彼に食って掛かられる
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※今回軽く裏要素…ちょっとだけお色気含みます。
──あろうことか僕は転んだ。
というのは名無しさんのせいだ。
なぜなら、廊下の曲がり角にも関わらず、名無しさんがえらい勢いで走ってきたから出会い頭衝突せざるを得なかったのだ──
「「いたたたた…!!」」
同じ言葉を同時に発した時、あれ?と僕はなんだか違和感を感じた。直感的に自分の発した声が気になった。
でもとりあえず仰向けになった体勢を整えようと身を起こしたその時。
(──あれ。)
自分の身体が視界に入る。というのも、着物の色がおかしい。たしか青い着物を着てたはず…。
足の方に視線を辿らせていく。ますますおかしい。こんなに着物の丈は長くないはず………あれ?これって名無しさんの着物に似てる?
そこまで考えた時、名無しさん
──いや、僕の姿をした名無しさんは叫び声を上げた。
「宗次郎!!これ、入れ替わってない!?」
「あー…僕、いや、名無しさん?」
驚いたら僕はこんな顔するんだ。そんなことをぼんやりと思った。
──どうしてこうなったんだろう。
* * * * *
「とりあえず、僕の姿で品のない振る舞いをするのやめてもらえます?」
「私の顔で黒いオーラ出すのやめてくれたらね。」
「ほんとに質が悪いですね。嫌な人に人質を取られたものだなあ。」
「誰よ、人質って。」
「僕です。僕の体です。」
「…っていうか、ひょっとして!」
名無しさんは瞳を爛々と輝かせた。
「今私は宗次郎なんだから…めちゃくちゃ強いんじゃない!?」
「…」
嫌な予感がした。
「ってことは!私、宗次郎に勝てるんじゃない!?」
「……」
嫌な予感しかしない。名無しさんは僕の顔でニコニコニヤニヤしまくる。なんだか頭痛もしてきた。
「うっふふ~!行っちゃうよ~!」
ああ、もう嫌だ。最悪だ。
名無しさんは満面の笑みを浮かべながら刀に手を掛けた。
「ほれっ!……あ。」
──間抜けな声が上がる。
「抜けないや。えいっ、えいっ。」
どうやら刀を抜こうとしたみたいだけど、手慣れない為かガチャガチャと言わせながら辿々しく抜刀した。
「えー…これじゃ瞬天殺できないじゃん…」
「…よかった。」
運動神経や脚力を使いこなすのにはそれなりの体の動かし方が必要なのだけれど。どうやらそこは本人の技量そのままらしい。
「ほら、僕の格好でみっともないことしないでください。」
「むー。っていうか宗次郎、私の格好で躓きそうになるのやめてくれる?」
「…」
「嫁入り前の体に傷付けないでほしい。」
「だって、名無しさんの体ちょっと重いんですよ。足上がらないし。普段から運動せず、寝て食べてばっかりだから。」
「レディに向かって何てこというの!!」
「今は名無しさん、男でしょ。」
そう呟くと、名無しさんは一瞬きょとん、とした。静止した表情がこちらを見つめていたかと思うと、ニマッと笑ってこっちを見た。
「…何ですかその顔。」
「いいこと考えた…!」
「どうせろくでもないことですよね。」
「いやいや。宗次郎、今日は私が勝たせてもらうね?」
「は?」
えーいっ、と名無しさんは勢いよく僕を押し倒した。
「わっ、ちょっと…!」
「はい、私の勝ち-♪」
迫り来る腕を振り払おうとするも、いとも簡単に名無しさんによって抑え付けられ、馬乗りにされてしまった。
満足そうに微笑む僕の顔。
「やったー!いい気分♪単純な腕力なら宗次郎…いや私の方が上でしょ?」
「…どういうつもりですか、これは。」
「私の顔で怖い顔しないでよー…」
「ふざけないでください。」
ばたばたと足を動かすものの、虚しく空を蹴るだけ。
「……屈辱だな。」
「…自慢じゃないけど、私の体じゃ勝てないでしょ?」
「名無しさんに見下されるなんて最悪です。」
「何とでもどーぞ♪」
ふふん、と笑ったと思いきや、突然覆い被された。
「えっ…?名無しさん、何を…?」
「私のここ…弱いって言ってたよね…?」
「え?」
途端にぞわり、と耳元から総毛立つ感覚。吐息が其処に触れ、意図せずため息が漏れる。
「!ん…っ…」
思わず身を捩らせてしまう。僕の焦りを知ってか、彼女はなおも同じ所作を繰り返す。
「あ…!待っ…っ、ん…」
「宗次郎、かわいい。」
「…っ、何がしたいんですか…!どいてください。」
「何がって…?」
名無しさんは楽しそうに微笑んだ。
「あの時の仕返し☆」
(※『想い、ひとひら』参照)
…とびきりと言ってもいい、真っ黒な笑顔。
「…!え、嘘ですよね…?」
「ほんとだよー?」
意地悪そうに笑う彼女は悪魔だった。
…結局、解放されるまで散々弄ばれてしまった…
形勢逆転
(ね、宗次郎かわいかったんだけど。)
(…うるさい。)
(…元の体でもちょっとやりたいかも。)
(それを僕が許すとでも?)