四季彩り折々
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「ねえ、宗次郎ってどんな子供だったの?」
宗次郎の部屋で寛ぎながら。何の気なしに名無しはそう声を掛けた。
頬杖を突きながら反対の手で金平糖を摘まみ、何度も口に運んでいる。
「なんです?何の前触れもなく。」
「どんな風だったのかなってふと気になって。」
無邪気な目を覗かせている彼女。その表情は期待に満ち溢れていて。
そのような名無しを見つめ返しながら。
「…僕にそんなこと聞いてきた人初めてですよ。」
「えっ、宗次郎それめっちゃ嫌われてるじゃん!大丈夫?ア、ちょ、金平糖投げんといて、地味に痛い!」
暫くして名無しは散らばった金平糖を拾い上げながら、ぽつりと呟いた。
「まあ志々雄さんの懐刀、瀬田様には畏れ多くて皆聞けないのかも…まあ私は宗次郎のことクソガキだと思ってるから聞いちゃうけどね!」
「そう言う名無しさんは弱虫世間知らずの文無しですよね。」
「あっ…文無しは酷い!違うの!今月だけ!志々雄さんの一張羅に珈琲溢しちゃったから今月だけお小遣い貰えないだけで!」
「ただの馬鹿でしょ。」
「そうだなぁ、じゃあ当ててあげよう。」
「名無しさんに当てられるわけないですよ。」
* * * * *
「宗次郎、食糧と包帯を調達してこい。」
「はい、志々雄さん。」
それはまだ幼い頃。志々雄さんと二人であちこちを旅していた時のことだった。
志々雄さんの見た目では一緒に街を行くことはなかなか叶わなかったから。主に僕が街に出向き、物品の調達を行っていた。
ある街に趣いた時だけど。
「あのっ!ねえそこの子っ!」
「???」
──突然、ものすごい勢いで接して来た女の子。
思わず面食らっていると、息を切らしながら尋ねられる。
「私のお財布見なかった…!?どっかに落としちゃって…!」
「えっと、お財布…?見てないよ?」
「!そっかぁ…ありがとう…」
明らかにがっくりと肩を落としたものの、その子はまた走り出し立ち去っていった。
(大丈夫かな…?)
「…あれ?」
立ち去り際にぽさっ、とその子から落ちたもの。咄嗟に拾って追いかけて。
追い付いて声をかける。
「あの、待って。」
「…えっ!?さっきの子!?え、足速くない!?」
「これ、さっき落としたんだけど。お財布ってこれ…?」
差し出すと、その子はぱあっと目を瞬かせた。
「あなたが見つけてくれたの!?」
「ええと、君から落ちたよ…?」
「ありがとうっ!」
にこにこと満面の笑みで微笑まれて。
(まあ、いっか。)
「あ、もしよかったら…これちょっと分けてあげるね!」
「?」
「手出して。」
誘われるがままに手のひらを差し出すと。
袖口から出した包みを開いて、ぽろぽろと小さな粒が幾つか落ちていく。
「?これは?」
「金平糖!綺麗でしょ?」
楽しそうに笑う女の子に釣られて、思わず僕も笑顔になる。
「これはえーっと…?」
「あれ?知らないの?お砂糖のお菓子だよ。」
「へえ、お菓子なんだ。これ。」
その子がひとつまみ口に入れたから、僕も一つ摘まんで口にする。
「…おいしいね。」
「そうでしょ!?金平糖っていうんだよ、金、平、糖。」
「もう覚えたよ、大丈夫。」
「そっかぁ…あ!私こんなことしてる場合じゃなかったんだ!」
はっとした顔をして、また女の子は慌て出す。
「…ちゃんとお財布、手に持ってた方がいいと思うよ?」
「あっ、そうだね!見つけてくれてありがとうね!」
「ううん。」
「あ、これ、金平糖もう全部あげる!」
「え、いいの?君のは?」
「いいのいいの!お礼だし、あなた美味しそうに食べてたし!それじゃあ、ありがとうね!」
こちらに手を振ってその子は立ち去っていった。
手のひらに残された紙の包み。
もう一つ摘まんでみた。
とても甘かった。
* * * * *
「どうしたの?宗次郎、ぼーってして。」
「…別に?」
「いやいや明らかぼーってしてたから。」
じっとこちらを見つめる名無しさん。
小皿の上に拾い集めた金平糖を一つ摘まんで口に入れる名無しさんを見ながら。
「ん?宗次郎どしたの?」
「なんでもありませんよ。」
「嘘だー。あ、私に惚れ直した?」
「うるさいですよ。」
「ちょ、だから金平糖投げ、いった!!!」
いつかの物語。