彼に食って掛かられる
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「はあ、私のお仕事ほぼ完了…!」
何はともあれ、無事に湯船に浸かる宗次郎を眺めてほっとため息をついた。
「あとは着物着せて髪の毛乾かすだけだから、あと一息だ…」
「…あの、そういえばなんですけどね。」
「ん?」
「名無しさんは…僕の体はどうするんですか。お風呂入らないって選択肢は嫌ですよ?」
「……たしかに!!どうしよう!?」
忘れてた!…え!?ひょっとして、宗次郎の体見なきゃいけないわけ!?
ちょっと待って!待って、無理!!!!
「…僕の入浴を終えたら交代しますか?」
「…そうしよっか!うん、そうするしかないか…!」
「ねー。名無しさん。名無しさんまで目隠しする必要はあるんですか。」
「えっ!だ、だって一応は乙女ですからっ。」
湯浴みを終え着物を着替えた(もちろん名無しさん監修のもと)僕と、僕の身体のまま目隠しをして着物を脱いだ名無しさん。
「…そういうものなんですか?」
「そういうものなのっ。」
…名無しさんに身体を見られることは恥ずかしくないのか、と言われれば、決して恥ずかしくないことはないけど。
でも僕の場合は、別に見られたって減るもんじゃないし、仕方ないと思うんだけどな。まあいいか。
「…あとですね。名無しさん。あの、そうやって自分にタオル巻き付けて必死に胸元隠してますけど………僕の胸を隠して何か意味はあるんですか?」
「だっ、だって…!いくら今は男の人の身体になってるって言っても、胸もろ出しは恥ずかしいんだってば!感覚的に!気持ち的に!」
「そういうものなんですか?」
「うん!」
「まあいいけど…あまり僕の姿でもじもじしないでくださいね。」
「うーん。多分努力する。」
「多分って。」
* * * * *
「ね♪宗次郎、頭洗って♪」
「……自分で出来るでしょ?」
「えー、やってあげたじゃん!私もやってほしい-!」
「良くないですよ、自分がしたからって見返りを求めるの。まあ仕方ないですね。今回は特別にやってあげます。」
「はいはい、ありがとうねー♪」
多分、僕を召使い扱いしてることで上機嫌なんだと思う。名無しさんは鼻歌なんて歌いながら、一方で何かを気にしている様子。
「何か考えてます?」
「…私、髪の毛そこそこ長いじゃん?やっぱり長いと面倒だなーって。洗うのも乾かすのも。」
「…あー、たしかにさっきも時間かかりましたよね。」
「元に戻ったら短く切ろっかなー。」
「えー…」
「…あれ?嫌?宗次郎は長い方が好きだったりする?」
「名無しさん髪まで短くしちゃったら、いよいよ女の子に見えなくなっちゃいますよ?」
「何の心配してるのよ。」
「冗談半分、本気半分です。…まあ、」
──少し寂しい気がしますけど。いつもあるものがなくなっちゃうみたいで。
「あれ?どうした?……あれ、宗次郎。さてはデレたか。」
「次はボディーソープにします?準備はいいですか?」
「良くない良くない!なんで目隠し取ろうとするわけ!?」
無事に身体を流し終えて湯船に浸かる名無しさんを眺めていると。
ふと、気付いた。名無しさんの様子がおかしい。
「名無しさんっ?」
「うー…あう…宗次郎……」
ぐったりとした表情。
「…あー。逆上せてますね…長風呂し過ぎたかなぁ。」
立てそうになかったから抱え上げて、浴場の外に出る。あー、顔とか真っ赤っかだなぁ…
「名無しさん?名無しさーん…?」
「頭が…ぐるぐるする~…」
「えーと。水と冷やすもの、かな。」
とりあえず水を飲ませ、軽く身体の水気を拭いていく。そして冷やした手拭いを名無しさんの額や腕に乗せる。
──着流しを着させて、ちょっと落ち着いたら部屋に連れて行こう。そう思った時に自分の身体を見て気付いた。
「…あ。」
着物がずぶ濡れだ。ぽたぽたと止めどなく雫が滴り落ちていく。…そっか、名無しさん湯船から抱え上げた時に。
「どうしよう、着替えたいけど…」
…でも。あんなに見られるの嫌がってたからなあ。勝手に着替えちゃったらかわいそうですよね…
「……どうしようかな。」
どうしようか。どうしようか。
乙女の恥じらい