上で猫(エキゾチック・ショートヘア)が眠っている。
スマホから着信音。画面には大きな文字で『へのへのもへじ』と表示されている。
尚人、電話に出る。猫は着信音に驚いて目覚め、膝から降りる。
尚人「もしもし」
○アパート へのへのもへじの部屋 夜
インテリアはシンプルなデザイン。部屋は清潔で整っている。部屋のあちこちにmultidaの商品が置かれている。
へのへのもへじ(以下、もへじ)、スマホを持って床に座っている。顔にはへのへのもへじのお面を被っている。
もへじ「もしもし。今、時間は大丈夫?」
(以下、カットバック)
尚人「大丈夫やで」
もへじ「どうしてもお礼が言いたくて。この前はホントにありがとう。グループのみんなも喜んでくれたよ」
尚人「あれで最初で最後やからな」
もへじ「うん、わかってる。私、もっとしっかりしないとダメだね。いつも他人に甘えてばかりで…」
尚人「そんなことは…」
もへじ「私、みんなみたいに毎日が充実していて、自己肯定感が高い人になりたくてマルチダを始めたんだ。みんな、マルチダと出会って人生が変わったって言ってたから。でも私は何も変われていない…」
尚人「無理に変わろうとする必要はないんちゃうかな」
もへじ「ううん、私は変わりたいの。私、努力も勉強も苦手だから、まだマルチダのことをちゃんと学べていなくて… だからいつまでも変われないんだ…」
尚人「へのへのさん、その話なんやけどマルチダって…」
尚人が話している途中で遮って、
もへじ「ごめん、変な話しちゃったね。ネガティブな話はここまで! 今日は宇野さんに案内したいことがあって」
尚人「それ、またにしてくれへんかな? 今日は早よ寝たい…」
尚人が話している途中で遮って、
もへじ「宇野さんにアロマをたくさん買わせちゃったから、もしかしたら持て余して困ってるんじゃないかって思って。それってもったいないでしょ。グループにアロマに詳しい人がいて、その人が宇野さんに会って話したいって…」
もへじが話している途中で遮って、
尚人「明日は朝から仕事やから早よ寝なあかんねん。もう切るで」
もへじ「待って! 少しだけ! せっかくマルチダに出会ってくれたんだから、宇野さんにも健康で幸せになってほしいの。マルチダのアロマは品質が高いから料理に使ったりもできるんだ。宇野さんって料理が好きでしょ?」
尚人「まあ…」
もへじ「その人、料理にも詳しいから色々と教えてくれるって」
尚人「その辺は間に合ってるから…」
尚人が話している途中で遮って、
もへじ「もし健康のことで悩んでることがあれば、その人に相談してみて。それに効くレシピがあるかもしれないから。パートナーさん、入院されてるんでしょう?」
尚人「それはへのへのさんには関係ないことやから…」
もへじ「そうだよね、踏み込みすぎだよね… 私、宇野さんにお返しがしたくて… その人も宇野さんにすごく感謝してて、できることがあったら何かしてあげたいって。とにかく会うだけ会ってみてほしいの! 優しくて素敵な人だから」
尚人「ああ… 考えとくわ。最近、仕事で忙しいから。気持ちは有り難いんやけど…」
もへじ「いつでも大丈夫だから。また時間ができたら教えて。こんなにお世話になったのに何もしないわけにいかないから」
(カットバック、終わり)
○寮 尚人の部屋 リビング 夜
尚人「そこは別に気にせんでも… もう切ってもええかな?」
もへじ「仕事あるんだったね。ごめんね、時間を取らせちゃって」
尚人「ええよ。ほな、おやすみ」
もへじ「おやすみ」
尚人、電話を切る。
尚人、スマホをテーブルに置き、体を投げ出すようにソファーにもたれる。
※作中でアロマオイルの使用方法について誤った説明がされていますが、そのような使用方法を推奨する意図はございません。
※尚人は弱視の当事者です。
○寮 尚人の部屋 リビング 昼
インテリアは白、ベージュ、グレーを基調とした落ち着いてエレガントな雰囲気。部屋は整頓されていてすっきりしている。
尚人、真澄、向かい合ってソファーに座っている。二人の間にはテーブルがあり、テーブルの上には紅茶が入ったカップが二つ、皿に乗ったクッキー。
真澄「この紅茶、おいしいね。どこで買ったの?」
尚人「それはUKに住んでる友達に送ってもろうたやつやねん」
真澄「そうだったんだ。日本には出店してないのかな?」
尚人「確か日本には店はなかったと思うけど、オンラインやったら買えるはずやで」
真澄「お取り寄せしてみようかな。また飲みたい」
尚人「ほな、パンフレットも一緒に入ってたから後で渡すわ」
真澄「ありがとう」
尚人「…そういえば立花さん」
真澄「何?」
尚人「立花さんってアロマオイルとか好き?」
