米を炒めるだけなのに
事態は三日前に遡る。
「あなたの得意料理は何? 腕によりをかけた一品で恋人の心をゲット特集」と大々的に主張した雑誌のポスターが、シティモールで買い物をしていたサモナーの視界に偶然入り込んだのが、すべてのきっかけだった。
なんでも、その雑誌の付録にデニム生地のエプロンがついてくるとかで、付録の持ち去りを防ぐために厳重にビニールが巻き付けられていたため、中身を見ることは叶わなかったが、飯森チョウジ監修でピラフのレシピが載っているらしいことだけは分かった。
ふうん、と声を漏らしたサモナーが、学生寮に帰ってきたその日の夜。窓ガラスが粉々に砕け散り、呼んでいない客人がお邪魔します!! と飛び込んできたそのとき。サモナーはふと呟いた。
「テスカって得意料理とかある?」
「は?」
パラパラと桜吹雪のように散る窓ガラスを背景に、テスカトリポカが目を丸くしていた。
それから三日間、テスカトリポカの襲撃はなかった。不気味なほど何もなかった。こちらから連絡を入れようかと端末を手にしたサモナーが、いや、何と言えばいいんだ、この場合……と悩んでいる間も、テスカトリポカが新宿に現れたという話は一つもなく。平穏な環境の中、小テストが抜き打ちで行われてサモナーを悩ませたこと以外は、本当に何もない七二時間だったのだ。
アプリがメッセージの受信を知らせたのは、サモナーが下校している最中のことだった。
「おいで!!!!!!」
やたらエクスクラメーションマーク……ビックリマークのことであるが、それが多用されたメッセージが一言だけ、サモナーの端末に届いた。
発信者はテスカトリポカで、何がどうして「おいで!!!!!!」なのかの説明はない。サモナーが画面をタップして、返信した。
「練馬に?」
「うん」
すぐに返ってきたメッセージは簡潔で、尊大な物言いでやんちゃに暴れ散らかす最前線指揮官らしからぬ「うん」のみ。
なんの説明もないことには行きにくいんだけど、と躊躇するサモナーが、どう返そうか画面を見つめていると、新しいメッセージがポコンという音と共に表示された。
「はよ」
「どこで覚えた、その言葉遣い」
問いかけても返事はなく。
何がなんだか分からないが、行くしかなさそうだと判断したサモナーは、大きくため息をついた。
「やあ! よく来たね!!」
上機嫌な様子で学園軍獄の前に立つテスカトリポカが、サモナーを見つけて駆け寄ってくる。会いたかったよ、きょうだい! と熱烈なハグで歓迎されるのはいいが、いったい何の用なのだ。
中へどうぞと招かれて、サモナーは問いかけることすらできずに学園軍獄に足を踏み入れることとなった。そのまま見慣れぬ通路へと案内され、おいで、こっちだよ、というテスカトリポカを信じて進んでいくと、たどり着いたのは誰もいない厨房……らしき空間。換気扇だけが回っていた。
「君の問いに答えを出そうと奮闘してね」
テスカトリポカはズンズンと厨房の奥へと進んでいく。サモナーが慌ててついていくと、二台並んだ|三口《みつくち》のコンロの前で、ゴソゴソと何かを取り出しているところだった。
「問い? なんか問いかけたっけ?」
「テスカって得意料理とかある? と聞いてきたのは君だぞう?」
ああ、そんなことを聞いたなあ、たしか。
じゃあ、なんだ。まさか、テスカトリポカは、その問いかけに答えるために、厨房で料理の練習でもしていたというのか。
「得意料理ができたってこと?」
「いや、それがさっぱり!」
「は!?」
「何度練習しても米が炭化してしまってね!」
本格的な中華鍋を片手に、テスカトリポカが悩ましげな顔つきになっている。
じゃあ、なぜ呼んだ?
