彼に食って掛かられる
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その日の午後。
げっそりと疲労困憊気味の名無しを見かけた由美は思わず声を掛けずにはいられなかった。
「…名無し、大丈夫なの?」
「…え?由美さん、なにが?」
名無しは目を丸くさせる。
あっけらかんとした反応をする名無しに、かえって由美の心配は高まっていく。
「なにがって……その、辛いでしょう?」
「…あ、宗次郎のこと?」
「ええ…」
まだ明るい様子を保ったままの名無しを目にすると、無理をしてほしくないと思わざるを得ない。
「だから、こういう時は無理に明るくしなくても…」
「本当、そうなんですよ!聞いてくれます?宗次郎、全部忘れちゃってるから接し方めっちゃキツいんです!殺し屋かと思いますよ!」
「へ?」
「私のこと小間使いだと思ってる…いや、もともと小間使いだけど、違うんです!ただの小間使いじゃなくて、何をやってもダメダメな小間使いだと思ってるんですよ!きーっ!」
「名無し?お、落ち着きなさい。」
「もう、ほんっとあり得ないんですよ!さっきは、」
「名無しさん。」
噂をすれば。
にこにこと微笑みを浮かべた宗次郎が名無し達の背後に立っていた。
一見屈託のない笑顔と見受けられるが…
「げっ、出た。殺し屋。」
名無しはあからさまに顔をしかめたが、宗次郎は笑みを携えたまま続けて名無しに問う。
「名無しさん、諸々仕事しておいてくださいと伝えたはずなんですけど。」
「やってますぅ。今おやつ休憩に入るところなんですぅ。」
「いいんですよ?お望みなら名無しさんのこと斬って捨ててあげても。別に僕にとっては何の不利益もありませんから。」
「ふっ、やれるもんならやってみな。殺した後に私のこと思い出して号泣しても知らないんだからね!ざまあ。」
「あなたたちねぇ…はあ、呆れた。」
由美は溜め息を吐きながら二人の間に割って入る。思わず由美を見つめる二人だったが、由美は咎めるように宗次郎の方を向いた。
「どっちもどっちだけど…特に坊や。度が過ぎるわよ。」
「はい?」
「そりゃこの子はすぐ仕事サボるし頭も要領も悪くて不真面目よ。気持ちはわかるわ。」
「…名無しさん、すごいですね。誰も擁護しない。」
「…もう私、俗世との関わり断とうかな…皆馬鹿って言う。」
「けど坊や、今は忘れてるかもしれないけどこの娘はねぇ、あんたのかのじょ…」
「わああああUFO!!あれUFOだよ!!由美さんちょっくら捕まえに行こう!!」
慌てふためくように会話を中断させる名無し。由美の腕を掴み、ぶんぶんと引っ張る。
「え!?ちょ、ちょっと引っ張らないでよ名無し!いないでしょ!というか捕まえられるワケないわよ!」
「そ、宗次郎!ちょーっと待っててね!!?ちょっくらおやつとUFO取ってくるから!」
引き攣り笑いを浮かべ目を白黒させながら、名無しは由美を強引に連れ出し立ち去った。
「……名無しさんの幻覚は置いておいて、おやつ持ってきて何するのかな。僕の前で堂々とサボりですか?」
* * *
「何なのよあんた。もしかして、自分が彼女ってこと言ってないの?言っちゃダメなの?」
まさか、という顔つきで尋ねる由美だが、当の名無しは実に気まずそうに笑う。
「えぇ、まあ…………その、恥ずかしいかなぁ~って。」
「はあ!?わけが分からないわ!」
「あ、あはは…まぁそりゃ、ごもっともなんですケド。」
言葉を小さくしていく名無し。
由美から見ると、それはどことなく少し寂しげな風貌だった。
「…ただの意地じゃなさそうね。でも、言っていいんじゃない?むしろ言った方が宗次郎も何か思い出すんじゃ…」
「それで万事、元通りになるなら世話ないですけど…。
もし戻れないなら、言うとどうなっちゃうんだろうと思っちゃってー…」
思わず言葉を失う由美。
「私と付き合ってたってこと知っても…それで記憶が戻らないままだったら宗次郎が辛いかなぁって。こんなのと付き合ってたの、と戸惑うだろうし。
さすがに私に気を遣っちゃうでしょうし…ってあれ?どうなんだろう?え?自意識過剰かな…?」
「揺らがないでよ、そこ。」
「まあそういうことは無きにしもあらず、でしょう?…宗次郎には余計な心配したり、無駄に気を遣ったりして無理してほしくないもん。」
あはは、と笑う名無し。でも、垣間見えた眼差しは真剣そのもので。
「…名無し、あなたはそれで大丈夫なの?」
「私?私は大丈夫ですよう。逆に宗次郎を尻に敷いてやります…ってのは冗談で。
本当に宗次郎のこと大事で、宗次郎もたしかに私のこと大事に思ってくれていたなら…もう一回でも、何回でも、関係をやり直せるんじゃないかなって思うんです。」
名無しはにやりと笑みを浮かべた。紛れもなく、それは本心からのもので。暫しの沈黙の後、由美は優しく微笑んでいた。
「…強いわね、あんた。」
「そりゃゴリゴリに強い宗次郎のことが好………こほんっ//
なので多少は、私も強くならなきゃですもんね!」
「…無理はしないでね?」
「はいっ。」
いつだって狙い撃ち
(どんなあなたも大好き。)
(仕事を放り出したあげくUFOってなんです。いたずらが過ぎませんか?)
(金つば十個!)
(……)
(さらに金平糖も付けちゃいやしょう!)