真澄「アロマ? 好きだよ。何で?」
尚人「友達からようさんもろうて余ってんねん。使うんやったら持って帰ってもらおうかなって」
真澄「くれるならもらうけど…」
尚人「それやったらよかった。俺では使いきられへんくらいあるから」
真澄「どんだけもらったの? そんなにアロマをもらうことってある?」
尚人「友達も余らせてたみたいで…」
真澄「買いすぎちゃったとか?」
尚人「そんな感じみたい。とにかく遠慮せんともらって」
尚人、ソファーから立ち上がり、
尚人「ほな、持って来るわ」
真澄「どうも…」
× × ×
真澄、クッキーを食べている。
尚人の声「これやねんけど…」
真澄、尚人の方を見る。
真澄「それ!?」
尚人、ダンボールの箱を抱えてリビングに入って来る。
尚人、テーブルの上に箱を置く。
尚人「好きなやつ選んで。何やったら全部でもええで」
真澄「はあ…」
真澄、その場に立ち上がって箱の中を覗く。箱の中にはいくつかの小箱、基礎化粧品、洗剤のようなもの。
真澄「こんなにあるんだ… アロマの他にも色々と入ってるっぽい?」
尚人「そうみたいやな」
真澄「これ、新品だよね?」
尚人「新品やで。そこは大丈夫」
真澄「新品がこんなに余ってるのも変な話だけど…」
尚人「そこは色々あんねん」
真澄「(怪訝そうに)そう…」
真澄、箱の中から商品を取り出し、パッケージを眺める。パッケージには『multida』のロゴ。
真澄「これ、マルチダじゃん」
尚人「そうやな」
真澄「『そうやな』じゃないから。ネットワークビジネスで有名なところじゃん」
尚人「そうなんや」
真澄「名前からしてそうじゃん。『マルチです』って自己紹介してるようなもんじゃん。わかってたでしょ? どういうこと?」
尚人「(言い淀むように)友達が困ってたから…」
真澄「友達が困ってたから一緒にマルチしてあげることにしたの?」
尚人「(焦った様子で)ちゃうねん、そういうことちゃうねん」
真澄「違うなら何なの? 私、マルチやってる奴とは関わりたくないから」
尚人「これには事情があって。落ち着いて聞いてほしいんやけど…」
真澄「…いいよ、聞くよ。とりあえず座ろう」
尚人「うん」
真澄、箱を持ち上げて床に置く。
尚人、真澄、向かい合ってソファーに座る。
尚人「さっきの話やけど… 友達がマルチダにハマってもうてるみたいで。きっかけは仕事や人間関係のことでストレスを抱えてたときに、知人からマルチダのアロマを勧められたことらしいねん。最初はただ商品を気に入ってただけやったそうなんやけど、やがて知人からネットワークビジネスに誘われるようになったとかで…」
真澄「はい、はい、よくあるストーリーだね」
尚人「最初、友達はネットワークビジネスのグループに居心地の良さを感じてたそうやねん。みんな、自己肯定感に満ち溢れて、お互いに励まし寄り添い合ってて。でも友人は勧誘とか苦手な人で、なかなか売り上げが上がらんかったみたいで、それで…」
尚人が話している途中で遮って、
真澄「それでグループから『もっと売り上げを上げろ』って圧をかけられるようになったんでしょ? その人、どうせ自腹も切ってるよね?」
尚人「その通りやけど…」
真澄「典型的なマルチにハマる人だよね、その友達って。そこからどうして宇野さんがマルチやることになったわけ?」
尚人「一つ、訂正させて。俺はネットワークビジネスはやってへん」
真澄「そうなの?」
尚人「何かグループのノルマを達成せなあかんらしくて… それまで自腹で埋め合わせてたそうなんやけど、それも金銭的に限界になってもうたみたいで。それで友達から『一回だけやから助けてほしい』って頼まれて、その商品を購入してん」
真澄「(声が大きくなって)はあ? バカじゃないの? そこで友達のためにやるべきなのはネットワークビジネスを助けることじゃなくて、マルチをやめるように忠告することでしょ?」
尚人「それは正論なんやけど… 言うて聞くような感じとちゃうかったから。他に頼れる人もおらんみたいやし、その場でできることがそれしかなかってん」
真澄「つまりマルチのせいで友達がいなくなって、カモは宇野さんだけになった、と」
尚人「カモって…」
真澄「で、いくらなの?」
尚人「誰にも言わんといてほしいんやけど… (言い淀むように)30万…」
真澄「30万!? 何やってんの? パートナーが入院してるときに? 寺田さんには言ったの?」
尚人、首を横に振る。
尚人「こんなときに余計な心配はかけられへんから…」
真澄「無断でマルチに注ぎ込まれる方が心配で寝込んじゃうから。どうすんの、それ」
尚人「大丈夫、何とかなってるから。無理はしてへん。瑞希には黙っててほしい」
真澄「宇野さんがそのつもりなら言わないけどさ… でも寺田さんには話しとくべきじゃないかな」
