何度か焼け焦げて

 学園軍獄のグラウンドの隅では、ジャイアントたちが縮こまっていた。ひりつく殺気を隠しもせずに、エルドラドの主神二名が対峙しているからだ。
 本日八度目の、創世神同士の喧嘩が始まってしまった。
 いい加減にしろ。
 地面はひび割れ、車は熱で燃え上がり、建物の壁には打ち付けられた拳の跡。この勝負で最後まで立っていたほうが真の勝者である、という、しょうもない戦闘である。
 サモナーはジャイアントたちを引き連れて、軍獄の建物内部に避難することにした。外では破壊音と爆発音と哄笑と怒鳴り声が響いている。
 ここまで来れば被害もないだろう、という場所までやって来て、ジャイアントたちを解散させた。すまないサモナー、恩に着る、などと言われてしまった。
 ふと隣を見れば、いつからそこにいたのか、タネトモがにこやかかつ冷ややかな笑みで立っている。センスがバチンと音を立てた。

「どうしたテスカトリポカ! その程度か! お前は俺の鏡だろう! 鏡ならば、俺と並ぶ威力を出せるだろう!」
 楽しそうに声をあげるケツァルコアトルが、空を舞っていた。美しい羽毛を散らしながら飛び回り、テスカトリポカの鏡からの攻撃を躱していた。
「勿論だともケツァルコアトル! 君が望むなら私は! 君が満足いくまで……ああ! 最低最悪で、最高の戦いを見せるとしよう!」
 面白そうに返すテスカトリポカが、地を駆けていた。しなやかな尻尾を揺らしながら、ケツァルコアトルからの攻撃を避けていた。
 そのせいで学園軍獄がボロボロになっていることなど、二人にはどうでもいいことだった。

「サモナー様」
「怒りは引っ込んだみたいなんだけど、今度は楽しみのほうに振り切れたみたいなんだよね、あの二人」
「離断を」
「……いや、たぶん今離断しようとしても、二人だけの世界に入っちゃってるからまた始まるよ」
 タネトモ参謀の殺気がチリリとサモナーの肌を焼いた。
 そんな怒りを向けられても、どうすることもできない。

 二人は今、二人だけの世界で、派手にいちゃついている真っ最中だからだ。
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