彼に食って掛かられる
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「…あ。」
「やった、勝った!宗次郎に勝ったぁ!」
理由は些細なことで。
最後に一つ残ったお饅頭を僕と名無しさんどちらが食べるのか、あまりにも両者譲らずで膠着が続いていたものなので拳で決することになったのだ。
──手を鋏の形に出した名無しさんは飛び跳ねて乱舞するのだった。
「…仕方ないですね。決まり事ですから。」
「わーい!いっただきまーす。」
颯爽とむしゃむしゃ、と貪り出す名無しさんの笑顔を見て心の芯から仕方ないという風に思うのだった。
「…あれ?なあに、宗次郎嬉しいの?」
「は?まさか。」
「だってずっと笑ってるから。お饅頭食べれなかったのに。…え、ドM?」
「歯食い縛ってくださいね。」
「ごほぉっ…!!」
むせ返る名無しさんを尻目に衝撃の走った手を擦り、手首をこきこきと鳴らし整えていると。
「譲ってもらったことだし、じゃあ明日とっておきのお茶屋さんに連れてってあげる♪」
「…」
「……なによ、その目は?笑顔消えてますけど。」
「いやぁ、痛めつけ過ぎて善人へ人格が変わったのかと。」
「人の好意をっ…!」
ぷんすか、と文字通りに憤り出しぶーぶー言い出そうとしている彼女。思わず噴き出してしまった。
「な、なによっ。」
「ふふ、そうですか。僕を連れてってくれるんですね。」
「…じっくり繰り返すところ、嫌い。」
「そうですよね。僕が好きで誘いたかったのに、意地悪されちゃ怒りますよね。」
「……!///」
「すみません。」
にこにこ、とこれでもかという笑顔を向けると名無しさんの顔がどんどん真っ赤に染め上がっていく。
「宗次郎のばか、嫌な奴っ…//」
「……そういうところ、いいなぁって思います。」
「もうもうもう!知らないっ…//」
照れて脱兎の如く走り出した名無しさんだったけど。
思い出したようにいそいそとすぐにこちらに引き返した。
「明日は…巳の刻でいい?」
「…ええ。お迎えにあがりますね。」
「うんっ…」
すぐに目線を離されてしまったけど、嬉しそうにはにかむ笑顔を浮かべていたことが忘れられそうになかった。
「宗次郎。急で悪いんだが頼めるか。」
「はい、志々雄さん──」