彼に食って掛かられる
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志々雄さんの一派に入った順番は──
宗次郎が一番最初、次いで十本刀の皆さんが順々に入って、そして由美さん、最後に私だったように思う。
今が一番楽しいんだけどね。今までもずっと楽しかった。
まあ振り返れば色々あったなぁ。
志々雄さんは優しいし何かと面倒見てくれるし…
由美さんは綺麗で素敵なお姉さんで、鎌足さんは気さくで面白くてノリが合うことが多くて…
宗次郎は……
めちゃんこ可愛くて正統派美少年だと思ってた。ところがどっこい、本当のところはめっちゃ辛辣で心の中真っ黒で。何かと力に物言わせてくるし白けた目線向けてくるしで、いつしか応戦して隙あらば叩いて抗ってやろうと意気込みが生まれてきたんだっけ。…全然隙なんかなくて叩けなかった気がするけど。
まあ楽しかったけど。今も楽しい。なんやかんやで…詳しく言うのは端折らせてもらうけど、今やそんな宗次郎とお付き合いしてる仲になっておりまして。
人生、何があるかわからんねということです。
「いったぁ!?」
「勝手に語らないでください。」
「手の甲抓ったぁ!」
「なんなんですか、さっきから小っ恥ずかしい。辛辣とか真っ黒とか…可愛いとか。」
「あ、照れた?今照れたよね?」
「言葉には気を付けてください。次の瞬間何が起きるかわかりませんよ?」
「じゃあいつ宗次郎に斬られても大丈夫なように遺言書いときまーす。この人最後に寝小便垂れたのは十五の秋ですよーって。ぷっ!」
「そんな虚言信じる馬鹿な人がいるとは思えないですけどね。とりあえず。」
「…え?今何した?見えなかったけど、なんか首痛いんですけど。あれなんですけど、むち打ちした感じに似てる。」
なんかちょっと痛いな…なんでだろ。
あれ?そいや宗次郎の手つきがおかしいぞ?こう、指先揃えてる構え…手刀っていうの?いつの間にあんな構えに?
「ああ、それはいけませんね。大人しく寝られるように寝台探してきます。」
「それって棺桶?まさか棺桶に入れて点火する?」
「……」
「否定してよぉ!」
(…というやりとりを先程したんですけど。)
──はぁ、と宗次郎はため息をついた。
どうして名無しさんはああいう絡みばかりしてくるんだろう。いえ、つい優位に立とうとしてしまう僕にも落ち度はあるかもしれませんが…
いえ、まあ、仕方ないんですけどね。それが僕だし、名無しさんなんだから。
(さて、志々雄さんに頼まれてた用事に取り掛からなきゃな。)
そう思ったところまでは記憶している。
だが、宗次郎の記憶は一度そこで途切れた。
──“宗次郎が転倒したらしい”。
噂を聞き付けた名無しは俄には信じられなかったが、普段滅多に使わない平目筋を酷使して現場に辿り付いた先に飛び込んできたのは、いつもと変わりない宗次郎の姿だった。
身を起こして少し俯いてる宗次郎にほっとしながら名無しは声を掛けた。
「宗次郎、聞いたよ~?大丈夫?」
「…少し強かに転んでしまったみたいです。」
「そっかぁ、もーおっちょこちょいなんだから……あれ?宗次郎って全然おっちょこちょいじゃなくね?…え?本当になんで転んだの?」
「…あの、ちょっとお聞きするんですけど。」
「はあ。」
「……どなたですか?」
「へ?」
問われた言葉がよくわからなくて、思わず宗次郎の顔を見つめ返したけれど。
こちらをまっすぐ見つめる宗次郎の瞳には私の姿がしっかりと映っている。…きっと冗談やからかいのつもりで言っているのではない、これは。
とはいえ。
「……どなたって、どういう意味だっけ。」
どう返す?いや…何も返せなくない…?
「え?宗次郎、頭打った?あ、頭打ったから騒ぎになってるのか…」
「すみません、そもそも…僕、今まであなたと知り合ったことありましたっけ?」
「あらまー…え?本当に?」
* * * * *
「これ志々雄さん、これ由美さん、これ方治さん、これ鎌足さん。」
「はい。」
「あーんど、あいむ名無し。あんだーすたん?」
宗次郎は少し困ったような表情を浮かべ、背後の志々雄の方へ振り返った。
「えっと…志々雄さん。この人頭大丈夫なんですか?」
「え、まじで酷くない?」
「いつも大丈夫じゃねえから大丈夫だ。」
「志々雄さんも酷いよ?え?何?私がおかしいの?ねえ?」
「…名無し。保険証は持っているのか?」
「方治さんそれ酷くない?病院行けってこと?」
そよ風のように
(予期せぬ展開)