四季彩り折々
名前変換
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
──満面の笑みを浮かべた名無しさん。
「宗次郎、ありがとう!」
「…どういたしまして。」
差し出したそれをまっすぐ受け取ってくれた。
──正直、その光景を目にしただけで…
(それだけでホッとしたかな…)
そして大方報われた気になるのだけれども。当の名無しさんにそんな心の内が知られるのは、やはり少し気恥ずかしくて。
「…なぁに-?なんかまた意地張ってるでしょ?」
…思ったそばからめざといなぁ。
「自惚れないでくださいね。名無しさんにそんな労力かける趣味はないですよ。」
「ほら、それが意地ってものじゃない。」
「あれ。伝わってないですね?」
「いつもみたいにニコニコしてるけど、なんか違う気がしたんだもん。」
ニヤニヤしながら得意気にそう言う名無しさん。
──名無しさんといると出て来てしまう意地…もはや癖なんだろうな。そう思わざるを得ない。
(…でも、たまには。)
「でも所詮は…口に出してみるだけですよ?」
口をついて出た言葉に呆気に取られた顔をする彼女。
「えっ、なにそれ。何かの当てつけ?」
「じゃあ、そう思っててください。」
“本当は口に出すほど嫌には思っていないんですけどね。むしろ”
──そんなこと言えるのは…僕も貴女ももう少し大人になってからかな。
「てかさー。宗次郎。」
「なんです。」
「これ包装…ハート柄めっちゃかわいいんですけど…」
「!」
「あ!ハート柄からハート型の箱出て来た!」
「…一々騒がないと空けられないんですか。」
「いや、なんか意外性があって…」
──ええ、わざわざそういうのにしたんですよ。
そういうかわいらしいものを選ぶのって、それこそあからさまに名無しさんのこと意識してるみたいで、恥ずかしかったですけど…
(…でも、かわいい方が喜んでくれるのかなって思って。)
「…名無しさんの好みでしょ?」
「うん!すっごく好み!!」
「そうでしたか…」
「いやぁ…本当にかわいい!」
勢いよく頷く名無しさん。…喜んでくれるのは嬉しいんですけど、なんかこう…どんな顔をすればいいのかわからない。どう反応したらいいのか…
(ああもう、なんだか居たたまれない…)
「…あの、いつまでもしつこく嬲らないでください。」
「え!?」
何のこと?みたいな、驚いたような声を上げられたけど…
「仕方ないじゃないですか。余裕ないんですから…」
「…そっか。これ、頑張って選んでくれたんだね?」
思いがけず図星を刺されて、一瞬目を見開いていた。
「…なんかすごく癪だなあ。」
「…なんで不機嫌になる??」
「……名無しさん相手に何を正直に喋ってしまってるんだか…まあ、そういうことですけど。」
「…いいと思う、よ。私は…嬉しい気持ちが一番大きいかな。」
えへへ、と声を弾ませながら、こちらを見つめる。
「…ありがとう、宗次郎。…すごく嬉しかった。」
照れながら微笑んだ彼女。
思わず僕も笑顔に戻っていた。
ハートを装って
(慣れない愛情表現)
『わあ、クッキーだ!しかもこれもハート型!』
『一々騒がしいなぁ。黙って受け取ってください。』