彼に食って掛かられる
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「宗次郎ー?」
宗次郎の部屋を訪れるも、姿が見当たらず。
あれー?と名無しは首を傾げた。
「おっかしいなぁ…帰ってきたならここにいるかと思ったんだけどなぁ。」
今一度部屋を見渡してみても、宗次郎の姿はなかった。
「おやつでも買いに行ったのかな。…よーし、悪い宗の坊やにはお仕置きだべ。」
別に腹を立てたわけではないのだが、暇を持て余した名無しは宗次郎の机に向かい、ごそごそと仕込みを行うのであった…。
「…さて。これでよし♪」
それじゃあ由美さんや志々雄さんに遊んでもらおう、と名無しは部屋を後にするのであった。
(…でも本当にどこに行ったんだろう?また志々雄さんに何か頼まれたのかなぁ。何か私に手伝えることがあればいいんだけど…。)
回廊を進みながら一人考えを巡らせる名無しであったが、あることを考えた瞬間にふと足を止めていた。
(もしや、浮気とか…!?)
しかし、即座に打ち消す。
(いやいやいや、そんなそんな…。このちんちくりんを好きって言ってくれるような人がそんなことするわけないじゃん、ハンッ。まあ、言われてはないけどねっ。)
しかし。
(…でもさ、でもさ。それは許容範囲が広いってなわけで。じゃあどんな人も範囲に入るのでは?…てか、私じゃ物足りないのでは…)
しかし。
(いやいや。人を疑うのは良くない良くない。そんなわけないじゃない。)
しかし。
(でもなぁ…人の心の隙や油断を突いてしばいてくる奴だからなぁ…)
しかし。
(うん!きっとおつかいかお散歩かおやつに違いない!決定!)
るんたった♪と軽やかに歩き出した名無しであった。
ガチャ!
「由美さーん♪いるー?」
大広間に到着した名無しは勢いよく扉を開けた。
「もし暇だったら遊んで──」
ぴたりと名無しの動きが止まった。
「あ…」
「あら。」
広間に置かれたソファには腰掛ける由美と。由美の膝元に頭を預けた体勢で寝そべる宗次郎がいた。ちょうど宗次郎の顔は外側を向いていて。入ってきた名無しと目を合わせたのだった。
「こっ、これはっ…」
「えっと、名無しさん…!」
慌てて身を起こす宗次郎に口をぱくぱくとさせる名無し。
“まずい、きっと誤解を生む”と察して言葉を紡ごうとする宗次郎よりも幾分早く彼女は声を上げるのだった。
「ちょっとー!?なんじゃこりゃああっ。」
「あ、あの、違うんです名無しさん。決してこれは…」
浮気ではないと弁明しようとするものの、喉がつかえたように言葉が出てこない。
「決して名無しさんじゃ満たされないとかじゃ…」
「ずるい!!!」
「ずるいとかではなく…え?ずるい?」
叩きつけられた言葉に、それに噛み合う解釈が思い付かず、きょとんとする宗次郎。
「はい??」
「ずるい、ずるい!!私も由美さんに膝枕してほしい!!!」
宗次郎は思わず目を丸くさせた。
「…は?そっちですか?」
「は?そっちって、他に何があるのよ?」
「……」
「じゃあ名無しもしてあげるわ。耳掃除。」
「わーい!由美さん大好きー♪」
(すごく釈然としないんですけど…)
思わずじとりと名無しを見つめるも、こちらを眺めて含み笑いをする由美に気付く。
「…なんです?由美さん。」
「いいえ、何も♪」
「絶対楽しんでますよね。」
「坊やは名無しで…何だっけ。そうそう、満たされてるのよね♪」
「!げほっ、ごほっ!」
「え!宗次郎、なんて言ったの!?」
早々と由美の膝枕を堪能し始めた名無しだったが、がばりと起き上がり、返答を待つように宗次郎を見つめる。
「……」
「ねぇねぇ♪宗次郎♪」
「ほら坊や、愛しの名無しが待ち侘びてるわよ。」
「愛しの、とか一々言わなくても…」
この場にいるのが名無し一人なら、適当に軽くどついて誤魔化すところなのだが。
由美がいると調子が整わない上、由美がいることで名無しが水を得た魚のように悪ノリしてくるので手に負えない。
「…もう、うるさいなぁ。」
「ありゃりゃ、怒られちゃった~。」
「怒られちゃったわねぇ、名無し?」
「……そりゃまあ、満たされてますけど、何か?」
「「!!!」」
「…好きでいますから…っ…」
苛立ったように少し顔をしかめながら──言い捨ててその場を後にした宗次郎。
その顔がしかと赤く染まっていたのは一目瞭然で。
「ちょ、由美さん…あれ、なにっ。ずるいんだけどっ//」
「私が聞きたいわよ!この幸せ者!」
「あ、いたたたたた!!いきなり奥ぅ…」
「あっ、ごめんごめん。」
「──もう、調子狂うなぁ。」
自室へ辿り着いた宗次郎はため息をこぼした。
「なんで一々言わせようとするんだろう。小っ恥ずかしい…//ずるいと言いたいのは僕の方ですよ。」
だが…
「…でもちゃんと言わなきゃいけないことも、やっぱりありますよね。大事に想ってるならなおさら…」
その微笑みは少し満足げだった。
「…さて。名無しさん戻ってきたらどうしようかな。…この機会に、恥ずかしいこと沢山言って困らせるのも楽しいかもしれませんね。」
にこにこと考えを巡らせながら、何気なく机を見た時にふと、違和感に気付く。
──少し引き出しが開いてる気がする。
ぴたりと閉めたのだが、ふと思い立って開けてみると、
「!」
飛び出したそれに反応し、右手で掴み取る。
びょん、と勢いよく宗次郎の目の前まで飛び出したのはヘビの玩具。宗次郎はしげしげと見つめた。
「多分…これ、名無しさんですね。」
仕掛けが雑だなぁ、と漏れた朗らかな声。
にこにこと宗次郎は黒い笑みを浮かべた。
「戻ってきたら、お仕置きかなぁ…名無しさん♪」
どっちもどっち
(あ、あれ。由美さんなんか悪寒がする…?)
(?どうしたのかしら?)
(……あ。心当たりあった…あ-。)
(??)