四季彩り折々

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※二人が付き合ってからのお話です。



「ねぇ、宗次郎。」

「はい?」

「理想のお嫁さんってどんな感じ?」



「…え、いきなり何言ってるんですか?頭打ちました?」


唐突な問いに宗次郎はやや呆れ顔を浮かべたのだけれど。



「…うふふ。」

「?」

「…なんか、ちょっと宗次郎のこと読めるようになってきたかも…!」

「…は?」



名無しは楽しそうに笑い、じっと宗次郎の目を見据えた。



「なんです?」

「…そうだ、いいこと考えた。」

「いいこと?」



名無しはいたずらっぽい笑み浮かべた。そしてそのまま、にじみ寄るように宗次郎に近付いていく。



「は?なんですか。」

「うふふ。」

名無しさん?」



分けが分からない、という風に声を出す宗次郎は、名無しが近付くにつれ同じ歩幅で後ろ下がりに進んでいくのであったが。やがて──



どんっ。



「…何のつもりですか?」

「何って…宗次郎に答えさせたいから?」

「今日はやけに食って掛かりますね?」



宗次郎の頭の横に両腕を突いて、宗次郎の体を追い詰めた名無し

壁を背にし、名無しに行く手を阻まれながらも。宗次郎は余裕のある笑みで返した。



「ふうん…」

「ほら、吐きなさいよう。吐くまで引かないから。」

「じゃあ聞くんですけど。」

「なあに?」

「人に物を尋ねるのなら自分の見解を先に述べるべきじゃないですか?」


「…というと?」



追い詰められているはずなのに、目の前の宗次郎は少しも動揺していない。
──そうなれば、ここは一つ一つ落ち着いて物事を片付けていき、宗次郎の態勢を崩しにかかるべきだ。

そう思い、首を傾げて聴いてみた。すると。



名無しさんの理想の旦那さんって?」




「…ふっ、そんな簡単なこと、」

「あ、簡単なんですね?じゃあ答えてみてくださいよ。僕も続けて言いますから。」

「……」

「あれ?答えないんですか?」

「その…」

「答えられないとでも?」


「う、うるさいなぁ…!答えるって!変に煽るからっ…」



暫し物憂げな、切羽詰まったような表情を覗かせていた名無し。やがてぶつぶつと小声を漏らしながら目を伏せる。

部屋の片隅に追いやられたまま、そのままの体勢を維持しながら、宗次郎は見守るようにそんな彼女の顔を見下ろしていたのだが。




「…宗次郎。」


「はい。」


「……そういうことで。」



「は?答えになってないんですけど。」




少々、名無しの顔が赤くなった気がしたものの。腕を伸ばしたままの彼女の肩に思わず手を置いた。



「意味がわかりません。」

「…それでいい。」

「……あ。」

「!」



彼女の答え。思い当たった可能性に声を小さく漏らすと、慌てたように取り乱す。



「い、いちいち言わなくていいから!」

「え?せっかくわかったのに?」

「………」

「…知られるのはいけませんか?」



そっと髪を撫でると。噛み締めた唇がそっと開いていく。




「…宗次郎がいいって言ったつもり、です…」


「あ…やはりそうでしたか。」
 


次第に力の抜けていく腕はやがて宗次郎の着物の裾を摘まんだ。まるで縋りつくように。

優しく頭を撫でながら、宗次郎は優しい目を浮かべる。



「すみません、意味がわからないなんて言ってしまって…」

「…いや、別に、そんなのいいんだけど…」

「…じゃあそう受け取っておきます。」



そうして暫く宗次郎は優しく名無しを見つめていたのだったが。





「!」

名無しさん。」



刹那のことに名無しは目を瞬かせる。

そっと優しく体を守られながら…彼女の体の位置は宗次郎と反転させられ、いつの間にか壁を背にしていた。
目の前に佇む宗次郎はにこやかに微笑みながら、名無しを見下ろす。



「じゃ、お返しに。言うつもりなかったですけど。」

「なかったんだ…」

「はい、いちいち食って掛からない。」

「はあい。」



渋々と口を閉ざした名無しだったが、やがて緊張じみた表情へと変わっていく。




「僕の答え…お分かりでしょうけど。奇遇ですけど名無しさんと同じで…」



──静かに笑みを讃えて宗次郎は名無しの耳元に唇を寄せた。







甘やかな反逆



(…そういえば、僕のこと読めるようになってきたって言ってましたけど。)

(あ。)

(どういうことですか?)


(宗次郎って言いにくいことがあると…言わなくて済むように意地悪なこと言って私の気を逸らせようとしてるでしょ?)


(………)

(あ、図星だねこりゃ!)


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