彼に食って掛かられる
名前変換
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
※行為はないですが、軽く下ネタ入ります。
宗次郎の足元に倒れていた私。
爽やかに微笑まれ、えいっ、と引っ張られて起き上がった。
…私の求めていた場面になってるっちゃあ、なってるけど…終わりよければすべて良しっていうけど…いうけど!
目の前のその笑顔の主を呆れたように見つめる。
(過程がまるでむちゃくちゃよねー…!)
「えー?じゃあ…前戯に時間をかけろと?」
「人の思考盗み読んで、しかも誤解するような言葉返さないで。」
「ふーん。命令するんだ?」
低く含み笑いをして顔を覗き込まれる。
「じゃあ名無しさん。」
「名無しさんは僕に何かくれますか?」
「…えっ?」
宗次郎に添えたままの手を優しく握りしめられた。
「えー!?なに?何かあるかな??」
「……じゃ、宿題にしておきますね。」
「宿題?」
「僕、任務があるのでそろそろ行かないと♪」
「なんだ、本当に仕事だったんだね。」
「暇な名無しさんとは違うんで。」
「まあ、行ってらっしゃい。」
「…あ、そうだ宗次郎、これ!」
「?」
「それ、私のおすすめ少女漫画!また読んでおいて♪」
「…はいはい。」
仕方ないなぁと言わんばかりに微笑まれた。
* * * * *
2日後。
「名無しさん、資料ありがとうございました。」
「あ、うん。早いね、さすが縮地。」
「縮地関係ないです。」
「…で。読んで、名無しさんの欲しいものが何かわかったんですけど…」
「…?」
はて?宗次郎よ、なぜそんなに顔を赤くしているのかね?
黙りこくる彼に首を傾げる。
「えっとその…」
「?どしたの?風邪引いた?」
「すぐ人を病気に罹らせないでください。」
「…あーっ!わかった!貸した中に感動モノが混じってたんだ、きっと!それで感極まって号泣したな、さては!」
うりうり~と肘鉄を食らわせるものの、あら珍しい。反撃が来なかった。
「…あれ、そんなにダメージあったんだ?」
「ダメージ…まあ。」
「えー!ほんとにー!?」
どの本だろ?
今後のゆすりのネタにしようと思い立ち、宗次郎の抱える本を取り上げてぱぱーっと表紙タイトルを順繰りに見ていく。
(どれだどれだ!?宗次郎の良心にクリーンヒットしたのはどれだ?)
乗りに乗っていた私だったけど。
…ある表紙タイトルが見えた瞬間、ピタッと心身ともに停止した。
(こ……こいつぁ……!!!!)
……いわゆる、これは。
うん。純愛には違いない。うん。
しかし…ちょっとばかし過激な…
簡単に言うと性描写のある…しかもそれが結構濃厚めな作品だった…
私の心にメガクリーンヒットォ……!!
「……」
「……」
「…貸した本って、ぜ、全部…み、見たよね…?」
「……ええ。」
「なんかスミマセン…」
「いえ…その…意外だったんでびっくりしました。」
「ああもう…何も言わないで…」
ああ…なんてものを貸してしまったんだ。
表紙のかわいい絵柄に惹かれて買ったら、実はえっちい作品だったんだけど…
市場に出回ってる以上、私だけが読んでるわけじゃないんだけどさ…
落ち込む…
しかも「貸して」とか言われたわけじゃなく…
事故といえども自発的に貸してしまった形がなんとも…もう何も言えねえ…
「……その、名無しさん。」
「ううぅ…何…?」
「…あの、大事な話なんですけど…」
「……?」
いつにもなく、神妙な面持ちと声色にドキッとする。
(……!!もしかしてドン引きしたから『別れよう』とか…!?)
いやいや、いくらなんでもそれは…
もともと私のこと馬鹿だって思ってるじゃん?
だから今更………いや。あれか。痴女だと思われたのか。もしや。
「…な、なに…?」
「言いにくいんですけど…」
!宗次郎の顔から笑顔が消えた…!
うわぁ、これ絶対フラグだ!!
ああ、でも仕方ないかもしれない…引くよね、これは引くよね…
でも…覚悟は出来てる、さぁ…!!
さよなら宗次郎…嫌だけど、寂しいけど…
また友達とかなら…なれるのかな…
(もうバシッと言ってやって…!中途半端な優しさはいらないから…!!)
「そういうことについてなんですけど…もう少し先でいいんじゃないかなぁ。」
「……?」
え?別れるけど…
今すぐじゃなくて、もう少し先??
「その…名無しさん…。たしかにこないだ…何か僕にくれますかって言いましたけど。
女の子がそんな簡単に許しちゃいけませんよ。」
「…?」
「もっと自分を大事にしないと。
僕はずっと待ちますから…」
…女の子?許す?自分を?大事に?
待つ…?待つって、何を…??
