夜食を食べる2編
寝る前のちょっとした
時刻は午後二十二時を回っていた。
サモナーは高校生である。普段はこのくらいか、それよりも一時間遅いくらいに就寝していることが多かった。
今日もさっさとベッドに入ろうと、相棒であるサロモンくんの頭をひと撫でし、おやすみ、と言い合った。……のだが。
「主様ぁ」
甘えたような声がスマホの方から聞こえてきて
「……起きてますかぁ?」
その声の誘惑に
「なーんかぁ、ちょぉっと、お腹空いちゃったりなんか、してません?」
抗えなかった。
この時間、食堂は空である。
誰も居ないし、何も出てこない。それは分かっていた。しかし、サモナーとサロモンくんの腹は、少しの空腹を訴えてくるものだから、つい、忍び込んでしまったのだ。
お湯を沸かしてカップ麺を食べようかと、サモナーとサロモンくんはコソコソ話し合っていた。
食堂の扉を開ける。夜食を食べたくなった者たちのために、扉の鍵はかけないのが神宿学園のお気遣いである。
とはいえ、あまり遅い時間に食堂へ来れば、教員に注意されてしまうこともあるのだが。
サモナーは暗い食堂へと足を踏み入れた。
電気はつけない。どこに何があるかはだいたい把握しているから、明かりの必要があまりない。
そのまま進んで、カップ麺が置かれている棚へと歩み寄っていく。
ガサッ、と何かの音がした。
「ひゃっ! 主様ぁ! お化けですか!?」
サロモンくんが悲鳴を上げる。サモナーが背中にサロモンくんを隠し、音が下方向へ目を向けた。
大きな体を持つ何者かが、闇に溶け込むようにして、立っていた。
「……あ? 相棒か?」
「……ケンゴ?」
同じ学年、同じクラスの高伏ケンゴだ。
相棒と呼ぶ仲だけあってか、夜に腹を空かせるタイミングまで被っていたらしい。
お化けかと思いましたぁ、というサロモンくんの声はケンゴには聞こえない。サモナーは可愛い執事の恨み節に苦笑いをこぼし、ケンゴに近づく。
「夜食?」
「おう、相棒もか? 何もねえけどよ」
「カップ麺なら棚にあるよ」
「カップ麺ねえ……握り飯が食いてえんだよな」
炊飯器を開ければ中身は空だ。それもそうだろう、神宿学園の生徒と教師全員に振る舞われるのだ。その日のうちに炊飯器の中身は綺麗さっぱりなくなるというものだ。
コンビニに買いに行っても良かったが、せっかく学生寮の食堂にいるのだから、ここで済ませたい気持ちもある。どうするかな、と考えて、サモナーが手を打った。
「真空パックのご飯ならあるんじゃないかな?」
「レンジであっためるやつか!」
カップ麺の棚の隣を探す。……あった。
サモナーとケンゴは音もなくハイタッチし、真空パックの白米をレンジに放り込んだ。
温まった米を、四苦八苦しながら握る。
熱いのもそうだが、普通の白米よりややおこわ飯に近い硬さなので、もちもちと手にくっつく。
なんとか丸く形成できたそれに、適当に見繕ったごま塩をふりかけて、皿に乗せた。
「相棒、変な食い方するんだな? 普通の握り飯の隣に小せえ握り飯作ってやがる」
「こうすると美味しいんだ」
「へえ……? なんかのおまじないか?」
ケンゴが自分の分を頬張って、腹が減ったら米だよなぁ、などと言うので、サモナーは笑って頷いた。カップ麺は、また後で食べることにする。
ケンゴが食べ終わったのを見届け、サモナーは口を開く。
「洗い物は自分がしておくよ。ケンゴは先に部屋に戻っていいから」
「いいのかよ? わりぃ、相棒! 頼んだ!」
ケンゴは素直に頷いて、食堂を出て行った。
それを見送って、サモナーは視線を横に向けた。隣で浮いている、小さな執事を見る。
「食べよっか、サロモンくん」
「わぁい!」
バッチグーなお味ですぅ! と、口の周りに米粒をつけながら評価するサロモンくんに、サモナーは笑っていた。一粒一粒指で摘んで取ってやると、そのお米粒も食べちゃいます! と、あーん、と口を開けるサロモンくんである。
食べさせてやると、うふふ、と楽しそうに笑うので、サモナーもさらに優しい笑みになった。
「主様ぁ、今度は冷凍のたこ焼きを買ってきて、温めて食べましょうね! アッツアツの、ハッフハフを、あーんって!」
「いいよ。誰にも見つからないように、こっそり」
「はい! こっそりです!」
食べきったあとは皿を洗う。そうして布巾で水を拭き取り、元あった場所へしまう。
音を立てないように食堂の扉を閉めて、二人で静かに自室へと戻っていった。
小腹も満たした事だし、いい夢が見られそうだ。
