夏の小さな恋物語
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とある夜のこと。
夕餉も済ませ、幼い名無しさんだけ先に寝たはずだったのが。
「……宗次郎。」
「あれ?名無しさん?」
自室で少し書き物をしてると、躊躇いがちに戸を叩かれたので出向いてみると、枕を抱き締めた名無しさんが悲しそうな顔をしていた。
「目が覚めちゃって、眠れないの…どうしよう。」
「ああ、そうなんですねー…」
なるほど。
──ちりん、と風に煽られ音を立てた風鈴の音色。
「お部屋、暑くはなかったですか?」
「うん…だいじょうぶ。」
ぎゅうっと抱える枕を握りしめる小さな手。
「…今は眠たい?」
「ううん…眠くない。」
「そっか。じゃあ…」
まだ少し強張った顔の彼女に優しく微笑みかけた。
「ゆっくり…一緒にお話しませんか?僕もちょうど休みたいなぁと思ってたんで。」
「うん…!」
安心したように表情を緩めてぎゅっと足下に抱き付く名無しさん。
頭を優しく撫でてゆっくりしゃがみ込むと、少し疲れたような瞳と目が合った。
「大丈夫です。今日だけ、ちょっとだけ…夜を楽しみましょう?」
「…いいの…?早く寝なさいって怒らない…?」
「名無しさんはいつもいい子なので、そのご褒美です♪」
「…えへへ、そっかぁ♪」
「それに…僕が名無しさんを怒ったこと、ありましたっけ?」
「ない…」
「そうでしょ?名無しさんは元気で優しい、とってもいい子ですから。
…だから今日だけ。特別ですよ?」
瞳にきらきらとした輝きを取り戻す名無しさん。
肩にそっと手を降ろした。
「…僕と一緒でも…怖い?」
「ううん…宗次郎と一緒にいれるの、嬉しい!」
少し綻んだ笑顔を見せて、ぎゅっと抱きついてきた名無しさん。
落ち着かせるようにその小さな体をそっと抱き締めた。
「…不安でしたよね、でも僕がついてますから。」
「うん、ありがと、宗次郎…」
優しく優しく、ぽんぽん、と背中に手を置いた。
あなたの不安がなくなるまで、安らかで優しい夢をみるまで、いつまでも一緒にいますから──