(…今回だけですよ。)
げっそりと疲労困憊気味の名無しを見かけた由美は思わず声を掛けずにはいられなかった。
「…名無し、大丈夫なの?」
「…え?由美さん、なにが?」
名無しは目を丸くさせる。
あっけらかんとした反応をする名無しに、かえって由美の心配は高まっていく。
「なにがって……その、辛いでしょう?」
「…あ、宗次郎のこと?」
「ええ…」
まだ明るい様子を保ったままの名無しを目にすると、無理をしてほしくないと思わざるを得ない。
「だから、こういう時は無理に明るくしなくても…」
「本当、そうなんですよ!聞いてくれます?宗次郎、全部忘れちゃってるから接し方めっちゃキツいんです!殺し屋かと思いますよ!」
「へ?」
「私のこと小間使いだと思ってる…いや、もともと小間使いだけど、違うんです!ただの小間使いじゃなくて、何をやってもダメダメな小間使いだと思ってるんですよ!きーっ!」
「名無し?お、落ち着きなさい。」
「もう、ほんっとあり得ないんですよ!さっきは、」
「名無しさん。」
噂をすれば。
にこにこと微笑みを浮かべた宗次郎が名無し達の背後に立っていた。
一見屈託のない笑顔と見受けられるが…
「げっ、出た。殺し屋。」
名無しはあからさまに顔をしかめたが、宗次郎は笑みを携えたまま続けて名無しに問う。
「名無しさん、諸々仕事しておいてくださいと伝えたはずなんですけど。」
「やってますぅ。今おやつ休憩に入るところなんですぅ。」
「いいんですよ?お望みなら名無しさんのこと斬って捨ててあげても。別に僕にとっては何の不利益もありませんから。」
「ふっ、やれるもんならやってみな。殺した後に私のこと思い出して号泣しても知らないんだからね!ざまあ。」
「あなたたちねぇ…はあ、呆れた。」
由美は溜め息を吐きながら二人の間に割って入る。思わず由美を見つめる二人だったが、由美は咎めるように宗次郎の方を向いた。
「どっちもどっちだけど…特に坊や。度が過ぎるわよ。」
「はい?」
「そりゃこの子はすぐ仕事サボるし頭も要領も悪くて不真面目よ。気持ちはわかるわ。」
「…名無しさん、すごいですね。誰も擁護しない。」
「…もう私、俗世との関わり断とうかな…皆馬鹿って言う。」
「けど坊や、今は忘れてるかもしれないけどこの娘はねぇ、あんたのかのじょ…」
「わああああUFO!!あれUFOだよ!!由美さんちょっくら捕まえに行こう!!」
慌てふためくように会話を中断させる名無し。由美の腕を掴み、ぶんぶんと引っ張る。
「え!?ちょ、ちょっと引っ張らないでよ名無し!いないでしょ!というか捕まえられるワケないわよ!」
「そ、宗次郎!ちょーっと待っててね!!?ちょっくらおやつとUFO取ってくるから!」
引き攣り笑いを浮かべ目を白黒させながら、名無しは由美を強引に連れ出し立ち去った。
「……名無しさんの幻覚は置いておいて、おやつ持ってきて何するのかな。僕の前で堂々とサボりですか?」
* * *
「何なのよあんた。もしかして、自分が彼女ってこと言ってないの?言っちゃダメなの?」
まさか、という顔つきで尋ねる由美だが、当の名無しは実に気まずそうに笑う。
「えぇ、まあ…………その、恥ずかしいかなぁ~って。」
「はあ!?わけが分からないわ!」
「あ、あはは…まぁそりゃ、ごもっともなんですケド。」
言葉を小さくしていく名無し。
由美から見ると、それはどことなく少し寂しげな風貌だった。
「…ただの意地じゃなさそうね。でも、言っていいんじゃない?むしろ言った方が宗次郎も何か思い出すんじゃ…」
「それで万事、元通りになるなら世話ないですけど…。
もし戻れないなら、言うとどうなっちゃうんだろうと思っちゃってー…」
思わず言葉を失う由美。
「私と付き合ってたってこと知っても…それで記憶が戻らないままだったら宗次郎が辛いかなぁって。こんなのと付き合ってたの、と戸惑うだろうし。
さすがに私に気を遣っちゃうでしょうし…ってあれ?どうなんだろう?え?自意識過剰かな…?」
「揺らがないでよ、そこ。」
「まあそういうことは無きにしもあらず、でしょう?…宗次郎には余計な心配したり、無駄に気を遣ったりして無理してほしくないもん。」
あはは、と笑う名無し。でも、垣間見えた眼差しは真剣そのもので。
「…名無し、あなたはそれで大丈夫なの?」
「私?私は大丈夫ですよう。逆に宗次郎を尻に敷いてやります…ってのは冗談で。
本当に宗次郎のこと大事で、宗次郎もたしかに私のこと大事に思ってくれていたなら…もう一回でも、何回でも、関係をやり直せるんじゃないかなって思うんです。」
名無しはにやりと笑みを浮かべた。紛れもなく、それは本心からのもので。暫しの沈黙の後、由美は優しく微笑んでいた。
「…強いわね、あんた。」
「そりゃゴリゴリに強い宗次郎のことが好………こほんっ//
なので多少は、私も強くならなきゃですもんね!」
「…無理はしないでね?」
「はいっ。」
いつだって狙い撃ち
(どんなあなたも大好き。)
(仕事を放り出したあげくUFOってなんです。いたずらが過ぎませんか?)
(金つば十個!)
(……)
(さらに金平糖も付けちゃいやしょう!)
(…今回だけですよ。)