彼に食って掛かられる
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「あれ…?宗次郎ここにもいない…」
「どうしたの、名無し。」
色々なものを捲ったり覗き込んだりしている名無しを見かけて、鎌足は声を掛けた。
「あ、鎌足さん。宗次郎の奴知りませんか?」
「宗ちゃん?」
「行き先も告げず急にどろん!なんですよ~。」
「さあ、見てないわねぇ。」
首を傾げる鎌足と名無し。
「どうしたの?」
二人の傍を通りかかった由美も声を掛ける。
鎌「あら由美さん。宗ちゃんどこにいったか知らない?名無しが探してるんですって。」
由「坊や?見てないわねぇ…」
名無し「そっかぁ、ありがとうございます。ちきしょうどこ行きやがった…」
由「任務で出掛けたなら志々雄様がご存知じゃないかしら?」
名無し「なるほど!志々雄さんに聞いちゃお!」
鎌「そうね!じゃあねぇ由美サァン♪」
るんるんと弾むように歩き出した二人だったが。
鎌足は由美に襟首を掴まれ「うっ」と呻き声を漏らした。
由「鎌足あんた、何どさくさに紛れて一緒に志々雄様のところに向かおうとしてるの?」
鎌「チッ…!」
志「なんだ。」
由「志々雄様、名無しが坊やを探してるんですって。」
名無し「志々雄さん、宗次郎知らない?」
志「歯医者だが。」
由・名無し「「歯医者!??」」
思いもよらない回答に、特に名無しは素っ頓狂な声を上げた。
名無し「歯医者…?敗者…?支配者…??」
志「いや歯医者。」
名無し「歯医者…宗次郎が歯医者…宗次郎…いっつも糖分摂取しまくってる…歯医者………虫、歯…?」
由「あんたもっと普通に心配しなさいよ…」
志「なんか今朝、急に奥歯が痛くなったんだとよ。たしかに少し頬が腫れてたな。」
名無し「えーっ、なんで私に教えてくれなかったんですか志々雄さぁん!」
志「なんで宗次郎の歯医者如きでわざわざ伝えなきゃならねぇんだよ。」
名無し「痛がってる宗次郎見てみたかった…『甘いもんばっか食べてっからだよwボウヤwww』ってマウント取ってやりたかった…」
由「呆れたわ…この子なんでこうなのかしら。」
志「宗次郎を打ち負かす以前に、お前にはそろそろ知性を身につけてもらいたいんだがな。」
宗「ただいまぁ。」
名無し「あっ!帰ってきた!」
名無しは跳ね上がった。
名無し「完治した可能性だってあるけど…そんな簡単に死滅しない虫歯菌の可能性だってあるはず!少なくとも私が虫歯菌なら、」
志「なんだ、その頭の悪い妄言は。」
名無し「私が虫歯菌なら、西洋のお洒落なでっかい洋菓子(※ホールケーキの意)食べるまでは死なないわ!」
ふふふ、としたり顔を浮かべる名無しに志々雄はつい溜め息を溢し、由美は額を抑えた。
名無し「そういうわけだから、ほっぺたが腫れてる奴を拝むのも夢ではないはず!!」
志「いやだから治療しに歯医者に行ってきたんだろうが。治ってんだろ。」
名無し「そうとなれば、すぐ見に行ってきまーす!あじゃじゃしたーっ!」
志「それよりお前に頼んであった買い出しはどうなったんだ。」
名無し「行ってきまーす!!」
志「…あの勢いを仕事に活かしてもらいたいもんだ。」
由「全く、同意ですわ…」
「信じらんない…顔腫れてないし…むしろ痛みが引いたのか清々しささえ感じる笑顔だし…!黙って歯医者に行っちゃうなんてあんまりだ…!」
「なんですか、その頭の悪い妄言は。」
「せっかく宗次郎の痛がってるところが見れると思ったのに…!」
「ああ、やっぱり鬼の首を取ったように面白がるつもりだったんですね。」
いつも通りの表情を浮かべている宗次郎の前に、倒れ伏して駄々を捏ねる名無し。
「名無しさんには言いませんよ、絶対。」
「じゃあさぁ、」
「はい撤収、撤収。」
宗次郎は名無しの身体を引き起こして。
そして背中を押して一緒に広間に戻ろうと促すけれど。
「まだ何も言ってないじゃん~。」
「どうせくだらないことでしょ。」
「まあ、そうだけど!」
「きっぱり開き直らないでください。」
「ね、宗次郎、みつ豆食べたくない?」
「……なぜ、今?」
「宗次郎と一緒に食べたいなぁって思って♪」
「なぜ今この時に聞くんですか?」
「あ~!大福もいいし、お砂糖たーっぷりの紅茶といただくのもいいなぁ!」
「……」
「かき氷に甘いの沢山かけるのも……」
背後から両肩を掴まれ、名無しは振り返る。
「…いけない方ですねぇ。」
「だあって、宗次郎が見せてくれなかったんだもーん。」
「そんなに僕の苦しむ顔が見たいんですか?」
爽やかな笑顔で、純粋そうな目でそう告げられる。そんな風に聞かれると。
「……ま、まあ宗次郎がどうしても見せたくないってんなら引いてやってもいいけど。」
「まあ僕はそれでいいですけどね。」
「へ?」
まじまじと宗次郎に目を向ける。
宗次郎は名無しをまっすぐ見つめておいて、そして少し首を傾げるようにした。
「あ…でも、これって名無しさんの不戦勝になるのかな?
名無しさんが満足するならそれでいいんですけどね、相手が応じなかった戦いの勝ち星で名無しさんが満たされるんだったら。」
「…え?え?じゃあ引くなってこと??苦しむ顔見せてくれるってことなの、宗次郎が?いやまさかね?」
「あらら、いざとなると逃げ腰になっちゃうんですか?名無しさんは。」
笑いながら問いかけると、名無しは引き攣り笑いをした。
「ふーん?言ったね?逃げませんよ?逃げませんよう?じゃあ甘味処行こ!たらふく糖分を貪るがいい!」
(名無しさんとのデートに有り付けた。ちょろいなぁ。どうせ甘味処に着いた頃には目的忘れてるだろうし…
まあ僕は食べれないけど…名無しさんが美味しいもの食べれるなら、それが見れるなら満足です。)
「そうとなったら、早速!……あ。」
「?名無しさん、どうしたんですか?」
「その前に志々雄さんのお使いに……付き合ってくれない?」
「仕方ないですねぇ…」
面目なさそうに告げた名無しに、やれやれといった風に漏らすも楽しそうに彼女に宗次郎は笑みを向けた。
よこしまな目論み
(大好きだからこそ)