彼に食って掛かられる
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いつも通りに過ごしていた、そんな日だった。
名無しさんがそう言い出したのは。
「素っ気ない。」
「は?」
「素っ気ない!」
「何が言いたいんですか。叫びたいだけならよそに行ってください。」
「…私たち、ムードがなさ過ぎると思わない?」
「???」
この人の口から、ムードなんて単語…
矛盾とは、こういう時に使う言葉なんだろうなぁ。
「…あからさまに不思議がらない!」
「だって…何に影響されたんです?」
「よくぞ聞いてくれました!」
力説しながら差し出されたのは。
「何ですか?これ。」
「DVDよ、映画の!」
「…は?」
映画?
「うん!ロマンティックなんだよね~!私もこんな風に想われてみたい!甘い台詞囁かれたい~!」
「落ち着いてください。何をそんな、やぶから棒に…」
「キュンキュンしたい。青春したーい。」
「勝手に突っ走らないでくださいよ。」
手にしてパッケージを眺めてみると…名無しさんの言うキュンキュンがこれなのだろうか。流行ってるのかな、こういうの。
「…何がお望みなんですか?」
「え!やってくれるの?」
食い気味に身を乗り出される。
キラキラと輝く目。
「…まあ、僕の不利益にならなければ考えてみないこともないですけど…」
「いよぉしっ!うへへへっ。」
「…人並みに笑えないんですか、まったく。ムードも何も名無しさんが自らぶち壊してるんでしょ…」
「ちっちゃいこと気にするのよくないよ!」
「まあ…観てみるくらいならいいですよ?」
「やりーぃ!さ、これから観よう♪」
品の善し悪しは別として無邪気に喜ぶ様に、まあたまには付き合わされてもいいか、と思いきや。
名無しさんは大量のDVDを抱えて持ってきた。
「…ちょっと待ってください。これ一枚だけじゃないんですか?」
「そそー♪これ全部、私のイチ押しコレクション達でーす♪」
「…僕が馬鹿だった…」
* * * * *
「…」
「ね?ね?いいでしょう?キュンキュンするでしょ?ね、あんなの憧れる!」
「…嫌ですよ。」
「ええーっ!?」
「……」
驚きの声を上げながら彼女は落胆する。
いや…ちょっと無理ですよ。いくら僕でも。
…たとえば台詞一つ取っても、「おまえは俺のもの」って。
おまえなんて人に言ったことないし、まあ名無しさんになら言っても支障ないかなとは思うけど、言っちゃったら名無しさんネチネチ文句言ってくるだろうし。
「じゃあ念の為聞きますけど…おまえとか言われたいですか?」
「冗談じゃない!何様!」
「ほらね。」
「……」
「……」
…あれ。名無しさんなんで黙るんですか?空気読んでくださいよ。
「……(あ、なんか間が開いてしまった、どうしよ…)」
「……」
「……(宗次郎、私に気の利く台詞が出せるとお思いかね?)」
「……」
「……(食べ物の話でも振ろうか…)」
「##NAME2##…」
「?」
「##NAME2##、名無しは……俺のもの、だから。」
「……!?!?」
呼び捨て!?いやそこじゃない!
俺!?宗次郎が俺!!?
しかも突然の占有宣言…!//
とにもかくにも私は突然のことに頭の中がぐるぐるしてきた。
「………すみません、今のなかったことに。」
「…お、おう…///」
「…」
ちょっと待って、心臓がバクバクいってる…
なに?今のインパクト…!//
た、ただのジャイアニズムのはずなのに…宗次郎のくせになんか赤面しながら言っちゃって…//
呼吸を整えている最中、ガタン…と隣から音がした。
振り向くと、立ち上がった宗次郎がこちらに向かって刀を振りかざしていた。
「…ちょ!ちょっと!何するつもり!?」
「名無しさんの記憶から消去しとこうかと。」
「どんだけ恥じてんの!自分に自信を持ちなさいよ!」
「……」
「私の頭だから安心して!私のことだからそのうち忘れるって!」
自分で自分を貶める台詞まで言っちゃって、何これと思う中、宗次郎はニコニコと囁いた。
「忘れるんですか?僕の渾身が込められていたのにやすやすと忘れるんですか。」
「…面倒よね、宗次郎って。」
ロマンティック?
たまにはあげようか。