彼に食って掛かられる
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「…名無しさん、」
「ん?」
「……」
「?」
「…伝言があったんですけど、すみません忘れてしまったみたいです。」
「えっ?そ、そう…」
「……あ、あの。」
「うん?」
「で…んき、電気に関することだった、かな…」
「え!?それ絶対私への伝言じゃないでしょ、方治さんじゃない?方治さん何が専門なのか難しすぎてわかんないけど。」
「ああ…そうですね。」
「あ、何なら方治さんに直接聞けば?すぐ何のことかわかってくれるんじゃない?」
「そうですね…」
さらりと笑いながら立ち去ろうとする彼女。
「……名無しさん。」
「?」
「で……」
振り向く名無しさん。
──彼女の瞳がこちらを向いていると思うと、覚悟なんていとも容易く瓦解してしまう。
気付けば名無しさんの肩に手のひらを押し当て、
「…でーん。」
「……どしたの?大丈夫…?」
「は?デートに誘えない?」
「………」
いつもの余裕のある笑顔はどこへやら。
思わず素っ頓狂な声をあげた鎌足を前に宗次郎の身体は心なしか猫背になっているように思えた。
「何言ってんの?あんたそれでも彼氏?」
「……あまり大きな声で言わないでください。」
低くため息を吐きながら宗次郎は鎌足を見上げる。
「なんか…こう、言いづらくありませんか?」
「ぜんっぜん。」
「恋愛じみた言葉って恥ずかしくないですか?」
「意味がわかんないわ。」
「そもそも自分の心の内を口にするのが照れくさいんですけど。」
「なーに言ってんの!恋人同士じゃない!」
「わかってます。…わかってるんですけどね。」
「…そんなに名無しを、キスしたい押し倒したい抱きたい願望が漏れるのに抵抗ある?」
「なんでそうなるんですか。」
「だって彼女じゃない。自分を曝け出したところで弱味を握られたりするわけじゃ…」
「……」
「……あ、あるまいし。」
「何か嬉々としてる名無しさんの姿が想像つくんですけど…」
「ご、ごめん。私もちょっと……否めないわ。」
以前名無しと共闘して宗次郎を嵌めようとしていた事件を思い出し鎌足は引き攣り笑いを浮かべた。
「こほん……でも単純に、言ってもらうと嬉しいと思うんだけどな。宗ちゃんのことが名無しは好きなんだから。デートしたいってことは、相手と長い時間一緒にいたいってことでしょ。それだけ想ってる相手ってことでしょ。
それに、普段宗ちゃんは心の内や考えてることが読めないから…そんな宗ちゃんに誘ってもらえれば余計に嬉しくなると思う。」
「……」
「そう思わない?」
(あ~~♪悩んで頬染めてる宗ちゃんもかっわいいわね!何なら可愛がってあんなことやこんなこと仕込んで)
「ありがとうございます、鎌足さん。とりあえず軽く死にかけてみますか?」
「ごめんなさい、不粋なことはもう考えません。」
「あり?ここにいたんだ、宗次郎。」
「あ、名無しさん。」
「ねね、由美さんが美味しそうなお煎餅買ってきてくれたんだ。一緒にもらいに行こ♪」
「…名無しさん、あの。」
「ん?」
「で……んせつ。」
「んん??あ、伝説呼ばわりのお煎餅だったかな?」
(…天然だなぁ。)
「じゃなくて、で…木偶の坊…」
「は?え?わ、私のこと?まあ…言われると合ってるっちゃあ合ってるけど。」
(なんで今日に限って全部納得するんですか。)
「……じゃなくてですね。」
「?」
「えっと…その、で…でっち上げたいことがありまして。」
「宗次郎、ひょっとして疲れてる…?」
思わずおでこに手を置こうとする名無しの手を宗次郎はそっと掴んだ。
目を丸くして宗次郎を覗き込む名無しに、その愛らしさに言葉を詰まらせそうになりながらも。
「あの、ほら。思えば僕から誘ったことってないですし。でも、やっぱりその、僕だって名無しさんといたい気持ちはありますから…」
「……?」
「えっと、
…デートしませんか?」
で?
『…もしかして今日、ずっと誘おうとしてくれてたの?』
『!!違います。ちょっと誘われたからって図に乗らないでくだ、』
『嬉しい-!!ありがとうね!どこ行こっか?』
(…何も言えないですね。)