眉間にしわを寄せるサモナーの表情でだいたい察したらしい。テスカトリポカはニッコリと笑うと、胸を張って主張した。
「言い出しっぺは君なのだから、私の料理に付き合ってもらおうと思ってね!」
米を炭に変えし者が何か言っている。
「何を作るの、これは? チャーハン?」
「うむ! 簡単なものから始めてはどうかとタネトモ参謀にアドバイスをもらったのでね!」
それは妥当な提案であると言える。
タネトモもまさか炭が出来上がるだなんて思っていなかったのだろう。
「……油はどれくらい使ってたの?」
まず、基本的なことを知っているのかと尋ねると、テスカトリポカはうーむ、と少し悩んだあと、こてんと首を傾げて答えた。
「五〇ミリリットルほど?」
「米がビッチャビチャになるわ」
「そうなのかね? だいたい最後は黒焦げになるから、ビッチャビチャではなかったのだが」
「えー……炊いたお米を何合くらい入れてたの?」
「いや、生米をザーって」
「黒焦げの原因はそれだ!!」
熱々に熱した油の中に生米をぶち込めば、それはもう何の躊躇も遠慮もなく燃えカスになるに決まっている。
炊いた米を使うのだと基本的なことを指摘するサモナーに、テスカトリポカは目を丸くした。
「きょうだいは物知りだね」
「物知りっていうか……レシピを検索するとかしなかったのかね、君」
苦々しい顔つきで小さくため息をつくサモナーに、しかしテスカトリポカは笑顔のまま、上機嫌にこう問いかけてきた。
「レシピって何だね?」
「……そこからか」
チャーハン作りに必要なのは、炊いた米、卵、油、それから塩こしょう。それくらいである。凝りたければもっと食材を足せばいいが、レシピのレの字も知らなかった相手にいきなり応用編をやらせるのは不味いだろう。
「炊きたてのご飯を少し冷ましたくらいがチャーハン作りには適してるって、シロウが言ってた」
二人でかがんで炊飯器のスイッチを押す。
「ほぉー? チョコレートでショゴスを作ったという彼の言い分を信じるのかね?」
ゴツン。
テスカトリポカの頭にサモナーの拳が振り下ろされた。それはそれ、これはこれ。自分たちよりもしっかりしている彼の言う事を聞いたほうが身のためというものである。
米を炊いている間に卵を溶くことにした。ボウルに卵を割り入れる。これを泡立て器でかき混ぜればいい。はい、とテスカトリポカに手渡したサモナーが「テスカの料理なんだからテスカがやりなよ」と言えば、お説ご尤もと言わんばかりにテスカトリポカが頷いた。
ガッシャア!! と勢いよく泡立て器が振るわれて、すべての卵液がボウルの外へと飛び散った。
「嘘だろお前……!」
「悲しいけどこれ、戦争なのだよね」
「戦争ではないよ」
仕切り直し。
力加減に気をつけて混ぜるよう言い聞かせ、サモナーは再びテスカトリポカに任せることにした。
これで駄目なら自分がやってやろう……と内心ハラハラしながら見守っていたが、そこは器用なもので、あっという間に適切な加減を覚えたのか、テスカトリポカによって卵液は大人しくかき混ぜられていた。ホッと一安心というところか。
続いて炊けたご飯を冷ます。パットに入れて粗熱を取る行程は、サモナーがやることにした。
中華鍋に少量の油を引いて、まずは卵を炒める。中華鍋から煙が出るほど熱したら、少しだけ火を弱めて溶き卵を入れるのだが……テスカトリポカは豪快に強火のまま溶き卵をぶち込み、菜箸でガチャガチャとかき回し、見事にボロボロなスクランブルエッグを完成させたのだった。
「……あとでご飯と混ぜるんだから、半熟で良かったんだよ」
「フハハ、見たまえよこれ! 焦げたが!」
焦げたが! じゃないんだよ。
ツッコみたい気持ちを抑えつつ、炊いた米を炒める段階に入ることにした。テスカトリポカにいちいちツッコんでいては、日が暮れる。
きれいにした中華鍋に少量の油を……と説明しているサモナーをよそに、タプタプと音を立てて油を注ぎ入れる不届き者がいる。
