〈第一章〉出逢い編
名前変換
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「着きましたよ。僕の一押しのお茶屋さん。」
宗次郎に連れられて辿り着いたのは一軒の茶屋。
「…着きましたも何も、茶屋を目指してたとか初めて聞いたんだけど。」
「すみませーん、焙じ茶と桜餅ください♪…あ痛っ」
「無視なんていい度胸ね。」
「あ、もしかして桜餅ダメでした?」
(この子もう嫌っ。)
「…本当、調子狂うわね、あんたといると。」
隣に並び御茶菓子を待つうち、いくらか落ち着いたのか自然と言葉が出た。
「?どうしてですか?蛍さんの調子で振る舞えばいいんですよ。」
「あなたが妨害するんでしょ。」
「?」
「いや、もういい。」
桜餅を手に取り、味わう。
「…おいしいわね、これ。」
「そうでしょう?なんだかんだ言って蛍さん、甘いもの好きなんじゃないですか。」
「そうみたいね。」
宗次郎はふふ、と笑みを漏らしながら、蛍の横顔を見つめていた。
「…何?」
「いえ…蛍さんって不思議だなぁって思って。」
「その言葉、そっくりそのままあなたに返すわ。」
「…最初に蛍さんとお会いした時、あなたは僕と同じ人間だと思っていました。同じくらいの強さだから。
それに、普通の剣客が持っている気配というものもない。」
蛍は動きを止めた。
思わず彼の方に目を向ける。
「…ただ、違う気がするのは…蛍さんは笑わない。常に何かと戦っているような気がします。覚悟と言うんでしょうか。」
「…」
「僕と正反対なんだけど、同じ強さを持ってるなんて。不思議だなぁと思うんですよね。」
「…不思議ね。私もあなたと同じこと考えてた。」
「あ、そうだったんですか。」
にこり、と笑いかけられた。
「蛍さん、いずれ、また手合わせお願いしますね。」
「ええ。お願いするわ。」
そう言って、蛍は僅かに笑みを浮かべた。
一瞬のその表情を宗次郎は見逃さなかった。
(笑顔ってほどじゃないんだけど…でも…これは…)
「…蛍さん。」
「ん?」
「蛍さん、笑顔の方が似合うんじゃないかなぁ。」
「は?」
「すごく綺麗ですよ。」
「…意味がわからないんだけど。」
「あ、残念だなぁ。無愛想に戻っちゃった…」
「悪かったわね…」
やっぱり宗次郎といると調子が乱れると感じた蛍であった。
「…そろそろ帰りましょうか。」
宗次郎の言葉を合図に頷く。すると。
「…はい。蛍さん。」
「…?何この手?」
目の前に差し延べられた手。意図がわからず、尋ねると。
「繋ぎましょ「嫌よ」」
………
「…えっ、どうして駄目なんですか?」
目を丸くする宗次郎。
「なんで驚くわけ?こっちが驚きよ。」
「……」
「……」
「ふふっ」
「何よ?」
訝しむ蛍。
宗次郎はあっけらかんと答えた。
「あなたは一筋縄ではいかないようですね。」
「…何よそれ?」
「やだなぁ、そんなにむすっとしないでくださいよ♪」
「してないわよ。…変な子だって思っただけ。」
…まったく、笑顔ばかりで読めない。本日何度目かしら、と思いながら蛍は溜め息を吐いた。
(いじわる言わないでくださいよー。)
(率直に言っただけよ。)
(ふーん。案外、蛍さんて素直な性格してるんですね♪)
(…それ以上余計なこと言ったら斬るからね。)