the secret garden
※大阪府のパートナーシップ宣誓証明制度を参考にしていますが、誤った情報を書いてしまっているかもしれません。ご注意ください。また情報は2024年9月のものです。
○知久の部屋 リビング 夜
知久、成美、テーブルを挟んで、向かい合わせで床に座っている。服装はルームウェア。
テーブルの上にはビールやおつまみ。
成美、持っていた缶をテーブルに置いて、知久をまっすぐ見る。
成美「ちょっとマジメな話があるんだけど」
知久「どないしたん?」
成美「俺、誰かとパートナーシップを結びたいと思っててさ。家族も恋人もいないし、何かあったら困るじゃん」
知久「そやな、日本社会って家族がいてるのが前提になってるところあるよな。それで俺と?」
成美「そういうこと。トミーとだったら利害が一致するんじゃねぇかなって」
知久「俺も成美と似たような状況やからな。それやったら養子縁組って手もあるけど」
成美「今のところはそこまで考えてねぇな。老人になっても独りだったら、そのときは頼むかも」
知久「わかった、ええよ」
× × ×
知久、スマートフォンを操作している。画面は大阪府のパートナーシップ宣誓証明制度のページ。
成美、スルメを齧っている。
知久「正式名称はパートナーシップ宣誓証明制度なんやって。条件は…(画面をスクロールして)問題なしやな。どっちも成人してて、独身で、片方でも大阪に住んでること。必要な書類は住民票、独身証明書か戸籍抄本、それと本人確認できるもの」
成美「たかだか証明書を発行してもらうために、戸籍まで必要なのかよ」
知久「大袈裟やんな、どうせお情け程度の権利しかくれへんくせに」
成美「一緒に家を探しやすくなったり、相方が入院したら面会させてくれたりするんだっけ?」
知久「法的な権利があるわけちゃうから、相手が配慮してくれるかどうか次第やねんな。あっ、携帯料金は安なるらしいで」
成美「それはラッキー」
知久「でも公式に家族として認められるわけちゃうってことは忘れたらあかんで」
成美「わかってるよ。最近はマイノリティーの権利が行きすぎてるとか言うけど、これのどこが行きすぎてるんだよ、まったく」
知久、スマートフォンをテーブルに置いて、
知久「ホンマにな」
○ロビン寮 ロビー 昼
知久、成美を待ちながら、スマートフォンを見ている。服装は長袖のカジュアルシャツ、ジーンズ。
エレベーターの扉が開き、成美がロビーに到着。服装はジェンダーレスなオフィスカジュアル。メイクは控えめ。髪は後ろで三つ編みにしている。
成美「お待たせ」
知久、スマートフォンをバッグに入れる。
知久「(笑って)どないしてん、そんなマジメな格好して」
成美「お前だって珍しくYシャツじゃん」
知久「さすがにタトゥーは隠さなあかんかなと思って。ちょっと暑いんやけど」
成美「俺もこれくらいマジメにしないと、育ちの悪さが隠せねぇんだよ」
知久「どっちも悪い子やってことやな。ほな、そろそろ行こか」
○大阪の街 路上 車内 昼
知久の運転で、大阪の道を走っている。成美は助手席。
成美「自分から頼んどいてあれなんだけど、本当にこんなことして良かったのかな。制度を悪用してるみたいで」
知久「(笑って)変なところ気にするんやな」
成美「だって俺とトミーは恋人でもなければ、一緒に生活してるわけでもないじゃん。真剣に制度を必要としてるクィアにとっては、俺らみたいなのは迷惑だろ」
知久「でも異性同士は友情婚してんねんで」
成美「そうだけどさ。でもクィアはこういうことやるから信用できないんだって、シスヘテロにつつかれるかもしれねぇじゃん」
知久「悪用というよりサバイブやと思うけどな。他に手段ないんやし、そこに乗っかるんはしゃあないことやろ」
成美「割り切ってるな」
知久「それが俺の処世術やから」
前方に高層ビルが見える。
知久「あっ、あれやな」
○役所 外 昼
知久、成美、駐車場から入り口に向かって歩いている。
知久、シャツの袖のボタンを留めて、手首のタトゥーを隠す。
成美「トミー、職員と話すのは任せた。俺は置き物になるから」
知久「(苦笑して)わかったよ」
成美「いちいち男なのか女なのか探られるのは面倒でさ」
知久「そういうの慣れてる人が対応してくれるやろ」
成美「説明して伝わった試しがねぇな。それだけ性別二元論は手強いんだよ」
成美、入り口の前で立ち止まる。知久も続いて立ち止まる。
成美「俺、ジョーシキある大人に見えてるよな?」
知久「うん、いけてるで」
成美「よし、ここから俺は女性的なゲイってことで」
知久「そして俺は成美と付き合ってるallo、と。完璧な設定やな」
知久、成美、役所に入る。
○カフェ 中 昼
知久、成美、向かい合わせで席に着いている。
知久の前にはアイスコーヒー、成美の前にはミックスジュースが置いてある。
成美、パートナーシップ宣誓書受領証を手にして眺めている。
成美「これで少しは安心して生けていけるな」
知久「ないよりはマシやからな」
成美、受領証をテーブルに置いて、
成美「トミー、今日はありがとな」
知久「ホンマに感謝してや、俺に任せきりなんやから」
成美「俺だって頑張って微笑んだし」
知久「完全に置き物やったな。せめて職員さんに返事くらいしろや」
成美「できないことはしないのが俺なりの努力なんだよ」
知久「パートナーシップ␣解消しようかな…」
成美「ちゃんとパートナーの義務は果たすって。万が一でもトミーに何かあったら、真っ先に駆けつけるよ」
知久「そういうところは信用できるからな。これからはよろしく頼むで、この世界をサバイブする仲間として」
知久、右手を差し出す。
