彼に食って掛かられる
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「体が入れ替わった…だと?」
「「はい。」」
二人を前に、さすがに少し驚きの声を上げた志々雄さん。
「元に戻る見込みは?」
「わかりません。」
「わかんないです。」
「戦力になるのか。」
「無理ですね。僕も名無しさんも。」
「…」
「僕は刀は捌けますけど。でも、名無しさんの体じゃ縮地使えないみたいです。」
「そうか。」
「うう…ごめんなさい。」
志々雄さんを前にしているからか、萎縮する名無し。宗次郎はそのまま言葉を続ける。
「何度も試してみたんですけどね。名無しさんの脚、筋肉がなさすぎて使いものにならないし、すぐに筋肉痛になっちゃって。」
「……」
「あとやっぱり体が重い。」
「前言撤回!小僧おろすぞ。今なら3枚くらいにはおろせそう。」
「へえ。じゃ、やってみてください。」
「上等よ。大根おろしにしてくれるわ…あれ、刀抜けない。」
「隙だらけじゃないですか。」
「ぎゃ!!いったぁぁぁ!!志々雄さん、こいつ頭に峰打ち噛ましてきたんですけど!!」
「うるさいなぁ、ほら、3枚におろすやり方教えてあげますから。身を以てね。」
「……おまえら、男女の関係になったんだって?」
名無しも宗次郎もぴたっと押し黙る。
「…志々雄さん。」
名無し…いや、名無しの姿をした宗次郎が口火を切る。
笑みの消えた真剣な表情。名無しも思わず真剣に彼を見つめる。
「宗次郎…?」
「……恥ずかしいんで、里芋と芋農家みたいなものだと認識してもらえませんか。」
「あんたっ、まだ私のこと芋だと思ってんの!?」
「前はじゃがいもって言ったんですよ?よかったじゃないですか、里芋に昇格しましたよ。」
「品種が変わっただけで同類じゃんっ。」
「ふーん。まあ呼び名なんて大した問題じゃねえけどな。豚に真珠、馬の耳に念仏、月とすっぽん、猫に小判、どれも同じ意味だろ。」
(…志々雄さん。どっちなの?ねぇ、どっち?私が豚とかすっぽん側なわけ?)
(…志々雄さん、月とすっぽんは違う意味合いです。)
「あと名無し、お前はうるさい。」
「なんで私だけ……くっ。」
志々雄さんは煙管を傾け、溜め息交じりに煙を吐く。
「とりあえず様子を見るしかねぇか。ややこしいからお前ら二人とも待機。」
「「はぁい。」」
「しかし…“名無しにキスしちゃいました”…ってしょげてたくせにな。」
「?」
「……志々雄さんっ。」
楽しそうに笑う志々雄さん。
宗次郎は真っ赤に顔を染めていた。
* * * * *
「あーあ。このまま体が戻らなかったらどうします?」
とぼとぼと並んで部屋へと向かいながら、宗次郎は名無しに問い掛けた。
が。
「宗次郎、一つ言っていい?」
「…なんです?」
「そりゃ…私って、まあそこそこ可愛い顔してる…のかな。そんな気がしなくもない…あ、ごめん、やっぱりわかんないや。」
「さっきの峰打ちが効いたんですか?」
「違うわい。…由美さんや鎌足さんには及ばないけど…宗次郎が惚れるくら、いったあああ!?なにすんの!」
「単刀直入にお願いします。」
「ううん、えっと……私の顔でずっとニコニコしてるのやめれる?なんか、違和感が…」
「……」
少し考えながら、真顔になる宗次郎in名無し。
暫くその顔を保っていたが、やがて…
「あああっ!?何してるの!?」
ごしごしと己の顔を擦りだした宗次郎を見て名無しは取り乱す。
「わ、わかったわかった!!やっぱそのままでいいから!そんなに激しく顔…私の顔擦らないで…!!」
「…名無しさんごめんなさい…癖みたいです…」
本気で申し訳なさそうにする宗次郎に、名無しはやがてふふ、と笑みをこぼした。
「…そうだね。宗次郎だもんね。」
「でも、努めてはみます。」
「いいよいいよ。」
笑いかけて、そして。
少し名無しは頰を染めた。
「…ね、宗次郎。」
「なんですか?」
「さっきの……体が戻らなかったら、って話。」
「はい。」
「もしそうだったら…ずーっと、宗次郎と一緒にいられるのかな?って思ったりした。」
「…ずっといますよ。」
「え?」
優しく微笑みかけてくる自分の顔。
でも、容貌が違ってもやはりそれは宗次郎の微笑み方を彷彿とさせる。
「…でも、やっぱり名無しさんは本当の名無しさんの姿をしてるのが一番かなぁ。」
どんな名無しさんでもいいですけどね、と付け加えるいたいけな彼が愛おしく思えた。
素直な二人
(意地っぱりは健在ですが。)