尚人「それだけはホンマに…」
尚人が話している途中で遮って、
真澄「言っちゃ悪いけど、宇野さんもマルチにハマる素質あるよ。現に30万も支払っちゃったわけだし。このままどうなるかなんて目に見えてるじゃん」
尚人、黙り込む。
真澄「一人で考えるのは危ないから。寺田さんにちゃんと相談して、寺田さんの言うことを聞いて。言いづらいなら私が話そうか?」
尚人「それだけはやめて! ホンマに何とかできるから。さすがにネットワークビジネスに誘われたら断るよ」
真澄「断れるとは思えないけど…」
少し間を置いて、
真澄「こうしようよ。寺田さんには黙っとくから、何かあったら私に相談して。それならできるでしょ?」
尚人「うん…」
真澄「とにかく今は自分を過信しないこと。オッケー?」
尚人「わかった…」
○寮 尚人の部屋 リビング 夜 日替わり
尚人、ソファーに座ってスマホを操作している。スマホからはVoiceOverの音声が流れていて、レシピを読み上げている。尚人の膝の上で猫(エキゾチック・ショートヘア)が眠っている。
スマホから着信音。画面には大きな文字で『へのへのもへじ』と表示されている。
尚人、電話に出る。猫は着信音に驚いて目覚め、膝から降りる。
尚人「もしもし」
○アパート へのへのもへじの部屋 夜
インテリアはシンプルなデザイン。部屋は清潔で整っている。部屋のあちこちにmultidaの商品が置かれている。
へのへのもへじ(以下、もへじ)、スマホを持って床に座っている。顔にはへのへのもへじのお面を被っている。
もへじ「もしもし。今、時間は大丈夫?」
(以下、カットバック)
尚人「大丈夫やで」
もへじ「どうしてもお礼が言いたくて。この前はホントにありがとう。グループのみんなも喜んでくれたよ」
尚人「あれで最初で最後やからな」
もへじ「うん、わかってる。私、もっとしっかりしないとダメだね。いつも他人に甘えてばかりで…」
尚人「そんなことは…」
もへじ「私、みんなみたいに毎日が充実していて、自己肯定感が高い人になりたくてマルチダを始めたんだ。みんな、マルチダと出会って人生が変わったって言ってたから。でも私は何も変われていない…」
尚人「無理に変わろうとする必要はないんちゃうかな」
もへじ「ううん、私は変わりたいの。私、努力も勉強も苦手だから、まだマルチダのことをちゃんと学べていなくて… だからいつまでも変われないんだ…」
尚人「へのへのさん、その話なんやけどマルチダって…」
尚人が話している途中で遮って、
もへじ「ごめん、変な話しちゃったね。ネガティブな話はここまで! 今日は宇野さんに案内したいことがあって」
尚人「それ、またにしてくれへんかな? 今日は早よ寝たい…」
尚人が話している途中で遮って、
もへじ「宇野さんにアロマをたくさん買わせちゃったから、もしかしたら持て余して困ってるんじゃないかって思って。それってもったいないでしょ。グループにアロマに詳しい人がいて、その人が宇野さんに会って話したいって…」
もへじが話している途中で遮って、
尚人「明日は朝から仕事やから早よ寝なあかんねん。もう切るで」
もへじ「待って! 少しだけ! せっかくマルチダに出会ってくれたんだから、宇野さんにも健康で幸せになってほしいの。マルチダのアロマは品質が高いから料理に使ったりもできるんだ。宇野さんって料理が好きでしょ?」
尚人「まあ…」
もへじ「その人、料理にも詳しいから色々と教えてくれるって」
尚人「その辺は間に合ってるから…」
尚人が話している途中で遮って、
もへじ「もし健康のことで悩んでることがあれば、その人に相談してみて。それに効くレシピがあるかもしれないから。パートナーさん、入院されてるんでしょう?」
尚人「それはへのへのさんには関係ないことやから…」
もへじ「そうだよね、踏み込みすぎだよね… 私、宇野さんにお返しがしたくて… その人も宇野さんにすごく感謝してて、できることがあったら何かしてあげたいって。とにかく会うだけ会ってみてほしいの! 優しくて素敵な人だから」
尚人「ああ… 考えとくわ。最近、仕事で忙しいから。気持ちは有り難いんやけど…」
もへじ「いつでも大丈夫だから。また時間ができたら教えて。こんなにお世話になったのに何もしないわけにいかないから」
(カットバック、終わり)
○寮 尚人の部屋 リビング 夜
尚人「そこは別に気にせんでも… もう切ってもええかな?」
もへじ「仕事あるんだったね。ごめんね、時間を取らせちゃって」
尚人「ええよ。ほな、おやすみ」
もへじ「おやすみ」
尚人、電話を切る。
尚人、スマホをテーブルに置き、体を投げ出すようにソファーにもたれる。