四季彩り折々
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「宗次郎。」
「はい?」
呼び止められ振り向く宗次郎に、名無しは満面の笑顔で両手を差し伸べた。
「んっ。」
「は?」
宗次郎は思わず目を見開いた。
けれど、さらに名無しはぴょんぴょん、と体を弾ませて首を傾けて言った。
「だから……ほれ。」
「はあ?」
「今日、あれじゃん。ホワイトデー!」
「だから?」
宗次郎の言葉に名無しは残念そうな表情を浮かべる。
「えー…?何かくれないの?お返し…」
「え?だって名無しさんバレンタインデー何もくれなかったじゃないですか。」
「……あ、あれ?そうだっけ
…あ。そうだったわ。」
目を泳がせる名無し。
「酷い人ですね。自分は欲しがるだなんて。」
「たしかに…ですよね。」
何とも言えず俯いた名無しの顔を宗次郎はそっと覗き込み、そして笑いかけた。
涼しげだけれど、人懐っこい笑みにその意図を汲みきれず、名無しは何度か瞬きして目前の宗次郎を見つめる。
「へ…?」
「──なんてね。」
にこにこと微笑みかけられ。
「はい、名無しさん。」
小さな包みを差し出された。
「え?これは…?」
「たしかに名無しさん…忘れてたみたいですけど、最近志々雄さんのおつかいしたり、先月はなんだか忙しそうで色々頑張ってたみたいだし。」
「え…」
「それに“もらった”、“もらわなかった”じゃなくて…名無しさんを大切に思ってるからその印です。受け取ってください。」
えへへ、と少し照れながらはにかんだ宗次郎。
かあっと頬に熱が集まっていく。けれど、名無しはどのような顔をすればいいかわからなかった。
「…なんか。」
「はい。」
「すごく申し訳ないんだけど…」
「え、そんな言葉知ってたんですか。」
「むかつくなぁ。」
一目睨んで、すぐまた悩ましげな表情に戻った名無しを宗次郎はあたたかな瞳で見つめていた。
やがて名無しはそろそろと、宗次郎の顔を見つめ直す。
「いいのかな…?もらってしまって…」
「はい、どうぞ。」
「……ありがとうございます。」
「…ふふっ、何かしこまってるんですか。」
「何よ、そんなにおかしい?」
「ええ、まあ。」
名無しの手に渡った可愛らしい包み。
徐々に顔を綻ばせていく名無しを宗次郎は満足げに眺めていたのだけれど。
「…あのね。」
──何か思い至ったように声をかけてきた名無し。
「はい?」
「……お返しじゃなくて。私もね、宗次郎のこと大事だから…
何か欲しいものない?なんでもいいよ?」
じっと見つめられれば。考えないわけにはいかない。
「そうですねー…」
どう、したらいいか。
目線を外しゆっくり考えてみたけど。
「……」
「…じゃあ。
──はい、これで。」
「えっ?」
「…いえ、なんかしてみたくなっちゃいまして。」
そっと頭に手を乗せられ、優しくなぞられる。
心なしか楽しそうにしている宗次郎。
「…触りたかったの?」
「……いいじゃないですか、別に。」
照れ隠しなのか、幾度となく被さる手のひら。
それだけなのだけれど、名無しはどこか心地よかった。
「もちろん、いいけど…ちょっと、くすぐったい…」
「照れてます?あ、寝癖発見。」
「発見しなくていい。…無駄にドキドキする。」
赤くなりながら漏らした一言。
目ざとく宗次郎は反応し、名無しに顔を近付ける。
──目と、鼻の先。
「本当ですか?それは本望ですね。」
彼はくすっと微笑んだ。
Lovers
(“僕の”って実感してみたかった。)