彼に食って掛かられる
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「…あ、気付いた。名無しさん、大丈夫ですか?」
「……?」
目が覚めるとこちらを見下ろす自分の顔があった。
…一瞬、元の宗次郎の顔が見えた気がした。靄が掛かったように思考が今ひとつ働かない。
「う…どうしたの、私?」
「逆上せちゃったみたいですよ。」
「あー…そういえばお風呂に入ってた記憶が。え?私どうやってお風呂出たの?」
「名無しさんまったく動けなかったので僕が運びました。」
「いや…そうじゃなく…」
「?」
ってことは、着物…宗次郎が着せてくれたんだね…!うわあ…!
え?これって私、お嫁に行ける?いんや、大丈夫。宗の身体だったから大丈夫……なんか色々ありすぎてまともに思考が働かない。
「あうー…」
「使いものにならない頭回転させて何か出ます?」
「いやもうなんか色々無理。恥ずかしい…」
「ああもう、立ち上がらないでください。」
起き上がろうとした肩を抑えつけられ、再び横たえられたのだけれど。
上体を少し崩し、こちらを見下ろす姿勢の宗次郎。──宗次郎の影が包むようにこちらに覆い被さっていて。そんな今の状況に少し緊張する。
「…宗次郎。」
「…なんですか?」
「…いや、なんでもない。」
…不思議そうに見下ろすのは自分の顔だけど。やっぱり気配は宗次郎そのもの。
もし元の身体だったら、なんだか触れられたくなって…甘えてしまいそうだった。──ふわふわする頭でそんなことを思いながら、押し隠した。
「…ね、宗次郎。手繋いでいい?」
「え?」
「…いい?」
「どうして、また?」
「…繋ぐのに理由がいりますか?」
途端に目を丸くされた。
…こざかしいとか面倒とか言われるのかな。
そう思ったんだけど、宗次郎は微笑んだ。
「そうですね、理由なんていりませんよね。」
優しい眼差し。
…そっと手を握られた。
どうしてだろう。それだけで心まで繋がったかのように、安心して暖かい気持ちになる。
この人といると…
──しばらくそうしていた私だったけど、ふと、私の思考は一気に目眩く回転し出した。
「…宗次郎。今気付いたんだけどさ。」
「はい?」
「めっちゃ濡れてない?…てかずぶ濡れじゃない!?」
「あー…実は。」
お風呂場でつい、と微笑みかけた宗次郎。でも大丈夫ですからと続ける彼になんだか申し訳ない気持ちがこみ上げてくる。
「どうして着替えなかったの?風邪引いちゃうよ…?」
「んー…まあいいじゃないですか。」
少しだけ目を逸らして言葉を濁した宗次郎。…合点がいった。
「私の身体見ないように気を遣って…?」
「…いえそんな大層な。別に、そんなに大して気を遣ったわけじゃないですから。」
「ごめん、貧相な身体に気遣わせて。」
「……(何かと気にするんだなぁ…気にしないでいいのに。)」
「冷えてない?大丈夫?」
「大丈夫です。
………あれ?なんだかちょっと寒くなってきたかも。」
「!いやー!それって風邪引き始めてるんじゃ…!?」
「くしゅんっ。」
「あーあーあー!言わんこっちゃない!」
寝ていられるわけもなく、私は着替えを取りに箪笥へ向かって駆け出した。
「あ、どこ行くんですか。寝ててくださいよ。」
「いいの!四十秒で支度しな!…あ、間違えた。支度するのは私か。四十秒で支度する!待ってな!」
「四十秒は遅くないですか?」
「うるさい。」
触れたぬくもり