「おっ前、人の話を聞け!」
「油が多ければ派手に作れそうではないかね」
「派手に作るって何????」
中華鍋から大量の白い煙が上がる中、黒い煙である彼は対抗するかのように右目の部分を燻らせていた。炊いた米を投入。ジュアッと活きのいい音が上がる。しかし油が多い。捨てろよ少しは。そんなサモナーからのツッコミも何のその。テスカトリポカは油まみれの米を載せた中華鍋を、片腕で振るって豪快に混ぜ始めた。
引火。
熱した油がコンロの火を吸い寄せでもしたのか、鍋から火の手が上がった。
「うわあああー!」
「ふむ、フランベというやつだね!」
「チャーハンにフランベなんて概念ないよ!」
轟々と燃える米。もう駄目だ。今回も炭だ。
頭を抱えるサモナーが、遠い目をしていた。
そして出来上がったのがこちらになります。
燃え上がったときに余計な油分が飛んでちょうどよく出来上がった炒め飯に、スクランブルエッグを入れていい感じに混ぜ合わせた結果、少しぱさついてはいるが標準的なチャーハンが出来上がっていた。何のミラクルだ。
「いや……こういう成功体験を積ませちゃったら、今度もまたトンチンカンな作り方で取り組んじゃうだろうから……褒められたことでは……」
ブツブツと呟いてため息をつくサモナー。
そんなサモナーの横で、テスカトリポカは自身の顎に指をやり、やや不満げに悩んでいた。
「つまらんね」
「はあ?」
「火の手が上がったときは心躍ったがね」
「心躍らせてんじゃないよ」
「ふぅむ、もっとこう、着火したら火花を散らしそうな具合にならんものかね」
「火薬でも含んでるのか?」
「それだ! きょうだい! 次は火薬を混ぜてみるというのはどうだろうか!?」
「食べ物で遊ばない!!」
たかがチャーハンで物騒に大騒ぎする。
そうだ、ブート・ジョロキアを入れまいか!? というテスカトリポカの思いつきに、サモナーが渾身の拳骨を落としたのは、正直に言って無理もないことだと思うのだ。
「あなたの得意料理は何? 腕によりをかけた一品で恋人の心をゲット特集」と大々的に主張した雑誌のポスターが、シティモールで買い物をしていたサモナーの視界に偶然入り込んだのが、すべてのきっかけだった。
なんでも、その雑誌の付録にデニム生地のエプロンがついてくるとかで、付録の持ち去りを防ぐために厳重にビニールが巻き付けられていたため、中身を見ることは叶わなかったが、飯森チョウジ監修でピラフのレシピが載っているらしいことだけは分かった。
ふうん、と声を漏らしたサモナーが、学生寮に帰ってきたその日の夜。窓ガラスが粉々に砕け散り、呼んでいない客人がお邪魔します!! と飛び込んできたそのとき。サモナーはふと呟いた。
「テスカって得意料理とかある?」
「は?」
パラパラと桜吹雪のように散る窓ガラスを背景に、テスカトリポカが目を丸くしていた。
それから三日間、テスカトリポカの襲撃はなかった。不気味なほど何もなかった。こちらから連絡を入れようかと端末を手にしたサモナーが、いや、何と言えばいいんだ、この場合……と悩んでいる間も、テスカトリポカが新宿に現れたという話は一つもなく。平穏な環境の中、小テストが抜き打ちで行われてサモナーを悩ませたこと以外は、本当に何もない七二時間だったのだ。
アプリがメッセージの受信を知らせたのは、サモナーが下校している最中のことだった。
「おいで!!!!!!」
やたらエクスクラメーションマーク……ビックリマークのことであるが、それが多用されたメッセージが一言だけ、サモナーの端末に届いた。
発信者はテスカトリポカで、何がどうして「おいで!!!!!!」なのかの説明はない。サモナーが画面をタップして、返信した。
「練馬に?」
「うん」
すぐに返ってきたメッセージは簡潔で、尊大な物言いでやんちゃに暴れ散らかす最前線指揮官らしからぬ「うん」のみ。