成美、右手で知久と握手する。
成美「もちろん」
○知久の部屋 リビング 夜
知久、成美、テーブルを挟んで、向かい合わせで床に座っている。服装はルームウェア。
テーブルの上にはビールやおつまみ。
成美、持っていた缶をテーブルに置いて、知久をまっすぐ見る。
成美「ちょっとマジメな話があるんだけど」
知久「どないしたん?」
成美「俺、誰かとパートナーシップを結びたいと思っててさ。家族も恋人もいないし、何かあったら困るじゃん」
知久「そやな、日本社会って家族がいてるのが前提になってるところあるよな。それで俺と?」
成美「そういうこと。トミーとだったら利害が一致するんじゃねぇかなって」
知久「俺も成美と似たような状況やからな。それやったら養子縁組って手もあるけど」
成美「今のところはそこまで考えてねぇな。老人になっても独りだったら、そのときは頼むかも」
知久「わかった、ええよ」
× × ×
知久、スマートフォンを操作している。画面は大阪府のパートナーシップ宣誓証明制度のページ。
成美、スルメを齧っている。
知久「正式名称はパートナーシップ宣誓証明制度なんやって。条件は…(画面をスクロールして)問題なしやな。どっちも成人してて、独身で、片方でも大阪に住んでること。必要な書類は住民票、独身証明書か戸籍抄本、それと本人確認できるもの」
成美「たかだか証明書を発行してもらうために、戸籍まで必要なのかよ」
知久「大袈裟やんな、どうせお情け程度の権利しかくれへんくせに」
成美「一緒に家を探しやすくなったり、相方が入院したら面会させてくれたりするんだっけ?」
知久「法的な権利があるわけちゃうから、相手が配慮してくれるかどうか次第やねんな。あっ、携帯料金は安なるらしいで」
成美「それはラッキー」
知久「でも公式に家族として認められるわけちゃうってことは忘れたらあかんで」
成美「わかってるよ。最近はマイノリティーの権利が行きすぎてるとか言うけど、これのどこが行きすぎてるんだよ、まったく」
知久、スマートフォンをテーブルに置いて、
知久「ホンマにな」
○ロビン寮 ロビー 昼
知久、成美を待ちながら、スマートフォンを見ている。服装は長袖のカジュアルシャツ、ジーンズ。
エレベーターの扉が開き、成美がロビーに到着。服装はジェンダーレスなオフィスカジュアル。メイクは控えめ。髪は後ろで三つ編みにしている。
成美「お待たせ」
知久、スマートフォンをバッグに入れる。
知久「(笑って)どないしてん、そんなマジメな格好して」
成美「お前だって珍しくYシャツじゃん」
知久「さすがにタトゥーは隠さなあかんかなと思って。ちょっと暑いんやけど」
成美「俺もこれくらいマジメにしないと、育ちの悪さが隠せねぇんだよ」
知久「どっちも悪い子やってことやな。ほな、そろそろ行こか」
○大阪の街 路上 車内 昼
知久の運転で、大阪の道を走っている。成美は助手席。
成美「自分から頼んどいてあれなんだけど、本当にこんなことして良かったのかな。制度を悪用してるみたいで」
知久「(笑って)変なところ気にするんやな」
成美「だって俺とトミーは恋人でもなければ、一緒に生活してるわけでもないじゃん。真剣に制度を必要としてるクィアにとっては、俺らみたいなのは迷惑だろ」
知久「でも異性同士は友情婚してんねんで」
成美「そうだけどさ。でもクィアはこういうことやるから信用できないんだって、シスヘテロにつつかれるかもしれねぇじゃん」
知久「悪用というよりサバイブやと思うけどな。他に手段ないんやし、そこに乗っかるんはしゃあないことやろ」
成美「割り切ってるな」
知久「それが俺の処世術やから」
前方に高層ビルが見える。
知久「あっ、あれやな」
○役所 外 昼
知久、成美、駐車場から入り口に向かって歩いている。
知久、シャツの袖のボタンを留めて、手首のタトゥーを隠す。
成美「トミー、職員と話すのは任せた。俺は置き物になるから」
知久「(苦笑して)わかったよ」
成美「いちいち男なのか女なのか探られるのは面倒でさ」
知久「そういうの慣れてる人が対応してくれるやろ」
成美「説明して伝わった試しがねぇな。それだけ性別二元論は手強いんだよ」
成美、入り口の前で立ち止まる。知久も続いて立ち止まる。
成美「俺、ジョーシキある大人に見えてるよな?」
知久「うん、いけてるで」
成美「よし、ここから俺は女性的なゲイってことで」
知久「そして俺は成美と付き合ってるallo、と。完璧な設定やな」
知久、成美、役所に入る。
○カフェ 中 昼
知久、成美、向かい合わせで席に着いている。
知久の前にはアイスコーヒー、成美の前にはミックスジュースが置いてある。
成美、パートナーシップ宣誓書受領証を手にして眺めている。
成美「これで少しは安心して生けていけるな」
知久「ないよりはマシやからな」
成美、受領証をテーブルに置いて、
成美「トミー、今日はありがとな」
知久「ホンマに感謝してや、俺に任せきりなんやから」
成美「俺だって頑張って微笑んだし」
知久「完全に置き物やったな。せめて職員さんに返事くらいしろや」
成美「できないことはしないのが俺なりの努力なんだよ」
知久「パートナーシップ␣解消しようかな…」
成美「ちゃんとパートナーの義務は果たすって。万が一でもトミーに何かあったら、真っ先に駆けつけるよ」
知久「そういうところは信用できるからな。これからはよろしく頼むで、この世界をサバイブする仲間として」
知久、右手を差し出す。
成美、右手で知久と握手する。
成美「もちろん」
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