時刻は午後二十二時を回っていた。
サモナーは高校生である。普段はこのくらいか、それよりも一時間遅いくらいに就寝していることが多かった。
今日もさっさとベッドに入ろうと、相棒であるサロモンくんの頭をひと撫でし、おやすみ、と言い合った。……のだが。
「主様ぁ」
甘えたような声がスマホの方から聞こえてきて
「……起きてますかぁ?」
その声の誘惑に
「なーんかぁ、ちょぉっと、お腹空いちゃったりなんか、してません?」
抗えなかった。
この時間、食堂は空である。
誰も居ないし、何も出てこない。それは分かっていた。しかし、サモナーとサロモンくんの腹は、少しの空腹を訴えてくるものだから、つい、忍び込んでしまったのだ。
お湯を沸かしてカップ麺を食べようかと、サモナーとサロモンくんはコソコソ話し合っていた。
食堂の扉を開ける。夜食を食べたくなった者たちのために、扉の鍵はかけないのが神宿学園のお気遣いである。
とはいえ、あまり遅い時間に食堂へ来れば、教員に注意されてしまうこともあるのだが。
サモナーは暗い食堂へと足を踏み入れた。
電気はつけない。どこに何があるかはだいたい把握しているから、明かりの必要があまりない。
そのまま進んで、カップ麺が置かれている棚へと歩み寄っていく。
ガサッ、と何かの音がした。
「ひゃっ! 主様ぁ! お化けですか!?」
サロモンくんが悲鳴を上げる。サモナーが背中にサロモンくんを隠し、音が下方向へ目を向けた。
大きな体を持つ何者かが、闇に溶け込むようにして、立っていた。
「……あ? 相棒か?」
「……ケンゴ?」
同じ学年、同じクラスの高伏ケンゴだ。
相棒と呼ぶ仲だけあってか、夜に腹を空かせるタイミングまで被っていたらしい。
お化けかと思いましたぁ、というサロモンくんの声はケンゴには聞こえない。サモナーは可愛い執事の恨み節に苦笑いをこぼし、ケンゴに近づく。
「夜食?」
「おう、相棒もか? 何もねえけどよ」
「カップ麺なら棚にあるよ」
「カップ麺ねえ……握り飯が食いてえんだよな」
炊飯器を開ければ中身は空だ。それもそうだろう、神宿学園の生徒と教師全員に振る舞われるのだ。その日のうちに炊飯器の中身は綺麗さっぱりなくなるというものだ。
コンビニに買いに行っても良かったが、せっかく学生寮の食堂にいるのだから、ここで済ませたい気持ちもある。どうするかな、と考えて、サモナーが手を打った。
「真空パックのご飯ならあるんじゃないかな?」
「レンジであっためるやつか!」
カップ麺の棚の隣を探す。……あった。
サモナーとケンゴは音もなくハイタッチし、真空パックの白米をレンジに放り込んだ。
温まった米を、四苦八苦しながら握る。
熱いのもそうだが、普通の白米よりややおこわ飯に近い硬さなので、もちもちと手にくっつく。
なんとか丸く形成できたそれに、適当に見繕ったごま塩をふりかけて、皿に乗せた。
「相棒、変な食い方するんだな? 普通の握り飯の隣に小せえ握り飯作ってやがる」
「こうすると美味しいんだ」
「へえ……? なんかのおまじないか?」
ケンゴが自分の分を頬張って、腹が減ったら米だよなぁ、などと言うので、サモナーは笑って頷いた。カップ麺は、また後で食べることにする。
ケンゴが食べ終わったのを見届け、サモナーは口を開く。
「洗い物は自分がしておくよ。ケンゴは先に部屋に戻っていいから」
「いいのかよ? わりぃ、相棒! 頼んだ!」
ケンゴは素直に頷いて、食堂を出て行った。
それを見送って、サモナーは視線を横に向けた。隣で浮いている、小さな執事を見る。
「食べよっか、サロモンくん」
「わぁい!」
バッチグーなお味ですぅ! と、口の周りに米粒をつけながら評価するサロモンくんに、サモナーは笑っていた。一粒一粒指で摘んで取ってやると、そのお米粒も食べちゃいます! と、あーん、と口を開けるサロモンくんである。
食べさせてやると、うふふ、と楽しそうに笑うので、サモナーもさらに優しい笑みになった。
「主様ぁ、今度は冷凍のたこ焼きを買ってきて、温めて食べましょうね! アッツアツの、ハッフハフを、あーんって!」
「いいよ。誰にも見つからないように、こっそり」
「はい! こっそりです!」
食べきったあとは皿を洗う。そうして布巾で水を拭き取り、元あった場所へしまう。
音を立てないように食堂の扉を閉めて、二人で静かに自室へと戻っていった。
小腹も満たした事だし、いい夢が見られそうだ。
1/2ページ