なんの説明もないことには行きにくいんだけど、と躊躇するサモナーが、どう返そうか画面を見つめていると、新しいメッセージがポコンという音と共に表示された。
「はよ」
「どこで覚えた、その言葉遣い」
問いかけても返事はなく。
何がなんだか分からないが、行くしかなさそうだと判断したサモナーは、大きくため息をついた。
「やあ! よく来たね!!」
上機嫌な様子で学園軍獄の前に立つテスカトリポカが、サモナーを見つけて駆け寄ってくる。会いたかったよ、きょうだい! と熱烈なハグで歓迎されるのはいいが、いったい何の用なのだ。
中へどうぞと招かれて、サモナーは問いかけることすらできずに学園軍獄に足を踏み入れることとなった。そのまま見慣れぬ通路へと案内され、おいで、こっちだよ、というテスカトリポカを信じて進んでいくと、たどり着いたのは誰もいない厨房……らしき空間。換気扇だけが回っていた。
「君の問いに答えを出そうと奮闘してね」
テスカトリポカはズンズンと厨房の奥へと進んでいく。サモナーが慌ててついていくと、二台並んだ|三口《みつくち》のコンロの前で、ゴソゴソと何かを取り出しているところだった。
「問い? なんか問いかけたっけ?」
「テスカって得意料理とかある? と聞いてきたのは君だぞう?」
ああ、そんなことを聞いたなあ、たしか。
じゃあ、なんだ。まさか、テスカトリポカは、その問いかけに答えるために、厨房で料理の練習でもしていたというのか。
「得意料理ができたってこと?」
「いや、それがさっぱり!」
「は!?」
「何度練習しても米が炭化してしまってね!」
本格的な中華鍋を片手に、テスカトリポカが悩ましげな顔つきになっている。
じゃあ、なぜ呼んだ?
眉間にしわを寄せるサモナーの表情でだいたい察したらしい。テスカトリポカはニッコリと笑うと、胸を張って主張した。
「言い出しっぺは君なのだから、私の料理に付き合ってもらおうと思ってね!」
米を炭に変えし者が何か言っている。
「何を作るの、これは? チャーハン?」
「うむ! 簡単なものから始めてはどうかとタネトモ参謀にアドバイスをもらったのでね!」
それは妥当な提案であると言える。
タネトモもまさか炭が出来上がるだなんて思っていなかったのだろう。
「……油はどれくらい使ってたの?」
まず、基本的なことを知っているのかと尋ねると、テスカトリポカはうーむ、と少し悩んだあと、こてんと首を傾げて答えた。
「五〇ミリリットルほど?」
「米がビッチャビチャになるわ」
「そうなのかね? だいたい最後は黒焦げになるから、ビッチャビチャではなかったのだが」
「えー……炊いたお米を何合くらい入れてたの?」
「いや、生米をザーって」
「黒焦げの原因はそれだ!!」
熱々に熱した油の中に生米をぶち込めば、それはもう何の躊躇も遠慮もなく燃えカスになるに決まっている。
炊いた米を使うのだと基本的なことを指摘するサモナーに、テスカトリポカは目を丸くした。
「きょうだいは物知りだね」
「物知りっていうか……レシピを検索するとかしなかったのかね、君」
苦々しい顔つきで小さくため息をつくサモナーに、しかしテスカトリポカは笑顔のまま、上機嫌にこう問いかけてきた。
「レシピって何だね?」
「……そこからか」
チャーハン作りに必要なのは、炊いた米、卵、油、それから塩こしょう。それくらいである。凝りたければもっと食材を足せばいいが、レシピのレの字も知らなかった相手にいきなり応用編をやらせるのは不味いだろう。
「炊きたてのご飯を少し冷ましたくらいがチャーハン作りには適してるって、シロウが言ってた」
二人でかがんで炊飯器のスイッチを押す。
「ほぉー? チョコレートでショゴスを作ったという彼の言い分を信じるのかね?」
ゴツン。
テスカトリポカの頭にサモナーの拳が振り下ろされた。それはそれ、これはこれ。自分たちよりもしっかりしている彼の言う事を聞いたほうが身のためというものである。
