彼に食って掛かられる
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今日という今日は。
宗次郎は名無しの部屋に向かい、襖を開ける前に深呼吸した。
──今日も一日が始まる。朝の闘いが、始まる。
特に張り切っているわけではない、むしろ憂鬱に思うくらいだったが、宗次郎は息を整えて、いつもの笑顔を纏った。
すぱんっ、と勢いよく開く。
「名無しさん。朝ですよ。一日くらい朝からちゃんと起きてくだ…」
「ふはははは!」
「!?」
「私なら、もう起きてるんだよーん!」
ばっと飛び出て満面の笑みで現れた名無し。
──そこには、もぬけの殻の布団があるどころか。布団の影すらなかった。
「…は?」
「ふへへへ…お探しのモノはこれかね!?」
すらり、と華麗な手つきで押し入れの襖を開けると、そこには綺麗に畳まれ置かれた敷き布団と掛け布団と枕とがあった。
「……」
「やったー!出し抜いたった、宗次郎出し抜いたった!いやぁ、たまには早起きしてみるものだねぇ!」
狂喜乱舞する名無しであったが、頭に宗次郎の拳骨が落ちるのであった。
「いっつ!!」
「起きてるなら馬鹿なことしてないで仕事に取り掛かってください。」
* * * * *
「……名無しさん。」
「…ん?」
黙々と机に向かい作業を進めている名無し。物珍しさに宗次郎は声を掛けざるを得なかった。
「今日どうかしたんですか?」
「え?私のこと気になるん??」
「何でもありません。えらい真面目に仕事してるなぁなんて僕の思い過ごしでした。」
「ごめんごめん。実はね…」
えへ、と嬉しそうに笑みを漏らしながら名無しは告げた。
「お昼過ぎにお友達と会う約束してて♪あ、志々雄さんには許可貰ってるの!だから午前中に頑張って仕事終わらせちゃおうって。」
「そうですか。」
(そっか、それで…。なんだかんだ、起きた後しばらく部屋で仕事してたみたいなんですよね。熱でもあるのかと思った…)
「お昼から私いなくてごめんね!寂しいだろうからこれ私の代わりに!」
「(一瞬でも憂慮した僕が馬鹿でした。)いや迷惑なんですけど。」
「私のお気に入りのぬいぐるみ!すっごく可愛いでしょ!ここに置いていくからね!」
「いや迷惑なんですけど。ほんと。」
くまのぬいぐるみを手渡されて宗次郎は溜め息をついた。
「ごめんね!仕事はちゃんと終わらせて行くからね!」
「…それなら別にいいんですけど…」
(お友達ってどんな人なんだろう…いや、僕の知ったことではないか。)
「それじゃあ、宗次郎。行ってきまーす♪」
「はい、お気を付けて。」
「え!?心配してくれてるの?」
「これ以上馬鹿になって帰ってこないでくれ、という意味です。」
「これ以上馬鹿になんてなりませんよーう!行ってきまーす!」
「はぁい。」
手を振り、待ちきれないという様子で立ち去る名無し。
(天真爛漫な人だなぁ、悪い意味でですけど。)
見つめながらそんなことを思った。
鎌「宗ちゃん。なんだかんだ行ってほしくなさそうね?」
背後から鎌足の声。
怪訝そうに眉を顰めたけれど、それは一瞬のことだった。笑みを浮かべて宗次郎は振り返る。
宗「やだなぁ、なんで僕がそんなこと思わなくちゃいけないんですか。厄介払いができたなぁとは思いましたけど。」
張「お友達、って言うてたみたいやけど。」
宗「なんだ張さんも。聞いてたんですか?」
張「きょうび、お友達なんてその場しのぎの名目かもしれんで?」
宗「え?」
鎌「まーっ!?それって、もしかして名無し、男と逢い引きに…!?」
張「そやそや!どうする宗次郎、名無し、男とデートに行ったんかもしれへんで!」
宗「…いえ、別にいいんじゃないですか。こんな時に、とは思いますけど、志々雄さんの許可を得て出掛けたようですし。今日の仕事は終わらせて行きましたし。」
鎌「ほっとくと、名無しが誰かのものになっちゃうかもよ…?」
宗「……なんなんですか、さっきからお二人とも。よかったら手合わせしませんか?手加減はしませんよ。」
張「おお、怖!」
* * * * *
「あ!操ちゃーん!待ったぁ?」
「ううん!私も今来たとこ!」
名無しはせいいっぱい手を振り、操に駆け寄る。
互いに手を取り合って笑顔を交わした。
「操ちゃん元気にしてた~!?」
「こないだぶりだねぇ!名無しも元気にしてた!?」
「もちろん!で、で?操ちゃん最近どうなの~!?」
「あーん、相変わらずなのよ蒼紫様ったら!ね、あそこ行く前に餡蜜でも食べに行こうよ!色々話したいし!」
「そうだね!行こう行こう!」
二人ははしゃぎながらその地を後にした。
よく分からない
(分かる必要はないはずなんだけどなぁ。)
鎌『宗ちゃんやっぱり強いわ…』
張『なあ、ワイの愛刀折れたんやけど…』