「…?」
「間接的といえども、女の子の名無しさんの方から、こういうこと示させてしまったのは男として申し訳ないんですけど…
その、まだ付き合ってから間もないし…そういうことは、もっとお互い恋人としての仲が出来てきてから…」
「………?」
恥ずかしげに目を逸らしていた宗次郎の目線がふいにこちらへ向き、合致する。
途端に、頰を染めていた宗次郎は呆れたように声を荒げた。
「……もう、こんな真面目な話してる時くらいとぼけた顔しないでほしいなぁ。」
「いや、えっと…………宗次郎、本っ当に申し訳ないんだけど。」
「はい。」
「……さっきからしてるの、何の話???」
「…いい加減にしてください。何様なんですか?え?」
…うわあああ!
宗次郎怖い!めっちゃ怖い!!
ここまで威圧的な声初めて聴いた!しかも今、口動かさずに舌打ちしたよ!こんな邪悪な笑顔初めて見た!
「ひいぃぃぃ…!!お許しを…!!」
「…この耳は何の為についてるんですか?え?」
勢いよく両耳を引っ張られる。
「いたたたた!そ、宗次郎の声をよく聴く為にですぅ!!」
「ですよね?で、」
ずいっ、と目と鼻の先に寄せられる真っ黒な笑顔。
笑ってるけど見開かれた目は笑ってない。怖い。
ぽん、ぽん、ぽん、ぽん、と手鞠をつくみたいに頭を手のひらで叩かれる。
「…この頭は何の為についてるんですか…?」
「そ、宗次郎の話をよく理解する為にですぅ……!!」
「それにしちゃあ無能ですよねぇ…?」
「ひいいぃぃ…!ごめんなさぁぁぁい…!!」
───
「は?別れ話だと思ってたんですか?」
「あんな本貸したからドン引きして別れ話し始めたのかと…」
「ほんと見上げたものだなあ。」
「で結局、宗次郎のは何の話だったの?」
「………その、名無しさんが…あの本に描いてあることを求めてきたのかと…//」
「…ファッ!?///」
な、なんだって!?
「ってことは、え!?じゃあ私、そういうことしたがってる風に見られてたの!?//」
「…だって仕方ないじゃないですか…//」
……うわあぁ!
「名無しさんもさすがに直接は言えなかったから、遠回しにあの本を渡してきたのかと…」
「そんな酔狂なこと私に出来るわけないじゃない!!//」
「ですよね。それは謝ります。」
「っ腹立つなー//」
「あとは、冗談だったんですけど…僕に何かくれますか?って聞いちゃったから、答えを探しあぐねてそういう回答に走ったのかとも…」
「え?そうだっけ?宗次郎そんなこと言ったの?」
「…“そうだっけ”?」
反射的に胸倉を掴まれて壁へと追いやられる。
「な、なんで怒るの~!?冗談だったんでしょ!?」
「……本当に冗談にされると頭にきますね。」
「えぇ…!?」
暫しの、膠着状態。
「う……じゃ、じゃあ……」
「?」
「ほ……本当にあげよっか…?///」
「……!」
名無しは頰を染めて宗次郎を見つめる。
胸元を掴まれたままの手をぎゅっと握り締める。
「もし…私に遠慮してるとかなら…そんなの別によくって…
宗次郎がいいなら…」
「…名無しさん…」
「私…宗次郎なら…いいよ?//」
見つめる目と目。
──ふわっと微笑まれたかと思うと、距離を詰める宗次郎の瞳。
「…ふふ。無理しないでください。」
「!」
ちゅ、と頰に口吻を落とされた。
施されたところから…熱が広がっていく。
「今はまだ…その気持ちをいただくだけで…十分ですから。」
「……そっか//」
「そういうことは、祝言迎えるまで待っておきましょう?」
悪戯っぽく、でも優しくて暖かな笑みを向けられた。
「!!祝言?祝言って!?」
「はーい、お姫様抱っこしまーす。」
ふわり、と抱え上げられた。
(ふえ!?///)
膝裏もしっかりと抱えられ、足が宙を浮く。
唐突のことに慌てて宗次郎の胸元を掴んだ。
……あったかい。宗次郎の身体。
「…思ったより、楽ですね。」
「…思ったよりってなに…//」
綺麗な微笑みが一瞬こちらを向いた、と思った瞬間。
何を思ったか、ぐるぐるぐる~と回り出す。
「ちょ、待って、なんで回るの!?」
「え?楽しくないですか?」
「楽しいとかじゃなくない!?無理!うえっぷ…!」
(……あのままの状態で静止してたら顔が緩んじゃうんですよ。
名無しさん…なんで今日はこんなにツボを突いてくるんだろう…///)
はにかみそうになるのを必死に堪えながら、目を回す名無しをちらちらと宗次郎は眺めていた。
そんな調子で少しずつ進んでいったり…?
…するかどうかは、今後のお楽しみに☆
妄想少女の夢
終わりよければすべて良し。