米を炊いている間に卵を溶くことにした。ボウルに卵を割り入れる。これを泡立て器でかき混ぜればいい。はい、とテスカトリポカに手渡したサモナーが「テスカの料理なんだからテスカがやりなよ」と言えば、お説ご尤もと言わんばかりにテスカトリポカが頷いた。
ガッシャア!! と勢いよく泡立て器が振るわれて、すべての卵液がボウルの外へと飛び散った。
「嘘だろお前……!」
「悲しいけどこれ、戦争なのだよね」
「戦争ではないよ」
仕切り直し。
力加減に気をつけて混ぜるよう言い聞かせ、サモナーは再びテスカトリポカに任せることにした。
これで駄目なら自分がやってやろう……と内心ハラハラしながら見守っていたが、そこは器用なもので、あっという間に適切な加減を覚えたのか、テスカトリポカによって卵液は大人しくかき混ぜられていた。ホッと一安心というところか。
続いて炊けたご飯を冷ます。パットに入れて粗熱を取る行程は、サモナーがやることにした。
中華鍋に少量の油を引いて、まずは卵を炒める。中華鍋から煙が出るほど熱したら、少しだけ火を弱めて溶き卵を入れるのだが……テスカトリポカは豪快に強火のまま溶き卵をぶち込み、菜箸でガチャガチャとかき回し、見事にボロボロなスクランブルエッグを完成させたのだった。
「……あとでご飯と混ぜるんだから、半熟で良かったんだよ」
「フハハ、見たまえよこれ! 焦げたが!」
焦げたが! じゃないんだよ。
ツッコみたい気持ちを抑えつつ、炊いた米を炒める段階に入ることにした。テスカトリポカにいちいちツッコんでいては、日が暮れる。
きれいにした中華鍋に少量の油を……と説明しているサモナーをよそに、タプタプと音を立てて油を注ぎ入れる不届き者がいる。
「おっ前、人の話を聞け!」
「油が多ければ派手に作れそうではないかね」
「派手に作るって何????」
中華鍋から大量の白い煙が上がる中、黒い煙である彼は対抗するかのように右目の部分を燻らせていた。炊いた米を投入。ジュアッと活きのいい音が上がる。しかし油が多い。捨てろよ少しは。そんなサモナーからのツッコミも何のその。テスカトリポカは油まみれの米を載せた中華鍋を、片腕で振るって豪快に混ぜ始めた。
引火。
熱した油がコンロの火を吸い寄せでもしたのか、鍋から火の手が上がった。
「うわあああー!」
「ふむ、フランベというやつだね!」
「チャーハンにフランベなんて概念ないよ!」
轟々と燃える米。もう駄目だ。今回も炭だ。
頭を抱えるサモナーが、遠い目をしていた。
そして出来上がったのがこちらになります。
燃え上がったときに余計な油分が飛んでちょうどよく出来上がった炒め飯に、スクランブルエッグを入れていい感じに混ぜ合わせた結果、少しぱさついてはいるが標準的なチャーハンが出来上がっていた。何のミラクルだ。
「いや……こういう成功体験を積ませちゃったら、今度もまたトンチンカンな作り方で取り組んじゃうだろうから……褒められたことでは……」
ブツブツと呟いてため息をつくサモナー。
そんなサモナーの横で、テスカトリポカは自身の顎に指をやり、やや不満げに悩んでいた。
「つまらんね」
「はあ?」
「火の手が上がったときは心躍ったがね」
「心躍らせてんじゃないよ」
「ふぅむ、もっとこう、着火したら火花を散らしそうな具合にならんものかね」
「火薬でも含んでるのか?」
「それだ! きょうだい! 次は火薬を混ぜてみるというのはどうだろうか!?」
「食べ物で遊ばない!!」
たかがチャーハンで物騒に大騒ぎする。
そうだ、ブート・ジョロキアを入れまいか!? というテスカトリポカの思いつきに、サモナーが渾身の拳骨を落としたのは、正直に言って無理もないことだと思うのだ。
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